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突然の連絡…「叔父・叔母の相続人です」と言われたら
「疎遠にしていた叔父(叔母)が亡くなり、あなたが相続人になりました。」
ある日突然、このような連絡を受けたら、誰でも戸惑い、不安な気持ちになるのではないでしょうか。「相続なんて初めてで、何から手をつけていいか全くわからない」「他の親族と揉めたくない」「借金があったらどうしよう…」そんなお悩みを抱えて、このページにたどりかれたのかもしれません。
ご安心ください。この記事では、司法書士である私たちが、叔父・叔母の相続という複雑な状況に直面したあなたのために、やるべきことの全体像と具体的なステップ、そして思わぬ落とし穴を避けるための知識を、一つひとつ丁寧に解説していきます。
まずは深呼吸をして、落ち着いて現状を把握することから始めましょう。この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が晴れ、次にとるべき一歩が明確になっているはずです。
まずは落ち着いて確認!あなたが相続人になるケースとは?
「そもそも、なぜ甥や姪である自分が相続人に?」と疑問に思われるかもしれませんね。法律では、誰が遺産を相続できるかについて、優先順位が定められています。

- 第一順位:亡くなった方の子ども
- 第二順位:亡くなった方の父母や祖父母(直系尊属)
- 第三順位:亡くなった方の兄弟姉妹
叔父・叔母に子どもがおらず(第一順位)、すでに父母や祖父母も亡くなっている場合(第二順位)、相続権は兄弟姉妹(第三順位)に移ります。そして、もし相続人となるはずの兄弟姉妹(あなたにとっての親)がすでに亡くなっている場合、その子どもである甥・姪が代わりに相続人となるのです。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と呼びます。
つまり、あなたが叔父・叔母の相続人になったということは、このようなケースに当てはまっている可能性が高いのです。
相続でやるべきことの全体像【5つのステップ】
相続手続きは複雑に思えますが、大きく分けると以下の5つのステップで進んでいきます。まずは全体像を掴んで、今後の見通しを立てましょう。
- 相続人の確定:誰が相続人なのかを戸籍で正確に確定させます。
- 財産の調査:預貯金や不動産、そして借金など、全ての財産を調査します。
- 相続方法の決定:財産を相続するのか、放棄するのかを決めます。(原則3ヶ月以内)
- 遺産分割協議と名義変更:相続人全員で遺産の分け方を話し合い、不動産などの名義を変更します。
- 相続税の申告・納付:必要に応じて、税務署に相続税の申告と納付をします。(10ヶ月以内)
この流れに沿って、一つずつ着実に進めていくことが大切です。次の章から、各ステップで具体的に何をすべきかを詳しく見ていきましょう。
【ステップ別】叔父・叔母の相続手続きの具体的な流れ
ここからは、先ほどお伝えした5つのステップについて、具体的な作業内容と注意点を解説します。「何を」「どこで」「どのように」進めるのかを一緒に確認していきましょう。
①相続人の確定:戸籍謄本を集めて関係者を洗い出す
相続手続きの第一歩は、「誰が相続人なのか」を法的に証明することです。そのために、亡くなった叔父・叔母の「生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)」を全て集める必要があります。
さらに、甥・姪が相続人になるケースでは、叔父・叔母の兄弟姉妹(あなたのお父様やお母様、そのご兄弟など)全員が相続の対象となるため、その方々の戸籍謄本も必要になるなど、収集範囲が非常に広くなる傾向があります。本籍地が各地に点在している場合は、それぞれの市区町村役場に請求する必要があり、時間も手間もかかる大変な作業です。
しかし、この相続人調査を正確に行わないと、後の遺産分割協議が無効になってしまう可能性もあるため、非常に重要なステップです。詳しくは相続人調査・戸籍の収集についてのページもご覧ください。
②財産の調査:プラスの財産もマイナスの財産も全て調べる
次に、叔父・叔母がどのような財産を遺したのかを調査します。注意すべきなのは、預貯金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金やローン、未払いの税金といった「マイナスの財産」も相続の対象になるという点です。
| プラスの財産 | マイナスの財産 |
|---|---|
| 預貯金、株式、投資信託 | 借金、ローン(住宅・自動車など) |
| 不動産(土地、建物) | クレジットカードの未払い金 |
| 生命保険金、死亡退職金 | 未払いの税金や社会保険料 |
| 自動車、貴金属 | 誰かの借金の保証人になっている地位 |
