親族による成年後見申立、こんなことで悩んでいませんか?

「最近、親の物忘れがひどくて、お金の管理が心配…」
「悪質な訪問販売に騙されていないか、気が気ではない」

大切な親御様の判断能力に不安を感じ、ご本人の財産と暮らしを守るために成年後見制度の利用を考え始める方は少なくありません。しかし、いざ手続きを進めようとすると、法律上の手続きだけでなく、親族間の意見調整が課題になることがあります。

  • 「親のことは心配だけど、いざとなると兄弟と意見が合わない…」
  • 「誰が手続きの中心になるのか、後見人になるのかで揉めている」
  • 「他の親族から『財産目当てだろう』と疑われ、申立てに反対されたらどうしよう…」

手続きの複雑さに加え、このような親族間の意見の食い違いは、精神的に大きな負担となります。ご本人のためを思ってのことなのに、なぜか前に進めない。そのもどかしさと焦りに、お一人で悩まれてはいないでしょうか。

この記事では、単に成年後見申立ての手続きを解説するだけではありません。当事務所がこれまで数多くのご家族と向き合ってきた経験から、親族による申立てで最もつまずきやすい「親族間の対立を乗り越えるための具体的なヒント」に焦点を当てて、詳しく解説していきます。

この記事では、手続きの基本知識に加え、親族間の意見対立がある場合に検討すべき対応方法を整理します。成年後見制度の全体像については、成年後見制度と任意後見の相談で体系的に解説しています。

誰が申立人になる?申立人になれる親族の条件と注意点

成年後見の申立てを考えたとき、家族が最初に直面するのは「誰が手続きの窓口になるのか?」という問題です。この手続きを行う人を「申立人(もうしたてにん)」と呼びます。法律では、申立人になれる親族の範囲が決められています。まずは、その基本的なルールから見ていきましょう。申立てを検討する前の準備段階で知っておくべきことも多くありますので、併せてご確認ください。

申立人になれる「4親等内の親族」とは具体的に誰か

親族による成年後見の申立てでは、本人の配偶者または4親等内の親族が申立人になることができます。言葉だけ聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、ご本人から見た関係性を指しています。

具体的には、以下のような方々が申立人になる資格を持っています。

  • 配偶者
  • 1親等:子、親
  • 2親等:孫、祖父母、兄弟姉妹
  • 3親等:ひ孫、曽祖父母、甥・姪、おじ・おば
  • 4親等:いとこ など
成年後見の申立人になれる4親等内の親族の範囲を図解したインフォグラフィック。本人を中心に、子、兄弟姉妹、いとこなどの関係性が示されている。

注意点として、親族には血族だけでなく、三親等内の姻族も含まれます。例えば、子の配偶者なども親族に当たる場合があります。なお、身寄りのない方などの場合には、市区町村長が申立てを行うケースもあります。

実務から見る「最適な申立人」の選び方

「4親等内の親族なら誰でもいい」というわけではありません。手続きをスムーズに進めるためには、誰が申立人になるかが非常に重要です。私たちの経験上、以下のような方が申立人になると、手続きが円滑に進みやすい傾向があります。

  1. 本人の生活や財産状況を最もよく知る人
    家庭裁判所では、申立て後に申立人から説明を聴いたり、申立人・本人・後見人候補者等に事情を確認したりすることがあります。その際、本人の生活状況、財産の内容、なぜ後見が必要なのかといった詳細な質問をされます。日頃から本人と接し、状況を具体的に説明できる方が適任です。
  2. 他の親族と円滑にコミュニケーションが取れる人
    申立てには、他の親族の意向も重要視されます。中心となって他の親族に説明し、理解を求め、協力を取り付けられるような立場の方が望ましいでしょう。
  3. 手続きのために時間的な余裕がある人
    必要書類の収集や作成、裁判所とのやり取りなど、申立てにはある程度の時間と手間がかかります。平日に役所や銀行、裁判所へ出向く必要があるため、時間的に融通が利く方のほうが負担は少ないかもしれません。

ここで大切なのは、「申立人」と「成年後見人の候補者」は、必ずしも同じでなくてもよいということです。例えば、「手続きは長男が申立人として進め、後見人には同居している長女を候補者とする」といった役割分担も可能です。ご家族の状況に合わせて、最も適した形を話し合うことが大切です。親族が成年後見人になる場合には、様々な責任も伴うため、誰が適任かしっかりと検討しましょう。

