商業登記はなぜ必要?
商業登記制度は、商法・会社法その他の法律の規定により登記すべきと定められた一定の事項を、商業登記簿という国家が備えた帳簿に記録して広く一般に公示することで、商号・会社等に係る信用の維持を図り、かつ取引の安全と円滑に資することを目的とする制度です(商業登記法1条)。
商業登記には、個人商人および会社に関する事項のうち取引上重要なものを商業登記簿に記録して広く一般に公示し、取引の相手方を保護するとともに取引が迅速に行われるようにする機能(公示機能)があります。また、商業登記制度があることによって法律関係の形成が適法に行われ、後に無用の混乱が生じることを未然に防止する機能(予防的機能)があります。
このように商業登記制度は重要な役割を担っていますが、登記すべき事項が生じたにもかかわらず登記がされなければ、上述の制度趣旨が没却されてしまいます。また、すでに失効した登記が残っていたのではかえって取引の安全が害されてしまいます。
そこで、会社の登記についてはそれぞれの登記について登記期間が定められ、商業登記法は会社の登記に関し原則として登記を強制しています。
仮に法律上定められた登記期間内に登記をすることを怠った場合、登記申請義務者は100万円以下の過料に処せられる可能性がありますのでご注意ください。
どんなときに商業登記は必要?
以下のように会社を設立したときをはじめ、登記簿に記載した内容に変更が生じたら、登記が必要です。
- 会社を設立するとき
- 役員(取締役・監査役・会計参与)の氏名や住所が変わったとき
- 会社の商号を変更するとき
- 会社の目的を変更するとき
- 本店を移転するとき
- 組織(取締役会・監査役会・会計参与)を変更するとき
- 増資・減資をするとき
- 合併するとき
- 会社を解散するとき
などが挙げられます。
以下、主だったものについて具体的に説明していきます。
役員(取締役・監査役など)の氏名や住所が変わったときは手続きが必要なの?
株式会社の場合、会社の取締役に就任すると氏名が登記され、代表取締役に就任すると氏名と住所が登記されます。その後、さまざまな事由で役員の氏名や住所に変更が生じた場合、その旨の登記手続きをしなければなりません。
たとえば、株式会社の取締役または代表取締役である方が結婚をしたり、養子縁組をしたりして氏が変更になったとしましょう。このようなとき、取締役または代表取締役の氏名変更の登記をします。それから、株式会社の代表取締役の方が、就任後に転居して住所が変わった場合、住所変更の登記が必要です。
役員が辞任したり、任期満了により退任したりした場合、基本的に役員の変更登記を忘れてしまうことはあまりないでしょう。ですが、役員の住所や氏名が変更になったとき、その登記手続きをしないままにしてしまうことが多いです。
会社の代表者や担当者によっては、登記しなければならないことを知らない方もいます。
役員の住所や氏名が変更になった場合、その旨の変更登記をしないと過料を命じられる可能性があります。会社の登記事項に変更が生じたとき、2週間以内に本店所在地においてその変更登記をしなければなりません。(会社法915条1項)役員の住所や氏名も会社の登記事項に含まれます。もし、上記の変更登記をしないと、100万円以下の過料に処すると法律で定められているため注意が必要です。(会社法976条)
会社の商号・目的変更
商号・目的変更とは
商号・目的変更の登記は、定款変更の効力が生じた日(株主総会決議の日)から、本店所在地においては2週間以内、支店所在地においては3週間以内に申請しなければなりません。
本店移転があった場合、本店移転登記をしなければならないことは、法律上も義務付けられています。本店移転登記には期限も設けられており、本店を移転した日から2週間以内に法務局で手続きする必要があります。もし本店移転登記をせずに放置していれば、会社の代表者が100万円以下の過料を処されるおそれもあります。
〇商号変更を考えている方
商号を変更する場合、登記上、以下のような手続きに注意しながら、進めていきます。
(1) 商号を変更しようとする場合、新商号と同一の商号を有する他の株式会社が同一本店所在場所に既に存在していないかどうか、また使用できない文字を使用していないかを事前に確認します。
(2) 商号を変更するには、定款変更を行う株主総会を開催する必要があるため、取締役会において当該株主総会の招集を決定し、各株主に招集通知を行います。