手掛かりとなる預金通帳や郵便物などを探し、金融機関への残高証明書の請求や、法務局での不動産登記簿謄本の取得、信用情報機関への照会などを行います。全ての財産が判明したら、「財産目録」として一覧にまとめておくと、後の手続きがスムーズに進みます。
③相続方法の決定:相続するか、放棄するか【3ヶ月が期限】
財産調査の結果、もしプラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合は、「相続放棄」を検討する必要があります。相続放棄の申述期間は原則「相続の開始と自己が相続人であることを知った時」から3か月以内です。3か月以内に家庭裁判所へ申述書を提出する必要があり、裁判所の審査が期限後に続いても申述の提出が期限内であることが重要です。期限の計算は例外(休日扱い等)があるため、疑問があれば早めに専門家へ相談してください。

- 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産も全て受け継ぐ、最も一般的な方法です。
- 相続放棄:全ての財産を受け継ぐ権利を放棄します。借金が多い場合に有効です。
- 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を清算し、もし財産が残れば受け継ぐ方法です。
3ヶ月という期間はあっという間に過ぎてしまいます。この期間を過ぎると、原則として単純承認したとみなされ、莫大な借金を背負うことにもなりかねません。財産調査で少しでも不安を感じたら、すぐに専門家へ相談することをおすすめします。当事務所でも相続放棄についてのご相談を承っております。
④遺産分割協議と名義変更:相続人全員の合意が必須
相続すると決めたら、次に相続人全員で「誰が」「どの財産を」「どれくらい」相続するのかを話し合います。これを「遺産分割協議」と呼びます。
叔父・叔母の相続では、普段付き合いのない親族同士で話し合うことも多く、スムーズに進まないケースも少なくありません。協議がまとまったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名と実印の押印をします。この書類は、後の不動産や預貯金の名義変更手続きで必須となります。
遺産分割協議書が完成したら、法務局で不動産の名義変更(相続登記)を行ったり、各金融機関で預貯金の解約・名義変更手続きを進めていきます。
知らないと損をする?相続税の重要ポイント
相続手続きと並行して考えなければならないのが「相続税」です。特に、甥・姪が相続する場合には、知っておくべき重要な注意点があります。
相続税はかかる?基礎控除額の計算方法
まず、遺産を相続したからといって、必ず相続税がかかるわけではありません。相続税には「基礎控除」という非課税枠があり、遺産の総額がこの範囲内であれば、相続税の申告も納税も不要です。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例えば、法定相続人が甥・姪あわせて3人いる場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となります。遺産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。
要注意!甥・姪の相続税は2割増しになる
叔父・叔母の相続で最も注意したいのが、「相続税額の2割加算」という制度です。これは、亡くなった方の配偶者と一親等の血族(子や親)以外の人が遺産を相続した場合、算出された相続税額が2割増しになるというものです。
甥・姪は、叔父・叔母から見ると「兄弟姉妹の子」であり、一親等の血族ではないため、この2割加算の対象となります。同じ額の遺産を相続しても、子どもが相続する場合に比べて納税額が多くなることを、あらかじめ理解しておく必要があります。
相続税の申告と納付は10ヶ月以内
遺産の総額が基礎控除額を超え、相続税がかかる場合は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に税務署へ申告し、納税まで済ませなければなりません。
この10ヶ月という期限は、相続人の確定から遺産分割協議の完了まで、全ての相続手続きを終える上での一つの大きな目標期間となります。期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして延滞税などが課される場合があるため、計画的に手続きを進めることが非常に重要です。納税資金も現金で一括納付が原則ですので、早めに準備しておく必要があります。
円満な相続のために。トラブルを回避する3つの秘訣
叔父・叔母の相続は、相続人同士の関係性が疎遠であることが多く、ささいなことから感情的な対立に発展しやすい傾向があります。ここでは、私たちが多くのご相談をお受けする中で見えてきた、トラブルを未然に防ぐための3つの秘訣をお伝えします。