【最重要】親族の同意・反対への具体的な対処法

成年後見の申立てで最も心を悩ませるのが、親族間の意見対立です。ご本人のためを思っての行動が、思わぬ誤解や対立を生んでしまうことは少なくありません。しかし、なぜ反対されるのか、その理由を冷静に分析すれば、解決の糸口は見えてきます。

ここでは、私たちが実務でよく遭遇する3つのケース別に、具体的な対処法を解説します。感情的な言い争いを避け、建設的な話し合いを進めるためのヒントにしてください。なお、成年後見制度にはいくつかのデメリットもあり、それを理由に反対されるケースもありますので、制度の全体像を理解しておくことも重要です。

ケース1:他の親族が申立てそのものに反対している場合

「まだそんな歳じゃない」「うちの親はしっかりしている」といった反対意見。その背景には、多くの場合、次のような心理が隠されています。

  • 親の衰えを認めたくないという気持ち
  • 「後見」という言葉へのネガティブなイメージ
  • 申立人の財産管理に不信感がある(財産目当てでは?という疑い)

このような状況で感情的に反論しても、対立が深まるだけです。大切なのは、客観的な事実を示し、冷静に話し合うことです。

【具体的な対処法】

  • 第三者の専門的な意見を示す:医師の診断書や、介護を担当しているケアマネージャーの意見書などを提示し、「専門家から見てもサポートが必要な状況である」ことを客観的に伝えます。
  • 具体的な困りごとを共有する:「預金が下ろせなくて公共料金の支払いが滞った」「何度も同じものを買ってしまう」など、実際に起きているトラブルを具体的にリストアップして共有しましょう。
  • 申立ての目的を明確にする:「財産を管理するため」ではなく、「お父さん(お母さん)が安心して暮らせるように、詐欺などから守るため」というように、目的が「本人の保護」にあることを丁寧に説明します。

特に、認知症による財産凍結のリスクなどを具体的に説明することで、何もしないことの危険性を理解してもらうのも有効な方法です。

ケース2:「自分が後見人になる」と他の親族も主張している場合

「申立てには賛成だが、後見人は自分がやるべきだ」と、複数の親族が候補者として名乗りを上げるケースです。これも非常に多いトラブルの一つです。

この対立を解決する鍵は、「誰が後見人になるかは、最終的に家庭裁判所が決める」という事実を全員で共有することです。家庭裁判所は、親族間の感情的な対立ではなく、あくまで「誰が後見人になるのが、本人にとって最も利益になるか」という視点で判断します。

【具体的な対処法】

  • 家庭裁判所の判断基準を説明する:本人とのこれまでの関係、財産管理能力、心身の健康状態などを総合的に見て判断されることを伝えます。また、本人と金銭的な貸し借りがある、過去に本人と大きなトラブルがあった、といった事情がある親族は、候補者として不適格と判断される可能性が高いことも説明しましょう。
  • 第三者の専門家を候補者とする案を提示する:親族間で揉めるくらいなら、司法書士などの専門家を後見人候補者として共同で申立てるという選択肢もあります。公平中立な第三者が入ることで、親族間の疑念がなくなり、結果的に円満な解決につながることが少なくありません。
  • 後見監督人の選任を提案する:例えば長男が後見人になる場合、その業務を監督する「後見監督人」として専門家を選任してもらうよう、裁判所に上申する方法もあります。これにより、財産管理の透明性を高め、他の親族の不安を軽減できる場合があります。

後見人に就任すると、財産目録の作成や収支報告など、様々な職務と責任が生じます。その大変さを理解してもらうことも、冷静な判断を促す一助となります。

ケース3:「協力はしないが反対もしない」非協力的な親族がいる場合

手続きに無関心であったり、話し合いに応じてもらえなかったりするケースです。申立てには、原則として「親族の同意書(または意見書)」を提出することが望ましいとされていますが、協力が得られない場合はどうすればよいのでしょうか。

結論から言うと、すべての親族の同意書がなくても、申立ては可能です。家庭裁判所も、親族関係が複雑なケースがあることは理解しています。

【具体的な対処法】

  • これまでの経緯を正直に裁判所に伝える:申立書に添付する「事情説明書」などに、「他の親族に説明を試みたが、協力が得られなかった」という経緯を時系列で具体的に記載します。手紙やメールで連絡した場合は、その写しを資料として提出するのも有効です。
  • なぜ協力が得られないのかを客観的に説明する:単に「協力してくれない」と書くのではなく、「遠方に住んでおり、本人の現状を十分に理解されていないため」「過去の経緯から関係性が良くないため」など、考えられる理由を客観的に説明します。

