証券会社の相続手続き 流れ・書類・注意点

【まず確認】証券会社の相続、何から始めるべき?

大切なご家族がお亡くなりになり、心身ともに大変な時期をお過ごしのことと存じます。悲しみに暮れる間もなく、さまざまな手続きに追われ、戸惑いや不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。

特に、故人様が株式や投資信託などをお持ちだった場合の「証券会社の相続手続き」は、普段聞き慣れない言葉も多く、何から手をつけて良いか分からなくなってしまうのも無理はありません。

でも、ご安心ください。この記事を最後までお読みいただければ、複雑に思える手続きの全体像がはっきりと見え、「次に何をすべきか」が具体的にわかります。一つひとつのステップを丁寧にご説明しますので、ご自身のペースで着実に進めていきましょう。

まずは、大まかな流れを掴むことが大切です。証券会社の相続手続きは、大きく分けると以下の3つのステップで進みます。

  • ステップ1:証券会社へ連絡する
  • ステップ2:必要な書類を集める
  • ステップ3:書類を提出し、手続きを完了させる

以下で各ステップを解説します。

証券会社の相続手続きの簡単な流れを示す3ステップの図解。連絡、書類収集、手続き実行の順。

証券会社の相続手続き、完了までの全6ステップ

それでは、証券会社の相続手続きの具体的な流れを、6つのステップに分けて見ていきましょう。いつ、誰が、何をするのかを意識しながら読み進めてみてください。

ステップ1:証券会社へ死亡の連絡と口座の特定

まず最初に行うことは、故人様が取引されていた証券会社へ連絡し、亡くなった旨を伝えることです。通常は、口座を開設した支店(お客様窓口)に電話をします。もしどの支店か分からなければ、コールセンターや本社の代表番号に電話をして事情を説明すれば、担当部署につないでもらえます。

この連絡により、故人様の口座は凍結されます。凍結されると、株式の売買や出金など一切の取引ができなくなります。これは、相続財産を安全に保全し、一部の相続人が勝手に手続きを進めてしまうといったトラブルを防ぐための重要な措置です。

【故人が取引していた証券会社がわからない場合】
タンスや郵便物などから取引の報告書が見つからない場合、「証券保管振替機構(ほふり)」に情報開示請求を行うことで、故人様が口座を持っていた証券会社を調べることができます。手続きには戸籍謄本などが必要になりますが、心当たりがない場合は有効な手段です。

ステップ2:相続手続き依頼書と必要書類リストの取り寄せ

証券会社へ連絡すると、数日から1週間ほどで「相続手続依頼書」や「必要書類のご案内」といった書類一式が郵送されてきます。

相続手続きに必要な書類は、どの金融機関でも似ていますが、証券会社ごと、あるいは遺言書の有無などの状況によって微妙に異なります。そのため、必ずこの案内を取り寄せてから、書類収集を始めるようにしましょう。先に集めてしまうと、二度手間になってしまう可能性があるため注意が必要です。

ステップ3:必要書類の収集【取得方法も解説】

証券会社から届いたリストをもとに、必要書類を集めていきます。このステップが、相続手続きの中で最も時間と手間がかかる部分かもしれません。

特に大変なのが、「故人様の出生から死亡までの一連の戸籍謄本」の収集です。故人様が何度も転籍(本籍地を移すこと)されている場合、そのすべての市区町村役場に請求する必要があり、時間も労力もかかります。

戸籍謄本は、本籍地の役所でしか取得できません。遠方の場合は、郵送で取り寄せることも可能です。司法書士に依頼することで、戸籍収集など一定の手続きを委任できる場合があります。具体的に代行可能な業務範囲や委任手続きの要否は事案により異なるため、事前に対応可能な業務内容と委任の方法についてご確認ください。

また、集めた戸籍謄本を使って法務局で「法定相続情報一覧図の上手な使い方」を取得しておくと、その後の手続きで戸籍謄本の束を何度も出し直す手間が省けるので便利です。

ステップ4:遺産分割協議と協議書の作成

遺言書がなく、相続人が複数いらっしゃる場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行う必要があります。

証券口座の財産(株式や投資信託など)については、

  • 誰か一人が代表して相続するのか
  • 銘柄ごとに分けるのか
  • すべて売却して現金化し、その現金を分けるのか

といった点を具体的に話し合います。全員の合意が得られたら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名し、実印を押印します。この協議書は、後のトラブルを防ぐためにも非常に重要な書類です。

当事務所では、ご状況に合わせた遺産分割協議書の作成サポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。

