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抵当権を相続させるには
抵当権は、担保権の一種で、相続人に引き継がれる権利です。抵当権の相続は通常、不動産や借入金の相続とともに行われますが、状況によって複雑になることがあります。
以下に、抵当権が相続される際についての注意点を記載しましたので、参考にしてください。
1. 抵当権の相続の基本
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抵当権の性質
抵当権は財産権の一部として相続され、複数の相続人がいる場合は、その相続分に応じて共有されます。
例: 抵当権を持つ親が亡くなり、子ども2人が相続する場合、抵当権の持分は各1/2になります。 -
被担保債権の相続
抵当権は債権を担保する権利であるため、被担保債権(貸金など)が相続されなければ抵当権も無効になります。相続人は被担保債権を確認する必要があります。
2. 登記の変更手続き
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抵当権の相続が発生した場合、抵当権移転登記を行う必要があります。
必要な書類:- 被相続人の死亡届出書類(戸籍謄本など)
- 相続人の戸籍謄本
- 相続財産目録
- 登記識別情報または登記済証(権利証)
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登記をしないと、不動産の売却や担保設定時に問題が発生する可能性があります。
3. 抵当権相続に伴うトラブル
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相続人間の意見の不一致
相続分や債権の回収方針について意見が分かれることがあります。この場合、調停や専門家の仲介が必要です。 -
被担保債権の消滅
被相続人の死亡時点で債権が消滅している場合、抵当権も無効になります。この点を確認するため、債権の状況を調査する必要があります。
4.まとめ
抵当権や相続の問題でお困りのことがあれば、専門家に相談することでスムーズに進められることもあります。
抵当権のみならず、相続問題についてのご相談ごとがあれば、気軽にご連絡ください。
誰に相続させるべきかお悩みの際は
誰に相続させるべきか
「誰に相続させるか」という点でお悩みの際は、法律上の権利や、家族関係、被相続人の意思など、さまざまな要素を考慮して決められます。主に以下のような観点から整理すると分かりやすいかもしれませんので、参考にしてください。
1. 法定相続分に基づく相続
- 日本の民法において、相続人として優先されるのは主に配偶者と血縁関係にある子どもや親、兄弟姉妹です。
- 配偶者は常に相続人となり、他の相続人(子ども、親、兄弟姉妹)と共に財産を分け合います。
- 各相続人の相続分は、法定相続分に従って割合が決まります。たとえば、配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者の相続分は1/2、子どもが残りの1/2を分け合います。
2. 遺言に基づく相続
- 被相続人が遺言書を残している場合、基本的には遺言書に従って財産を分配します。遺言書は、被相続人の意思を尊重するために法律的にも強い効力があります。
- ただし、相続人には遺留分という最低限の取り分が認められているため、遺留分を侵害する内容の遺言であれば、遺留分を請求することも可能です。
3. 家族の事情や配慮すべき背景
- 被相続人が特に世話になった相続人や、生活に困っている相続人に対して配慮したい場合も多くあります。その場合、遺言でその相続人に多くの財産を相続させることが可能です。
- 相続分の割合を変えたい場合や、特定の家族に多くの財産を残したい場合は、できる限り遺言書を作成して意思を明確にすることが推奨されます。
具体的な状況に応じた相続人の決定
- 配偶者と子どもがいる場合:配偶者が1/2、子どもたちが残りの1/2を分け合うのが基本ですが、被相続人が特定の子どもに多くを遺したい場合は遺言で指定可能です。
- 子どもがいない場合:親や兄弟姉妹が相続人に含まれます。法定相続分では配偶者が3/4、親が1/4(もしくは兄弟姉妹が1/4)となります。
- 相続人に特別な事情がある場合:たとえば、ある相続人が重い病気にかかっている、あるいは被相続人の介護を行っていたなどの場合、その相続人に配慮するための相続割合の変更も検討されることがあります。
相続人やその相続割合について迷った場合は、遺言書を活用して明確に意思を表すことが、遺族間のトラブルを避けるために重要です。
遺言書の作成でご検討の方や、お困りの方がおられれば、気軽にご相談ください。その上で適切な相続方法を決定すると良いでしょう。
相続人申告登記の利用について
相続人登記申告制度の背景
相続人申告等制度は、相続登記の申請を義務化する新しい制度です。2024年4月1日から施行されたこの制度は、相続や遺贈によって不動産を取得した場合、相続登記の申請が義務化されたことを目的としており、相続登記が長期間放置されることによって生じるさまざまな問題を解消するために導入されました。従来、相続登記は任意で行われていたため、相続人が登記を怠っても法的なペナルティはありませんでした。しかし、登記がされないことで、以下のような問題が発生していました。
- 不動産の権利関係が不明確: 長期間にわたり相続登記が行われないと、次世代にわたる相続が発生し、権利関係が複雑になることがあります。
- 売却や利用が困難: 相続登記がされていない場合、不動産の売却や担保としての利用が難しくなることがあります。
- 行政管理の困難化: 国や自治体が不動産を適切に把握できず、固定資産税の徴収などにも影響が出る可能性があります。
これらの問題を解決するため、相続登記の申請を義務化し、より迅速かつ確実に不動産の権利関係を明確にするための制度として、相続人登記申告制度が設けられました。
相続人登記申告制度の概要
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相続登記の申請義務
