相続登記が必要なときとは~
実家に一人暮らしをしていた父が亡くなり、実家には誰も住んでいないので家族の話し合いにより売却することとなったとき、そのままでは売却することはできません。
不動産の所有者の名義が亡くなられてお父様のままだからです。
そのようなときには、不動産の所有者の名義を相続登記により相続人の名義に変更してから、売却をする必要があります。
具体的な相続登記の流れは、不動産の名義変更(相続登記)でご紹介したとおりになります。
ただし、今回のケースの様に売却を前提とした相続登記の場合には、通常の相続登記と異なって注意すべき点が出てきます。
1.遺言に基づく相続登記のケース
当該遺言の内容が、不動産を誰々に相続ないし、遺贈させるという「現物」贈与であった場合には、その内容どおりの名義変更登記をすれば足ります。
一方、当該不動産を売却して、その売却代金を分けるとの遺言であった場合はどうでしょう。
この場合には、いったん法定相続人全員名義への相続登記を入れることになるのです。
前者と後者の違いは、前者はあくまで不動産という「現物」が対象となっているのに対し、後者は、売却対価たる金銭が対象となっているという点です。
売却して金銭化するには、売買契約が必要となります。亡くなられた方が売主になることは当然できません。死亡と同時に所有者の地位は法定相続人に承継されるのです。よって、後者の場合には、法的効果にのっとり一旦法定相続人名義への相続登記が必要となるのです。
2.遺産分割協議に基づく相続登記のケース
相続人間での協議で遺産の分配方法について自由に決めることができることはお話しました(遺産分割協議書の作成)。
この場合には、当該協議でこの不動産を取得すると合意があった者名義への相続登記をすることになります。
例えば、不動産を相続人の一人の所有とする代わりに、取得相続人が他の相続人へ対価を支払うといった「代償分割」の定めがある場合であっても、あくまで不動産の取得者は
協議で定められた者となりますので、この相続人単独所有への相続登記をします。
3.法定相続の場合
遺言もなく、相続人間での遺産分割協議もなされない場合、法律で定めされた相続分(法定相続分)に従い相続登記をすることになります。
仮に、相続人が5名いれば、5名共有名義への相続登記をするのです。
ここで問題なのは、今回はあくまで売却を前提としているという点です。
5名共有不動産の売却となると、5名全員が売主になるという事です。売却すること自体には全員が納得していたとしても、金額や時期についてまで全員の合意が整わなければ売却はできません。また、実際の売却には、契約から始まり、引渡し時の現金決済取引立会い、不動産登記の為の書類の収集提出等、さまざまな手続きが必要となってきます。時間も手間もかかる為、当事者が多ければ多いほど手続きは頻雑になります。せっかくの好条件の買主が現れても、売主側の手続きに時間がかかっていては取引のチャンスを逃す事にもなりかねません。
そこで、こういった場合には、遺産分割協議によって、相続人の中の代表の者に当該不動産を相続させる、といった合意をし、なるべく当事者を減らすことが重要となってきます。実際の売却代金の分配は、前述のように「代償分割」という方法をとればクリアできます。
4.時間的制約
相続登記には、相続税の申告と異なって、いつまでにしなければならないという法律上の制限はありません(といっても、時期を延ばす事での弊害は大きいので注意です「不動産の名義変更手続き(相続登記)」)。
但し、売却が控えているケースでは話が別です。
不動産取引において、所有者等の権利関係の確認は、不動産登記記録でもってなされます。よって、不動産登記記録が亡くなられた方名義のままでは契約が進まない場合も多いのです。また、手続きにミスがあってもいけません。
早急に、かつ、間違えなく相続登記をする必要があるのです。
以上、売却時における相続登記についてご紹介しましたが、通常の相続登記と異なり、売却を前提とする相続登記の場合には、注意すべき点が多くございます。
といいますのも、売却には、買主という相手方がおり、買主は当該相続とは無関係の第三者だからです。なるべく迅速に、かつ簡略に手続きが進むように売主たる相続人の方でも配慮すべき必要性が出てくるのです。
こういった場合には、登記のプロである我々専門家のご相談をお勧め致します。
遺産分割の内容も含め、的確にアドバイス申し上げます。
また、売却はしたいけれどどういった方法でどこへ頼めばよいかわからない、といった場合であっても、当事務所にて信頼のおける不動産会社をご紹介できますので、相続登記から売却手続きまでワンストップにてご相談をお受けできます。
お気軽にご相談くださいませ。