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吸収合併とは
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併のことで、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させることをいいます。ただし、特例有限会社は、吸収合併存続会社になることはできません。以下、権利義務の全部を承継し合併後に存続する会社を「存続会社」といい、合併により消滅する会社を「消滅会社」といいます。
吸収合併契約の締結
会社が、吸収合併をする場合には、吸収合併契約を締結しなければなりません。具体的には吸収合併存続会社が株式会社であるときは、吸収合併契約において、次に掲げるような事項について定めなければなりません。
法定記載事項 |
①存続会社及び消滅会社の商号及び住所 |
②存続会社が吸収合併に際して消滅会社の株主又は消滅持分会社の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての事項 |
③消滅会社が新株予約権を発行しているときは、存続会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該存続会社の新株予権又は金銭についての事項 |
④吸収合併の効力発生日 |
吸収合併の場合、消滅会社が発行している新株予約権は当然に消滅します。よって対価として存続会社の新株予約権を交付する場合は、新株予約権を交付することを、又新株予約権を交付することを認めない場合は、これに代わる金銭を交付することを合併契約書に記載しなければなりません。そのため、新株予約権の内容として、合併に際して存続会社の新株予約権を交付する旨の定めがあっても、合併契約書にその旨の記載がなければ、当然に存続会社の新株予約権が交付されることはありません。
この場合、消滅会社の新株予約権の新株予約権者は、消滅会社に対して、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求できます。
吸収合併の手続きについて
吸収合併の手続きは以下のような手順を踏んでいくために、すぐに吸収合併を行うことはできません。最短でも2ケ月程度はかかると思っておいた方が良いでしょう。
存続会社 | 消滅会社 | |
承認決議権限 |
原則:株主総会の特別決議 例外:①消滅会社の株主に対して交付する対価(「株数」×「1株当たりの純資産額」)が純資産額の5分の1以下のときは、株主総会の承認不要(※簡易合併) ②存続会社が消滅会社の特別支配会社である場合は、株主総会の承認不要(※略式合併) 例外の例外:株主総会の特殊決議 ①存続会社に差損が生じる場合 ②法務省令で定める数の株式を有する株主が吸収合併に反対する旨を存続会社に対し通知した場合 ③消滅会社に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続会社の譲渡制限株式である場合であって、存続会社が公開会社でない場合(①、②は簡易合併にのみ適用)
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原則:株主総会の特別決議 例外:存続会社が消滅会社の特別支配会社であるときは、株主総会決議は不要(※略式合併) 例外の例外:吸収合併における合併対価の全部又は一部が譲渡制限株式である場合であって、消滅会社が公開会社であり、かつ、種類発行株式会社でないときは株主総会の特殊決議 |
債権者保護手続 |
以下に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別の催告が必要(但し、定款で公告方法を日刊新聞紙や電子公告と定めているときは、官報公告に加えて定款の公告方法による公告を行うことで、各別の催告を省略できる) (1)吸収合併をする旨 (2)消滅会社の商号・住所 (3)存続会社及び消滅会社の計算書類に関する事項として定めるもの(貸借対照表の要旨) (4)債権者が一定の期間内(1か月以下は不可)に異議を述べることができる旨
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以下に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別の催告が必要(但し、定款で公告方法を日刊新聞紙や電子公告と定めているときは、官報公告に加えて定款の公告方法による公告を行うことで、各別の催告を省略できる) (1)吸収合併をする旨 (2)存続会社の商号・住所 (3)存続会社及び消滅会社の計算書類に関する事項として定めるもの(貸借対照表の要旨) (4)債権者が一定の期間内(1か月以下は不可)に異議を述べることができる旨
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書面の備置 |
(1)事前備置 債権者保護手続等を行う日から、以下のような事項を記載した書面等を本店に備え置かなければならない(効力発生日から6ヶ月経過するまで) ●合併契約の内容 ●合併対価の相当性に関する事項 ●計算書類等に関する事項 (2)事後備置 株式会社であるときは、吸収合併の効力発生日以後遅滞なく、法務省令で定められている事項について記載した書面または電磁的記録を作成して、効力発生日から6ヶ月間本店に備え置かなければならない |
債権者保護手続等を行う日から、以下のような事項を記載した書面等を本店に備え置かなければならない(効力発生日まで) ●合併契約の内容 ●合併対価の相当性に関する事項 ●計算書類等に関する事項 |
登記申請の添付書類 |
●吸収合併契約書 ●合併契約を承認した株主総会議事録(存続会社、消滅会社) ●債権者保護手続書面 ●資本金の計上に関する証明書 ●株主リスト(存続会社、消滅会社) 等 |
不要 |
吸収合併の登記
会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から2週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、存続する会社については変更の登記を同時に申請しなければなりません。また、存続会社と消滅会社の管轄法務局が異なる場合には、存続会社の本店所在地を管轄する法務局を経由して申請します。
吸収合併の効力発生時期
存続会社は、吸収合併の効力発生日に、消滅会社の権利義務を承継します。消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、第三者に対抗することはできません。また、吸収合併の効果は、債権者保護手続きが終了していない場合には、生じません。
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