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抵当権の債務者の相続
債務者の相続が発生した場合には、その債務については誰が引き継ぐ形となるのでしょうか。
判例(最判昭34・6・19)によると「被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する」と解されています。
例えば、債務者(A)が亡くなり、その相続人が妻(B)と子(C)の場合には、Aの債務は当然にBとCに承継されることとなります。(ただし、連帯債務となるものではありません)
このような法定相続による抵当権の債務者の変更をするときには、Aの死亡日を原因日付として、抵当権者(金融機関)と共同申請による債務者の変更登記を行います。
相続による債務者変更登記について
債務者変更登記については、登録免許税が不動産1筆につき1,000円かかります。
申請書の記載例は以下のようなものとなります。
登記申請書 登記の目的 抵当権変更 原 因 令和●年●月●日相続 変更後の事項 債務者(※1) 住所 兵庫県尼崎市南塚口町●● 氏名 B 住所 兵庫県尼崎市南塚口町●● 氏名 C 権 利 者(※2) 住所 兵庫県尼崎市塚口本町●● 氏名 ●●銀行株式会社 義 務 者(※3) 住所 兵庫県尼崎市南塚口町●● 氏名 B 住所 兵庫県尼崎市南塚口町●● 氏名 C |
※1 債務者は新たに債務者となる相続人の方を記載します
※2 権利者とは抵当権者である金融機関などのことです。
※3 義務者とは設定者のことで、対象不動産の所有者のことです。
その他添付書類として、義務者の登記識別情報(登記済証)が必要となりますので、ご注意ください。
特定相続人が債務を引き受けるとき
相続した債務は各共同相続人が、その相続分に応じて承継するとされています。それでは、相続人間の協議などにより、特定相続人に債務を引き受けさせることは出来るでしょうか。
この場合には以下のような2種類の方法で手続きを行うことができます。
①免責的債務引受による方法
一旦、法定相続人による債務者変更登記をした後に、相続人間で遺産分割によらず、債務をその内の一人に承継させたいような場合には免責的債務引受による手続きがあります。
このケースでは抵当権者と債務者間で、相続人の誰かが債務を引き受ける旨の合意をとることとなります。
②遺産分割協議による方法
相続した債務も遺産分割協議の対象とされていますので、遺産分割協議により特定相続人に債務を承継させる旨の協議も有効です。
そのような遺産分割協議が成立したら、抵当権者の承諾を得た上で、直接引き受ける相続人を債務者とする抵当権の変更登記をすることができます。
①、②いずれの方法をとる場合にも、「抵当権者の同意」は必ず事前にとっておきましょう。