誠実に対応している姿勢を家庭裁判所に示すことが、手続きをスムーズに進める上で非常に重要になります。

親族で申立てを行う手続きの全体像と流れ

親族間の見通しが立ったら、いよいよ具体的な手続きに進みます。全体の流れを把握しておけば、落ち着いて各ステップに対応できるはずです。申立て手続きは、大きく分けて以下の4つのステップで進みます。

親族による成年後見申立て手続きの流れを図解したインフォグラフィック。事前準備、裁判所への申立て、調査・面談、審判の4ステップが示されている。

  1. 事前準備:申立てに必要な書類を集め、作成します。特に、医師に「診断書」を作成してもらうことが最初の重要なステップです。
  2. 家庭裁判所への申立て:本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、準備した書類一式を提出します。
  3. 裁判所の調査・面談:家庭裁判所の調査官が、必要に応じて申立人・本人・後見人候補者等から事情を聴くことがあります。本人の状況を確認するため、自宅や施設で面談が行われる場合もあります。
  4. 審判:裁判所がすべての調査を終え、後見を開始するかどうか、誰を後見人にするかを決定(審判)します。申立てから審判までは、事案にもよりますが、おおむね1〜2か月程度が目安とされています。鑑定が行われる場合や事案が複雑な場合は、さらに期間がかかることがあります。

手続きには、申立手数料や登記費用、郵便切手代などの実費がかかります。また、後見人に専門家が選任された場合は、その報酬も発生します。費用については事前に確認しておくと安心です。

申立てに必要な書類一覧と入手方法・作成のポイント

成年後見の申立てでは、多くの書類を準備する必要があります。ここでは、主な書類を「ご自身で作成する書類」と「役所や病院で取得する書類」に分けてご紹介します。

【ご自身で作成する主な書類】

  • 申立書:手続きの中心となる書類です。
  • 申立事情説明書:申立てに至った経緯や本人の状況を詳しく記載します。
  • 親族関係図:本人を中心とした親族の関係性がわかるように作成します。
  • 財産目録:預貯金、不動産、有価証券など、本人の財産をすべて記載します。後々の親族トラブルを防ぐためにも、正確な記載が極めて重要です。
  • 収支予定表:本人の月々の収入と支出を記載します。
  • 後見人候補者事情説明書:後見人の候補者がいる場合に提出します。

【役所や病院で取得する主な書類】

  • 本人の戸籍謄本、住民票
  • 後見人候補者の住民票
  • 診断書(成年後見用):医師に作成を依頼します。申立ての根拠となる最も重要な書類の一つです。
  • 本人の登記されていないことの証明書:東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局で取得します。
  • その他:不動産の登記事項証明書、預貯金通帳のコピー、保険証券のコピーなど

これらの書類は、家庭裁判所のウェブサイトで書式をダウンロードできる場合が多いです。財産目録や収支予定表の作成は、慣れていないと難しく感じるかもしれません。より具体的な手順については、成年後見申立ての提出書類と手続きの流れをご覧ください。

また、他の親族から協力が得られる場合は、申立てに同意する旨の「同意書」を提出すると、手続きがよりスムーズに進むことがあります。書式の例は裁判所のウェブサイトで確認できます。

参照:親族同意書(新潟家庭裁判所)

親族間の対立が深刻な場合は、専門家への相談も選択肢です

ここまで、ご自身で手続きを進めるためのポイントや親族間トラブルの対処法について解説してきました。しかし、中には、当事者同士の話し合いだけではどうしても解決が難しいケースもあります。

  • 親族間の感情的な対立が根深く、冷静な話し合いができない
  • 財産の状況が複雑で、自分たちだけでは全体像が把握できない
  • 仕事や介護で忙しく、手続きを進める時間的な余裕がない

このような状況で無理に手続きを進めようとすると、かえって家族の関係を悪化させてしまうことにもなりかねません。

もし、少しでも「自分たちだけでは難しいかもしれない」と感じたら、私たち司法書士のような専門家にご相談ください。専門家に相談することで、申立てに必要な事情や書類を整理し、家庭裁判所に伝えるべき内容を法的な観点から確認できます。

私たちは、申立書類の作成に加え、親族間で整理すべき論点や家庭裁判所に伝えるべき事情を分かりやすく整理し、手続きに必要な書類作成をサポートします。

司法書士法人れみらい事務所では、初回のご相談は無料です。複雑な親族関係も踏まえ、あなたのご家族にとって何が最善の道なのかを一緒に考えさせていただきます。一人で抱え込まず、まずはお気軽にお話をお聞かせください。

無料相談の予約・お問い合わせ

keyboard_arrow_up

0664239083 問い合わせバナー 無料相談について