- 不動産を相続や遺贈により取得した相続人は、不動産の相続が発生したことを知ってから3年以内に、登記を申請する義務があります。
- もし、相続人が3年以内に申請しない場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。
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申請の内容
- 相続登記申請の内容としては、相続人が法定相続分に従って登記を申請する方法や、遺産分割協議による分割内容に基づいて申請する方法などがあります。
- もし遺産分割協議がまとまらない場合、法定相続分に従って一時的に共有名義で登記を行うことも可能です。
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相続人申告登記
- 相続登記を行う際に、特定の相続人に不動産を相続させるのではなく、相続人申告登記として「相続人であることのみ」を法務局に申告することができます。
- これにより、遺産分割協議が成立するまでの間、相続人の権利を保全しながら後日登記を修正することが可能です。
- 相続人申告登記を行う場合、所有権移転が確定するわけではなく、あくまで「相続人がいること」を示す登記にとどまります。
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相続放棄した場合の対応
- 相続人が相続放棄をした場合は、相続放棄の証明書類(家庭裁判所からの放棄証明書など)を添付して登記申請を行うことで、登記義務が免除されます。
罰則について
- 相続登記申告制度の義務に違反した場合、過料が課される可能性があります。ただし、この過料は、怠慢や不注意による場合に限られ、悪意がなければ直ちに課されるわけではありません。
- 罰則の対象になるのは、3年間の申告期限を過ぎた相続人です。期限内に申告することが重要です。
相続人登記申告制度を利用するケース
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相続開始を知ってから3年以内に手続き: 3年以内に相続登記の申請が難しいようであれば、罰則を回避する意味でも早目に手続きを進めることが求められます。
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遺産分割協議がまとまらない場合の対応: 遺産分割協議がまとまらない場合でも、法定相続分で登記するか、相続人申告登記を利用して登記を先行することが可能です。
制度のメリット
- 過料(罰則)を免れることができる:相続人申告登記を申請し、自身が相続人であることが登記されれば、とりあえず過料の対象とはなりません。
- 相続登記に比べると手続きが簡易である: 各相続人が単独で申請することができ、相続登記に比べると必要書類も少なく、簡易な手続きとなります。
制度のデメリット
- 売却などや担保設定をすることはできない:相続人申告登記は、相続人であることは表示されていますが権利関係を示しているわけではないので、申告登記された相続人が売主となって売却できるわけではありません。同様に金融機関から担保をつけて資金を借入することなどもできません。
- 遺産分割協議が成立した際などは再度登記申請が必要: 相続人間の協議がまとまれば、改めて権利関係を公示する為に、相続登記が必要です。相続登記の義務化は不動産の相続を知ってから3年以内とされていますので、3年以内に相続人間の協議がまとまりそうであれば、あえて相続人申告登記を利用しなくてもよいでしょう。
相続登記の必要性と注意点
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)の不動産を相続した際に、その不動産の名義を相続人の名義に変更する手続きです。日本では不動産の相続が発生した場合、相続登記を行わなければならず(令和6年4月より義務化されました)、これによって新しい所有者を対外的に公示することができます。
相続登記の必要性
相続登記を行うことにより、不動産の所有権が正式に相続人に移ります。この手続きを怠ると、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 不動産の売却や担保に利用できない: 相続登記がされていないと、不動産を売却したり、担保として利用することができません。
- 相続人が亡くなった場合の手続きが複雑化: 相続登記をしないまま相続人が亡くなった場合、次の相続人がさらに増え、手続きが煩雑になることがあります。
- 将来的な相続トラブルのリスク: 相続登記を行わないことで、将来的に相続人間でのトラブルが発生するリスクが高まります。
相続登記のポイントと注意点
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相続登記が義務化されたこともあり、早めに手続きするべき: 相続登記が義務化され(不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記をならない)と法律で明文化されました。それだけでなく、放置すると不動産を活用できない、相続人が増えるなどのリスクがあります。
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遺言書がある場合: 遺言書が存在する場合は、遺産分割協議は不要で、遺言書に従って登記が進められます。遺言執行者が指名されている場合は、その人が手続きを行います。
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相続人が複数いる場合: 相続人が複数いて遺産分割協議がまとまらない場合、共有名義で登記することが可能ですが、将来的に共有名義は不動産の処分や管理において問題が生じやすいので注意が必要です。
