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「子どもがいない私たち、相続はどうなるの?」その不安、一緒に解消しませんか
「私たちには子どもがいないけれど、もし夫(妻)に先立たれたら、この家には住み続けられるのだろうか…」
「夫(妻)の親族とは少し疎遠だけれど、相続のことで揉めたりしないだろうか…」
このページをご覧になっているあなたは、きっとこのような漠然とした不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
ご安心ください。その不安は、決してあなただけのものではありません。私たち司法書士法人れみらい事務所にも、同じようなお悩みを持つ多くの方が相談にいらっしゃいます。
子どもがいないご夫婦の相続は、たしかに少しだけ複雑な面があります。しかし、今のうちから正しい知識を身につけ、きちんと準備をしておけば、あなたの想いを実現し、大切なパートナーの未来を守ることは十分に可能です。
この記事では、相続の専門家である司法書士が、以下の点について、できるだけ分かりやすく、丁寧にご説明します。
- 子どもがいない場合の相続の基本ルール
- 起こりがちなトラブルの具体例
- あなたの希望を叶えるための3つの対策(遺言書・家族信託など)
- あなたにぴったりの対策の選び方
まず知っておきたい「子どもがいない場合」の相続の基本ルール
多くの方が「子どもがいなければ、全財産が自動的に配偶者に相続される」と思っていらっしゃいますが、実は法律(民法)のルールは少し異なります。まずはこの基本ルールを正しく理解することが、対策の第一歩です。少し驚かれるかもしれませんが、一緒に確認していきましょう。
相続人は誰?民法で決まっている相続順位
亡くなった方の財産を誰が受け継ぐか、その権利を持つ人を「法定相続人」と呼びます。民法では、誰が法定相続人になるかについて、優先順位が定められています。
まず、配偶者(夫または妻)は、常に法定相続人になります。
そして、配偶者以外の相続人には、以下のような順位があります。
- 第1順位:子ども(子どもが先に亡くなっている場合は孫など)
- 第2順位:親や祖父母(直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉e妹が先に亡くなっている場合は甥・姪)
お気づきの通り、子どもがいないご夫婦の場合、第1順位の相続人が存在しません。そのため、相続権は第2順位、第3順位へと移っていくことになります。
つまり、子どもがいない方の相続人は、以下のようになります。
- ご両親がご存命の場合:配偶者と親
- ご両親が既に亡くなっている場合:配偶者と兄弟姉妹
- ご両親も兄弟姉妹もいない場合:配偶者のみ
もし兄弟姉妹が既に亡くなっていて、その方に子ども(ご自身から見て甥や姪)がいる場合は、その甥や姪が代わりに相続人(代襲相続)となります。
【ケース別】財産の取り分は?法定相続分の割合
では、それぞれの相続人が具体的にどれくらいの財産を受け取る権利を持っているのでしょうか。この法律で定められた取り分の割合を「法定相続分」といいます。これも相続人の組み合わせによって変わります。
ケース1:相続人が「配偶者」と「親」の場合
- 配偶者:3分の2
- 親:3分の1(ご両親ともにご存命なら、1/3をさらに半分ずつ)
ケース2:相続人が「配偶者」と「兄弟姉妹」の場合
- 配偶者:4分の3
- 兄弟姉妹:4分の1(兄弟姉妹が複数いる場合は、1/4を人数で均等に分けます)
このルールを知ると、「え、夫(妻)の兄弟にまで財産が渡るの?」と驚かれる方が非常に多いです。これが、「子どもがいないご夫婦こそ、事前の対策が大切」と言われる一番の理由なのです。

注意!相続で起こりうる思わぬトラブル事例
もし、何の対策もしないまま相続が発生すると、法定相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いを行い、誰がどの財産を相続するかを決めなければなりません。この話し合いが、思わぬトラブルの火種になることがあります。
事例1:疎遠だった義理の兄弟から、家の売却を求められた
夫の死後、相続人は妻と夫の弟でした。主な財産は夫婦で暮らしてきた自宅のみ。夫の弟は「法律上の権利があるのだから、家の価値の4分の1に相当する現金を払ってほしい。払えないなら家を売って分けよう」と主張。妻は住み慣れた家を失う危機に立たされてしまいました。
事例2:遺産分割協議が進まず、預金が引き出せない
妻の死後、相続人は夫と、遠方に住みほとんど交流のなかった妻の兄と姉でした。遺産分割協議書に全員の実印を押さないと、亡くなった妻名義の預金は解約できません。しかし、兄姉との連絡がうまくとれず、話し合いもまとまらないため、葬儀費用や当面の生活費に充てようと思っていた預金が全く引き出せず、夫は大変困ってしまいました。
このような事態は、決して特別なことではありません。大切なパートナーに同じような苦労をさせないためにも、元気なうちに対策を考えておくことがとても重要です。
あなたの想いを実現する3つの生前対策
「じゃあ、どうすればいいの?」と不安に思われたかもしれません。大丈夫です。あなたの「配偶者に全ての財産を遺したい」「面倒な手続きで苦労させたくない」という想いを実現するために、有効な方法がちゃんとあります。