ステップ5:証券会社へ書類を提出

ステップ2で取り寄せた「相続手続依頼書」に必要事項を記入し、ステップ3と4で準備したすべての書類を添えて、証券会社に提出します。郵送で提出することが一般的です。

提出する前には、必ずすべての書類のコピーを取っておくことをお勧めします。万が一の郵送事故や、後で内容を確認したくなった際に手元に控えがあると安心です。

書類に不備があると、手続きが遅れてしまう原因になります。証券会社からの連絡にすぐ対応できるよう、心づもりをしておきましょう。

ステップ6:相続人の口座へ資産の移管・名義変更

提出した書類に不備がなければ、証券会社で審査と名義変更の手続きが進められます。通常、書類提出から2~4週間程度で手続きが完了します。

手続きが完了すると、故人様の口座にあった株式や投資信託などが、財産を相続することになった相続人の口座へ移管されます。もし、相続人の方がその証券会社に口座をお持ちでない場合は、事前に新しく口座を開設しておく必要があります。

通常はここまでで証券会社側の名義変更等の手続きが完了しますが、事案によっては追加書類や別途の手続きが必要となることがあります。

証券会社の相続手続き完了までの6つのステップを順番に示したフローチャート。

【図解】証券口座の相続、必要書類と取得方法一覧

ここでは、証券会社の相続手続きで必要になる主な書類と、その取得方法を一覧にまとめました。ご自身の状況に合わせて、何が必要かを確認する際にお役立てください。

必ず必要になる書類

遺言書の有無などにかかわらず、ほとんどのケースで必要となる基本的な書類です。

書類名取得場所なぜ必要か
被相続人(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本等本籍地の市区町村役場相続人が誰であるかを法的に確定させるため
相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)本籍地の市区町村役場相続人が現在も生存していることを証明するため
相続人全員の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内など期限あり)住所地の市区町村役場遺産分割協議書などに押された印鑑が本人のものであることを証明するため
証券会社所定の相続手続依頼書取引のあった証券会社相続手続きを正式に依頼するため
基本的な必要書類一覧

※尼崎市にお住まいの方の戸籍謄本や印鑑証明書は、尼崎市役所や各サービスセンターで取得できます。郵送での請求も可能です。

ケース別に必要になる書類

ご状況に応じて、上記の書類に加えて以下の書類が必要になります。

ケース追加で必要になる主な書類注意点
遺言書がある場合遺言書(公正証書遺言または自筆証書遺言)自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。
遺産分割協議をした場合遺産分割協議書(相続人全員の実印を押印)誰がどの財産を相続するのかを明確に記載します。
家庭裁判所の調停・審判で決まった場合調停調書謄本または審判書謄本家庭裁判所に請求して取り寄せます。
ケース別の追加書類

証券会社の相続で起きがちな3つのトラブルと回避策

証券口座の相続は、預貯金とは異なる特有の注意点があり、思わぬトラブルに発展することもあります。ここでは、実際に私たちがご相談を受けることが多い3つの事例と、その回避策をご紹介します。

複雑な相続手続きの書類を前に、頭を抱えて悩んでいる男性。

事例1:株価の変動で相続人間が不公平に…

株式は、ご存知の通り日々価格が変動します。遺産分割協議で「Aさんは甲社の株、Bさんは乙社の株」と決めた後、手続きが完了するまでの間に甲社の株価は下がり、乙社の株価は上がってしまう…ということが起こり得ます。

そうなると、Aさんから「不公平だ」と不満が出て、トラブルに発展しかねません。

【回避策】
このような事態を防ぐため、遺産分割協議書を作成する際に、「どの時点の株価で評価するのか」という基準日を明確に定めておくことが非常に重要です。「被相続人の死亡日(相続開始日)の終値」「遺産分割協議日の終値」など、相続人全員が納得する基準を決めて、その旨を協議書に記載しておきましょう。

事例2:相続人の一人が手続きに協力してくれない…

「遺産分割協議書に実印を押してくれない」「必要な書類を提出してくれない」など、相続人の一人が非協力的なために、手続きが全く進まなくなってしまうケースも少なくありません。

背景には、故人様との関係性や他の相続人への不満など、感情的なしこりが隠れていることも多いです。

【回避策】
まずは、なぜ協力してくれないのか、相手の言い分を冷静に聞く姿勢が大切です。感情的にならず、丁寧な対話を心がけましょう。それでも話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるという方法があります。調停では、調停委員という中立な第三者が間に入って話し合いを進めてくれるため、当事者同士よりも冷静に解決策を探ることができます。専門家が代理人として関与することで、話し合いを円滑に進められる可能性が高まる場合があります。

