根抵当権の債務者が亡くなったときには

根抵当権の債務者が亡くなったら

 元本確定前の根抵当権の債務者について相続が開始した場合には、その相続開始時に存在する債務は、相続人が承継します。よって、債務を承継した相続人を明らかにするためにも債務者の変更登記が必要となってきます。

 債務者の表示は登記簿謄本にも記載されますので、共同相続人全員の住所や氏名を記載することとなります。ただし相続人の中で相続放棄をした方がいる場合には、初めから相続人とならないために債務者として記載されることはありません。

指定債務者の合意とは

 根抵当権の債務者が亡くなられたときに、根抵当権者(銀行等)と債務者の相続人が元本を確定させないで引き続き根抵当権枠での取引を継続しようとするときは、

①債務者の相続による変更登記のほかに②根抵当権者と設定者(所有者)の合意により定める「指定債務者の合意」の登記もしなければなりません。

指定債務者とは、相続開始後に債務を負担するものであり、相続人の中から指定しなければなりません。

 この②の登記は①の登記とともに、債務者の相続開始後6ヶ月以内にしなければ当該根抵当権の元本は確定してしまいますので、注意が必要です。

この①、②の登記をすることで元本は確定せずに、当該根抵当権は亡くなった債務者が相続開始時に存在する債務及び指定債務者が相続開始後に負担する債務を担保することとなるため、

従前通りの取引ができるようになります。

指定債務者の合意と利益相反

 元本確定前の根抵当権の債務者及び設定者(所有者)である父が死亡し、未成年者の子が根抵当権の対象となっている不動産を相続することは勿論可能です。

ただし、母親が子に代わって指定債務者とする合意は、親の債務を子が担保提供することとなり、利益相反に該当します。

利益相反に該当するような場合には、その子のために特別代理人を選任するために家庭裁判所への手続きが必要となってきます。

登記手続きについて

①、②の登記は当該根抵当権の対象となっている不動産の相続登記手続とは別個のものです。

仮に、亡くなった父が不動産の設定者(所有者)及び根抵当権の債務者であった場合(相続人は配偶者と子1人)で考えてみると

1、不動産の相続による所有者の名義変更登記(登録免許税:不動産の固定資産税評価額×1000分の4

        ⇓

2、根抵当権の債務者(父から配偶者と子へ)の変更登記(登録免許税:不動産1個につき1,000円)

        ⇓

3、指定債務者(配偶者か子のどちらか)の合意の登記(登録免許税:不動産1個につき1,000円)

と、3種類の登記手続が必要です。(同時に申請することはできます)

 

もし亡くなられた方が個人事業主であった場合などには、根抵当権の債務者になっていることも考えれらますので、事業をされていた方の相続手続きには特に注意する必要があるでしょう。

当事務所はあらゆる相続手続きにも親身にサポートいたしますので、相続手続きのことや亡くなられた方の借入のことなどで不安や悩みがある方は一度ご相談ください。

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