主な対策は、以下の3つです。
- 遺言書:あなたの最後の意思を記し、財産の分け方を指定する方法。
- 家族信託:財産の管理と承継を信頼できる家族に託す、より柔軟な方法。
- 生前贈与:元気なうちに、特定の相手に財産を贈与しておく方法。
「どれが自分たちに合っているんだろう?」と感じますよね。ここからは、それぞれの方法を詳しく解説し、あなたが最適な選択をするためのお手伝いをします。
【対策1】遺言書|最も手軽で基本的な対策
遺言書は、最も手軽で基本的な相続対策です。特に子どもがいない方にとって、その重要性は計り知れません。
なぜなら、有効な遺言書があれば、その内容は法律で定められた相続順位や法定相続分よりも優先されるからです。つまり、「全財産を妻(夫)に相続させる」という内容の遺言書を作成しておけば、原則としてその通りに財産を引き継がせることができるのです。
遺言書には、自分で手書きする「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、手続きの確実性や後のトラブル防止という観点からは、私たち専門家は遺言書は自分で作成?それとも公証役場で作成?「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いは?あなたにぴったりな方法がわかるガイドで詳しく解説している公正証書遺言の作成をおすすめしています。
「配偶者に全財産を」を実現する遺言書の書き方と文例
「妻(夫)に全ての財産を相続させたい」という場合の、シンプルな遺言書の文例をご紹介します。
遺言書
遺言者 〇〇 〇〇は、私の有する一切の財産を、私の妻 〇〇 〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
令和〇年〇月〇日
(住所)兵庫県尼崎市〇〇町〇丁目〇番〇号
(氏名)〇〇 〇〇 ㊞
遺言書があれば遺産分割の指針となり手続が円滑になることが多いですが、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要となる場合があり、金融機関や登記手続きでは戸籍類や遺言執行者の選任など追加の手続が求められることがあります。公正証書遺言は検認不要とされる点などを踏まえ、具体的な手続は専門家と確認してください。
さらに、手続きをより円滑にするために、遺言書の内容を実現する「遺言執行者」を指定しておくことも非常に有効です。信頼できる親族や、私たちのような専門家を指定しておくことで、残された配偶者の負担を大きく減らすことができます。
注意点:親には「遺留分」があることを忘れずに
遺言書は非常に強力ですが、一つだけ注意点があります。それは「遺留分」という権利です。
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に保障された、最低限の遺産の取り分のことです。
これが何を意味するかというと、
- 相続人が「配偶者と親」の場合:
たとえ「全財産を配偶者に」という遺言書があっても、ご両親は遺留分として、本来の法定相続分(1/3)の半分、つまり財産全体の6分の1を請求する権利があります。 - 相続人が「配偶者と兄弟姉妹」の場合:
兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、「全財産を配偶者に」という遺言書があれば、兄弟姉妹が財産を請求することはできず、完全に配偶者に財産を遺すことができます。
この違いは非常に重要です。もしご両親がご存命で、遺留分がトラブルの種になりそうだと感じる場合は、遺言書を作成する際にその点を考慮した内容にしたり、なぜこのような遺言を遺すのかという想いを「付言事項」として書き添えたりするなどの配慮が大切になります。

【対策2】家族信託|認知症対策と円満な資産承継を両立
「遺言書だけでは、少し心配が残る…」という方には、近年注目されている「家族信託(家族の為の信託)とは」という選択肢があります。
家族信託とは、ご自身の財産を、信頼できる家族に託し、ご自身が定めた目的(例えば「自分の生活と、自分の死後は妻の生活のために使う」など)に従って管理・承継してもらう制度です。これは、単なる相続対策にとどまらず、生前の認知症などによる資産凍結リスクにも備えられるという大きな特徴があります。
家族信託のメリット:遺言書にはない柔軟性
子どもがいないご夫婦にとって、家族信託には遺言書にはない、以下のような大きなメリットがあります。
- 認知症による資産凍結を防げる
もし認知症などで判断能力が低下すると、銀行口座から預金が引き出せなくなったり、不動産を売却できなくなったりする「資産凍結」の状態に陥ります。家族信託を組んでおけば、財産を託された家族(受託者)が、ご本人のために引き続き財産の管理を行えるため、資産凍結の心配がありません。 - 二次相続以降の財産の行き先を決められる
これは子どもがいないご夫婦にとって最大のメリットかもしれません。例えば、「自分が亡くなった後は、妻に財産を使ってもらい、生活に困らないようにしてほしい。そして、妻が亡くなった後は、残った財産を自分の甥に渡したい」といった希望を叶えることができます。遺言は死亡時点での財産処分を指定する手段であり、遺言のみでは信託のように生前からの継続的な管理や受益者の長期的な管理体系を構築することは難しい場合があります。一方、家族信託は生前の管理と死亡後の受益配分を合わせて設計できるため、二次相続以降の管理や長期的な運用を考える場合に有効です。具体的な違いは専門家と確認してください。 - 不動産の共有問題を避けられる
