吸収分割とは?吸収分割の手続きについて

吸収分割とは

吸収分割とは、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることをいいいます。(以下、吸収分割により権利義務を承継する会社を承継会社といい、権利義務を承継させる会社を分割会社といいます。)

承継会社は株式会社、合同会社、合資会社、合名会社がなることができますが、分割会社は株式会社、合同会社でなければなりません。

吸収分割契約の締結

会社が、吸収分割をする場合には、承継会社との間で吸収分割契約を締結しなければなりません。これは、分割会社から承継会社に承継される権利義務の内容や、債務者(雇用主を含む)が誰であるかは、分割会社の株主や債権者によって重要な事項であることからです。よって吸収分割契約書の具体的な記載方法としては、個々の権利義務を個別的に特定し、その帰属先を明らかにすることまでは求められていませんが、特定の権利義務が吸収分割後にいずれの会社に帰属するのかが明らかになる程度の記載は必要です。また、承継される債務についても、承継会社がその債務を免責的に引き受けるのか、重畳的(分割会社と共に連帯債務となる)に引き受けるのかも記載している方が良いでしょう。

具体的には、次に掲げるような事項について定めなければなりません。

           法定記載事項
①分割会社及び承継会社の商号・住所
②承継会社が吸収分割により分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
③吸収分割により分割会社または承継会社の株式を承継会社に承継させるときは、当該株式に関する事項

④承継会社が吸収分割に際して分割会社にその事業に関する権利義務の全部または一部に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての事項                                      (株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、株式等以外の財産)

⑤承継会社が吸収分割に際して分割会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わり、承継会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権についての事項

⑥⑤の場合には、吸収分割契約新株予約権の新株予約権者に対する⑤の承継会社の新株予約権の割当に関する事項
⑦吸収分割が効力を生ずる日

⑧分割会社が効力発生日に次の行為をするときは、その旨                                                            (1)会社分割と同時に、分割会社の既発行の全部取得条項付種類株式について、その株主総会の決議により、分割会社が取得し、これと引換えに分割会社の株主に対して、会社分割により分割会社が承継会社から交付を受けた承継会社の株式を交付する場合

(2)分割会社が会社分割により承継会社から交付を受けた承継会社の株式を配当財産として、剰余金の配当を行う場合

吸収分割の手続きについて

吸収分割の手続きは以下のような手順を踏んでいくために、すぐに吸収分割を行うことはできません。最短でも2ケ月程度はかかると思っておいた方が良いでしょう。

  承継会社 分割会社
承認決議権限

原則:株主総会の特別決議

例外:承継会社が交付する対価(「株数」×「1株当たりの純資産額」)が純資産額の5分の1以下のときは、株主総会の承認不要(簡易分割)

原則:株主総会の特別決議

例外:①譲渡資産額合計が総資産額の5分の1以下のときは、株主総会の承認不要(簡易分割)

②承継会社が分割会社の特別支配会社であるときは、株主総会決議は不要(略式分割)

債権者保護手続

以下に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別の催告が必要(但し、定款で公告方法を日刊新聞紙や電子公告と定めているときは、官報公告に加えて定款の公告方法による公告を行うことで、各別の催告を省略できる)

(1)吸収分割をする旨

(2)分割会社の商号・住所

(3)承継会社及び分割会社の計算書類に関する事項として定めるもの(貸借対照表の要旨)

(4)債権者が一定の期間内(1か月以下は不可)に異議を述べることができる旨

※吸収分割後も分割会社に対して権利行使をすることができる債権者には、手続き不要(重畳的債務引受等)

以下に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別の催告が必要(但し、定款で公告方法を日刊新聞紙や電子公告と定めているときは、官報公告に加えて定款の公告方法による公告を行うことで、各別の催告を省略できる)

(1)吸収分割をする旨

(2)分割会社の商号・住所

(3)承継会社及び分割会社の計算書類に関する事項として定めるもの(貸借対照表の要旨)

(4)債権者が一定の期間内(1か月以下は不可)に異議を述べることができる旨

※不法行為によって生じた債権者には各別の催告省略不可

書面の備置

(1)事前備置

債権者保護手続等を行う日から、以下のような事項を記載した書面等を本店に備え置かなければならない(効力発生日から6ヶ月経過するまで)

●分割契約の内容

●分割対価の相当性に関する事項

●計算書類等に関する事項

(2)事後備置

株式会社であるときは、吸収分割の効力発生日以後遅滞なく、法務省令で定められている事項について記載した書面または電磁的記録を作成して、効力発生日から6ヶ月間本店に備え置かなければならない

同左
登記申請の添付書類

●吸収分割契約書

●分割契約を承認した株主総会議事録(承継会社、分割会社)

●債権者保護手続書面

●資本金の計上に関する証明書

●株主リスト(承継会社、分割会社) 等

●代表取締役の印鑑証明書  

(分割会社と承継会社の管轄法務局が異なる場合) 

 

 

吸収分割の効果

吸収分割においては、登記が効力発生要件ではないので、吸収分割契約書で定めた効力発生日に吸収分割の効力が発生します。効力発生日は承継会社・分割会社の合意により変更することもできますが、変更した場合には、分割会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければなりません。

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