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株式の譲渡制限に関する規定
ご自身で会社を経営されている方は、会社の登記簿謄本をご覧になったことがあるでしょう。中小企業や同族会社などの殆どでは、登記簿謄本の中で「株式の譲渡制限に関する規定」という欄に登記がされているかと思います。では、株式の譲渡制限に関する規定とは具体的にどういうものを指すのでしょうか。
株主が誰であるかは会社の経営について重大な事項であり、知らない間に株主が変わってしまっては安定した会社の運営の妨げになってしまうかもしれません。そこで株式会社は、その発行する全部又は一部の株式の内容として、「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する」旨を定款で定めることができることとされています。この定めは登記事項とされていますので、定款で定めることにより、前述の通り会社の登記簿謄本に記録されることとなります。この定めがされた株式を「譲渡制限株式」と呼びます。
株式会社がその発行する一部の株式の内容として、譲渡制限に関する規定を設定する場合には、以下の事項を定款で定めなければなりません。
①当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨
譲渡による取得を承認する機関については、原則として株主総会になりますが、定款に定めることにより「取締役会」や「代表取締役」とすることも可能です。
②一定の場合においては株式会社が当該株式の譲渡による取得について承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合
上記②の具体的な記載内容としては、「当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得するときは、当会社が承認をしたものとみなす。」というようなものになります。
株式の譲渡制限がされている会社は
全ての株式について譲渡制限が設けられている会社を非公開会社といいます。逆に1株でも譲渡制限が設けられていない株式が存在すれば、その会社は公開会社といいます。
非公開会社か公開会社かは、株式会社の機関設計においても大きな差があり、非公開会社と公開会社では次のような違いが生まれます。
非公開会社と公開会社の違い
大きな違いとしては、以下のような点が挙げられます。
- 取締役会の設置義務
公開会社では、取締役会の設置義務があります。
- 取締役の任期
非公開会社では、定款の定めにより10年まで伸長することができますが、公開会社では2年となります。
- 発行可能株式総数の規制
非公開会社では、特段制限はありませんが、公開会社では発行済株式総数の4倍を超えて発行可能株式総数を定めることはできません。
株式の譲渡制限に関する規定を変更するには
非公開会社では、株式に譲渡制限をしておくことで、第三者が株主になるリスクがなくなり、会社運営をコントロールすることができます。しかしながら、会社の規模を大きくしていったり、株式上場をすることになった場合などは、非公開会社では募集株式などによる資金調達をすることが難しく、公開会社にしなければならないケースも出てきます。
その際には「株式の譲渡制限に関する規定」を廃止することで、公開会社に移行することができます。
ただし、株式の譲渡制限に関する規定の変更するには、株主総会の特別決議が必要です。
また、公開会社になる際には既存の役員の任期は一旦満了となるために、新たに重任、就任、退任などの手続きも必要となりますので、ご注意ください。
当事務所では定款のチェックも行っておりますので、古くからある歴史ある会社だが、今の会社の事業形態に合わせた内容で機関設計を変更したい、などのご相談もお受けいたします。
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