相続によって不動産が複数の人の共有名義になると、売却や活用に全員の同意が必要になり、トラブルの原因になりがちです。家族信託を使えば、管理する人を一人に決めておけるため、スムーズな不動産管理が可能になります。
家族信託のデメリット:費用と専門知識が必要
非常に柔軟で便利な家族信託ですが、デメリットも理解しておく必要があります。
- 費用がかかる
家族信託の契約書(信託契約書)の作成を専門家に依頼するためのコンサルティング費用や、不動産を信託財産にする場合の登記費用など、遺言書の作成に比べるとコストは高くなる傾向があります。 - 専門的な知識が必要
信託契約書は、ご自身の希望を法的に間違いなく実現できるよう、非常に精密に設計する必要があります。インターネットのひな形などを使ってご自身で作成するのは極めて困難であり、トラブルの原因にもなりかねません。司法書士などの専門家への相談が不可欠です。 - 信頼できる受託者が必要
大切な財産を託す「受託者」の存在が前提となります。ご自身の兄弟姉妹や甥姪など、長期にわたって責任ある役割を任せられる、信頼できる方がいるかどうか、という点も重要になります。
【比較】あなたに最適な対策は?ケース別選び方ガイド
「遺言書」と「家族信託」、どちらが良いのか迷いますよね。ここでは、あなたの状況や希望に応じて、どちらの対策がより適しているかの目安をご案内します。

費用を抑え、配偶者に財産を遺したいなら「遺言書」
以下のような方は、まずは「遺言書」の作成を検討するのが良いでしょう。
- とにかく費用を抑えて、シンプルに対策をしたい。
- 相続財産は、主に今住んでいる自宅と預貯金だ。
- ご自身の親は既に亡くなっており、兄弟姉妹に遺留分がないため、遺言書だけで想いを実現できる。
- 将来の認知症のリスクよりも、まずは相続トラブルの防止を優先したい。
このケースでは、公正証書遺言を作成しておくことで、残された配偶者の負担を大きく減らし、安心して財産を引き継いでもらうことが可能になります。
認知症対策と二次相続まで考えたいなら「家族信託」
一方で、以下のような希望をお持ちの方には、「家族信託」が非常に有効な選択肢となります。
- 将来、自分や配偶者が認知症になった時の財産管理がとても心配だ。
- アパートや駐車場など、収益を生む不動産を持っている。
- 自分の死後、妻の生活はしっかり守りたい。でも、最終的には自分の家系の親族(甥や姪など)に財産を引き継いでほしい。
- 多少費用がかかっても、将来にわたって安心できる、盤石な仕組みを整えたい。
家族信託は、遺言書ではカバーしきれない、より複雑で長期的な希望を叶えるためのオーダーメイドの対策といえます。
独身(おひとりさま)の場合の相続対策は?
子どもも配偶者もいない、いわゆる「おひとりさま」の場合、相続対策の重要性はさらに高まります。
何の対策もしなければ、財産はご両親へ、ご両親が亡くなっていれば兄弟姉妹(や甥姪)へと引き継がれます。特に相続人が甥や姪になると、関係性が疎遠なケースも多く、遺産分割の話し合いが難航しがちです。
そのため、おひとりさまの場合は、遺言書の作成は必須と言っても過言ではありません。遺言書があれば、兄弟姉妹や甥姪だけでなく、例えば「長年お世話になった友人」や「応援したいNPO法人」など、法律上の相続人以外の方へ財産を遺す(遺贈する)ことも可能です。ご自身の人生の集大成として、想いを託す相手を自由に決めることができるのです。
不安な時は専門家へ。司法書士がお手伝いできること
ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。子どもがいない方の相続について、基本的なルールや対策をご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、同時に「自分の場合はどうなんだろう?」「手続きが複雑で、一人でやるのは難しそう…」といった新たな疑問や不安も生まれてきたかもしれません。
そんな時は、どうか一人で悩まず、私たちのような相続の専門家にご相談ください。司法書士は、あなたの想いを法的に実現するためのプロフェッショナルです。
私たち司法書士法人れみらい事務所では、具体的に以下のようなお手伝いができます。
- 誰が相続人になるのかを戸籍等で正確に調査します。
- あなたの想いを丁寧にお伺いし、最適な遺言書の内容をご提案し、作成をサポートします。
- 複雑な家族信託の仕組みを分かりやすくご説明し、あなただけの信託契約の設計から登記まで一貫してサポートします。
- その他、生前贈与や不動産の名義変更など、あらゆる相続関連の手続きに対応します。
私たちは、兵庫県尼崎市南塚口町に拠点を置く司法書士法人れみらい事務所(兵庫県司法書士会所属)です。敷居の高くない、何でも気軽に話せる法律の専門家でありたいと願っています。当事務所には代表司法書士の上西祥平、大貫智江(女性)が在籍しており、ご希望に応じて柔軟に対応することも可能です。
何より大切なのは、あなたが「安心」して未来を迎えることです。そのための第一歩として、まずは専門家の話を聞いてみませんか?
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