(3)株主総会において商号の規定に関する定款変更の特別決議を行います。
(4)商号を変更した後は、これに伴い会社所有の不動産があれば、所有権登記名義人の名称変更登記を申請する必要があります。
〇目的変更を考えている方
会社の目的を変更する場合、登記上、以下のような手続きに注意しながら、進めていきます。
(1)目的を変更しようとする場合、新目的の明確性その他の点について事前に確認します
(2)目的を変更するには、定款変更を行う株主総会を開催する必要があるため、取締役会において当該株主総会の招集を決定し、各株主に招集通知を行います。
(3)株主総会において目的の規定に関する定款変更の特別決議を行います。
本店移転
本店移転登記とは
会社の本店所在地を移転する場合、移転日から2週間以内に本店移転登記をしなければなりません。
株式会社では、本店の所在地は登記事項とされていますので、これらの登記事項に変更があった場合には、登記の変更手続き(変更登記)が必要になります。
なお、本店所在地は、会社の定款の記載事項にもなっています。そのため、本店移転の際には、定款も忘れずに変更しなければなりません。定款変更の際には、株主総会の決議が必要になりますので、手続きがより複雑になります。
本店移転登記をしないとどうなるの?
会社が本店の住所を移転したにもかかわらず、本店移転登記の手続きをしていなかった場合、登記簿の記載が実態とは異なることになります。会社の登記は一般の人に会社の実態を知らせるために行うものですから、本店移転が登記簿に反映されていないと不都合なことになります。
本店移転があった場合、本店移転登記をしなければならないことは、法律上も義務付けられています。本店移転登記には期限も設けられており、本店を移転した日から2週間以内に法務局で手続きする必要があります。もし本店移転登記をせずに放置していれば、会社の代表者が100万円以下の過料を処されるおそれもあります。
ただし、2週間の期限を過ぎれば直ちに罰金が発生するわけではありません。法務局では、期限後であっても通常どおり登記を受付してもらえます。長期間放置しているほど、罰金を払わされる可能性が高くなるということです。
本店移転登記における管轄内と管轄外について
本店移転登記には、管轄内の移転と、管轄外の移転があります。法務局には管轄が存在しており、本店移転登記の場合、同じ管轄の区域の中で移転する場合と、管轄外となる法務局が管轄している区域に移転する場合の2つの例があります。この時、管轄内か、管轄外かによって手続きの内容が異なりますので、ご注意ください。
管轄区域内の移転
この場合ですと、本店と移転した所で、管轄している法務局に変更はありませんから、移転した新しい本店所在地の登録を、管轄している法務局にて変更の申請を行う事になります。
管轄区域外の移転
管轄外に移転をする場合についてですが、管轄が変わりますので、管轄内と少し手順が異なります。管轄区域外に移転する場合、移転前に管轄していた法務局に対し、本店移転登記を行います。
また、更に移転する先の新しい場所を管轄している法務局においても、本店移転登記を行う事となります。ただし、この登記申請書の提出に関しては、2か所に提出しますから2部必要ではありますが、旧所在地の管轄法務局に、その2件分をまとめて提出すれば良い事になっております。ですから、旧と新の法務局、それぞれに提出をしに行くと言う手間はかかりません。
その他の商業登記について
役員変更・本店移転・商号・目的変更以外でも、商業登記が必要になる場面があります。
考えられる場面として、組織変更登記があります。
これは、合同会社を株式会社に変更するとき、また株式会社を合同会社に変更するときなどが当てはまります。
また、減資の際にも登記が必要です。減資とは、資本金を減らすことですが、資本金を減らすと均等割という税金を減額ことができるので、節税目的で減資登記をすることが多いです。
その他、定款を変更する場合や会社の形態を有限会社から株式会社に変更する場合などにも、やはり商業登記が必要になります。
以上のように、商業登記が必要になる場面は、会社設立の場合をはじめとして、いろいろです。司法書士に依頼すると手続きが確実かつスムーズに進んで、手間も省けて安心です。
当事務所は、商業登記に大変力を入れているので、きっとお力になることができます。
今後商業登記が必要になったときには、是非とも一度、当事務所にご相談ください。