秘訣①:丁寧なコミュニケーションを心がける
相続トラブルの多くは、コミュニケーション不足や、一方的な連絡が原因で起こります。特に、初めて連絡を取る相続人がいる場合は、突然電話をするのではなく、まずは丁寧な手紙を送るなど、相手への配慮を忘れないようにしましょう。
話し合いの場では、感情的にならず、戸籍謄本や財産目録といった客観的な資料をもとに、冷静に話し合うことが大切です。「自分はこれだけ欲しい」と主張するだけでなく、相手の状況や意見にも耳を傾ける姿勢が、円満な解決への第一歩となります。
秘訣②:遺言書があれば内容を尊重する
もし叔父・叔母が遺言書を遺していた場合、原則としてその内容が最優先されます。たとえその内容が、法定相続分とは異なるものであったとしても、まずは故人の最後の意思として尊重する姿勢が大切です。
ただし、一つ知っておくべきことがあります。兄弟姉妹やその代襲相続人である甥・姪には、遺産の最低限の取り分を主張できる権利である「遺留分」がありません。そのため、「全ての財産を特定の誰かに譲る」といった内容の遺言書があった場合、他の相続人は遺産を全く受け取れない可能性もあります。この点は、叔父・叔母の相続における大きな特徴の一つです。
秘訣③:相続人の一人に負担を押し付けない
戸籍の収集、財産の調査、各所への連絡など、相続手続きには膨大な手間と時間がかかります。これらの負担を、例えば「叔父・叔母の家の近くに住んでいるから」といった理由で、特定の相続人一人に押し付けてしまうと、その人の不満が募り、トラブルの原因となります。
「何か手伝えることはないか」と声をかけたり、手続きにかかった費用(戸籍の取得費用や郵送費など)は相続財産から精算するなど、全員で協力し、公平に進めていく意識を持つことが重要です。もし全員が忙しくて手続きを進めるのが難しい場合は、専門家に一括して依頼することも、公平な解決策の一つと言えるでしょう。
手続きが複雑で不安…そんな時は専門家への相談も選択肢に
ここまでお読みいただき、「思った以上にやることが多くて大変そうだ」「自分たちだけで円満に進められるだろうか」と、かえって不安が大きくなってしまった方もいらっしゃるかもしれません。そんな時は、一人で抱え込まずに、私たちのような相続の専門家を頼ることも考えてみてください。
司法書士に相談するメリットとタイミング
司法書士にご依頼いただくことで、以下のようなメリットがあります。
- 正確かつ迅速な手続き:煩雑な戸籍収集や書類作成を代行し、法的に不備のない手続きをスムーズに進めます。
- 精神的・時間的負担の軽減:面倒な手続きから解放され、ご自身の時間を大切にできます。
- 中立的な調整役:相続人同士の間に立ち、客観的な視点から円満な話し合いをサポートします。
特に、「相続人の数が多くて戸籍集めが大変」「他の相続人と面識がなく、どう連絡していいかわからない」「相続財産に不動産が含まれている」といったケースでは、専門家のサポートが大きな力になります。
れみらい事務所の「相続手続きトータルサポート」
私たち司法書士法人れみらい事務所(所在地:兵庫県尼崎市南塚口町2丁目19番2号 若松ビル201 代表司法書士 上西祥平・大貫智江/兵庫県司法書士会所属)では、相続に関するあらゆる手続きをワンストップでサポートする「相続手続きトータルサポートプラン」をご用意しています。
戸籍の収集から財産調査、遺産分割協議書の作成、そして最も専門性が求められる不動産の名義変更(相続登記)まで、相続に関する全ての手続きを司法書士が一貫して手続きを支援し、可能な限り負担を軽減するよう努めます。
当事務所では、初回のご相談は無料(相続に関するご相談で初回60分まで)でお受けしています。また、女性司法書士も在籍しており、ご希望があれば面談担当を指定することも可能です。「何から相談していいかわからない」という段階でも全く問題ありません。まずはあなたの状況を、私たちに聞かせていただけませんか?(ご相談は司法書士法人れみらい事務所まで。所在地:兵庫県尼崎市南塚口町2丁目19番2号 若松ビル201 代表司法書士 上西祥平・大貫智江/兵庫県司法書士会所属)まずは無料相談からはじめてみませんか?
当事務所は兵庫県尼崎市を拠点に、相続や遺言に関する手続きをサポートしています。相続手続きでは、戸籍収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、複雑な手続きを一括してお任せいただけます。また、遺言書の作成支援も行っており、将来の相続に備えた適切なアドバイスを提供しています。
初回のご相談や費用のお見積もりは無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。