事例3:相続したくない…口座に借金があった

証券口座にあるのは、プラスの財産(株式や投資信託など)だけとは限りません。特に注意が必要なのが「信用取引」です。

信用取引を利用していると、証券会社からお金を借りて株式投資をしている状態、つまり口座に借金(負債)が存在する可能性があります。もしプラスの財産より負債の方が多い場合、その借金も相続してしまうことになります。

【回避策】
まずは証券会社に残高証明書を発行してもらい、資産と負債の全体像を正確に把握することが不可欠です。万が一、借金の方が多い、あるいは関わりたくないという場合は、「相続放棄」という選択肢があります。これは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないという手続きです。ただし、原則として「自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所で手続きをする必要があります。この期限は非常に重要ですので、少しでも不安を感じたら、すぐに専門家へご相談ください。
相続放棄について、詳しくはこちらのページもご覧ください。

相続手続きに関するQ&A

最後に、証券会社の相続手続きに関してよくいただくご質問にお答えします。

Q. 手続きにはどれくらいの期間がかかりますか?

A. ケースバイケースですが、一般的な目安として、相続人が確定し、必要書類の収集を始めてから完了するまで、全体で2ヶ月~4ヶ月程度かかることが多いです。
内訳としては、戸籍謄本の収集や遺産分割協議に1~2ヶ月、書類を証券会社に提出してから手続きが完了するまでに2~4週間ほどです。相続人の人数が多い場合や、遺産分割協議が難航した場合は、さらに時間がかかることもあります。

Q. 相続した株式や投資信託はどうすればいいですか?

A. 相続した後の選択肢は、大きく分けて2つあります。

  1. そのまま保有する(名義変更)
    今後、株価が上がることを期待する場合や、配当金・株主優待を受けたい場合などは、ご自身の証券口座に移して保有を続けることができます。
  2. 売却して現金化する
    株式投資に興味がない、管理が面倒、あるいは他の相続人と公平に分けたいといった場合には、売却して現金に換えることができます。ただし、売却して利益が出た場合は、譲渡所得税がかかる点に注意が必要です。

どちらが良いかは、ご自身の投資経験や今後のライフプランによって異なります。税金のことも含め、慎重に判断しましょう。

Q. 費用はどれくらいかかりますか?

A. 手続きにかかる費用は、「ご自身で支払う実費」と「専門家に依頼した場合の報酬」に分けられます。

  • 実費:戸籍謄本(1通450円)、印鑑証明書(1通300円前後)などの取得費用、証券会社によっては残高証明書の発行手数料(数千円程度)がかかります。
  • 専門家への報酬:司法書士などに依頼する場合、依頼する業務の範囲(戸籍収集のみ、遺産分割協議書作成、手続き全体など)によって費用は異なります。

当事務所では、ご依頼いただく前に必ず明確なお見積もりを提示しております(※)。まずは無料相談をご利用いただき、どのくらいの費用がかかるのかを確認してみてください。※無料相談は初回60分まで、お見積りはご依頼を前提とする場合に限ります。

尼崎で証券会社の相続手続きにお困りなら、れみらい事務所へ

ここまで、証券会社の相続手続きの流れや注意点について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

「やっぱり書類集めが大変そう…」「相続人同士で揉めないか心配…」「仕事や家事で忙しくて、手続きを進める時間がない…」

もし、少しでもこのように感じられたら、ぜひ私たち司法書士法人れみらい事務所にご相談ください。

相続の専門家である司法書士にご依頼いただくことで、

  • 戸籍謄本の収集等の業務を委任でき、取得手続きの代行を行うことが可能です。
  • 法的に有効な遺産分割協議書の作成をサポートし、将来的な争いのリスクを低減することを目指します。
  • 証券会社とのやり取りを含め、手続き全体をスムーズに進められるよう支援します。

何より、専門家が伴走することで、手続きに対する精神的なご負担を大きく軽減できるはずです。

私たち司法書士法人れみらい事務所(兵庫県司法書士会所属/所在地:兵庫県尼崎市南塚口町2丁目19番2号 若松ビル201/代表司法書士 上西祥平、大貫智江)は、ここ尼崎市に拠点を置き、これまで数多くの相続問題と向き合ってまいりました。法律の専門家として手続きを正確に進めるのはもちろんのこと、ご家族を亡くされたご依頼者様のお気持ちに寄り添い、心と想いを大切にすることを何よりも重視しています。

初回のご相談は無料です(※初回60分まで)。どんな些細なことでも構いません。まずはお気軽にお話をお聞かせください。あなたのお悩みを解決するお手伝いができれば幸いです。

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