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司法書士に依頼することも可能: 手続きが複雑で不安がある場合や、相続人間の調整が必要な場合は、司法書士に依頼することも可能です。司法書士は、相続登記の専門家です。
遺言が必要な状況(代表的なケース)
遺言が必要な状況は、相続に関する希望を明確にしておきたい場合や、家族や相続人の間でトラブルを避けたい場合など、さまざまなケースが考えられます。遺言があると、被相続人(亡くなった方)の意思を確実に反映でき、法的な混乱や不和を避ける手助けになります。
以下に、遺言が必要となる代表的なケースとその理由を説明します。
1. 相続人以外に財産を残したい場合
法律で定められた「法定相続人」以外に財産を分け与えたい場合は、遺言が必要です。法定相続人は、通常は配偶者や子供、親などの近親者ですが、以下のような場合、遺言がなければその希望は実現しません。
- 内縁の配偶者に財産を残したい場合
- 友人や長年世話になった人、ボランティア団体などに財産を遺贈したい場合
- 遠縁の親戚に特定の財産を残したい場合
2. 法定相続分とは異なる分割をしたい場合
法定相続では、相続人間の財産分配が法律で定められていますが、遺言があれば、それに従って自由に分割方法を指定できます。
- 特定の相続人に多くの財産を与えたい場合(例えば、親の世話をしてくれた子供に多く渡したいなど)
- 逆に、特定の相続人に相続分を少なくしたい場合
- 特定の財産(家や土地など)を特定の相続人に与えたい場合
3. 相続人間でのトラブルを避けたい場合
遺産分割を巡る相続人同士の争いを防ぐために、遺言によって事前に分割方法を明確にしておくことが重要です。
- 遺言がない場合、相続人間での遺産分割協議が必要で、それが原因で争いが生じることがあります。特に財産が複雑な場合や不動産が絡む場合はトラブルが起こりやすくなります。
4. 事業の承継を考慮している場合
家業や会社など、事業を誰かに引き継ぎたい場合も遺言が重要です。
- 特定の相続人に会社の株式や事業資産を引き継がせたい場合、遺言によって明確に意思を示す必要があります。そうでなければ、遺産分割の際に会社が分割される可能性があり、事業の継続に支障をきたすことがあります。
5. 法定相続人が複数の配偶者や家族にまたがっている場合
再婚などにより、複数の家族が存在する場合、それぞれの家族間での財産分割が複雑になることがあります。このようなケースでは、遺言で分割方法を明確にしておくことで、トラブルを避けることができます。
- 前妻や後妻、異母兄弟などにまたがって相続が発生する場合、遺言がないと法定相続分に基づく分割がされますが、これは意図しない結果を招くことがあります。
6. 特定の財産の処分を指示したい場合
遺産の中に特定の不動産、骨董品、株式など、処分方法を明確にしておきたい財産がある場合、遺言でその処分方法を指示しておくことが有効です。
- 不動産を売却して現金で分配するのか、誰かに相続させるのかを明記しておかないと、相続人間で協議がまとまらない可能性があります。
7. 相続人が未成年の場合
相続人が未成年者である場合、遺言で後見人を指名しておくことが可能です。
- 親が亡くなった後、未成年の子供を誰が育てるのかという問題が発生するため、遺言で後見人を指定しておくと安心です。
8. 相続人に障がいがある、または援助が必要な場合
相続人が障がいや病気などの理由で特別な援助を必要とする場合、遺言でその相続人に対して配慮を示すことができます。
- 財産を信託する、生活費として定期的に支払われるようにするなど、遺言を活用して具体的な指示を行うことができます。
9. 遺言執行者を指定したい場合
遺言に基づく手続きを確実に実行してもらうため、遺言執行者を指定することができます。遺言執行者は、遺言に記載された内容を実際に実行する役割を持つ人です。
- 遺言があっても執行がスムーズに進まないケースがあるため、信頼できる人(弁護士、司法書士、相続人の中で特に適任の人など)を指定しておくことが重要です。
遺言作成を検討されている方は気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
相続放棄を検討する際の注意点
相続放棄を検討される方へ
相続放棄は、家庭裁判所への手続きが必要となり、口頭での放棄は効果をもちません。相続放棄をご検討される方へ注意点やリスクについて説明していきます。
主な注意点
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相続放棄の期限
- 相続放棄は、相続が開始したことを知ってから原則3か月以内に行わなければなりません。この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、期間内に手続きを完了しないと、相続を承認したとみなされることがあります。
- もしも、この期間内に財産の内容を確認できない場合、家庭裁判所に期間の延長を申請することができます。
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相続放棄の不可撤回
- 一度相続放棄をすると、原則として取り消すことはできません。誤った情報に基づいて相続放棄をしてしまった場合や、後から新たな財産が見つかった場合でも、放棄を取り消すことは非常に困難です。
- ただし、詐欺や脅迫によって相続放棄を行った場合など、特別な事情がある場合は、取り消しが認められることがあります。
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家族全員での協議
- 相続放棄をする際には、他の相続人と十分に話し合いを行うことが重要です。相続放棄は個別に行うことができますが、全員が放棄する場合、その後の財産処理に影響が出るため、家族全員で協議することをお勧めします。
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次順位の相続人への影響
- 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったとみなされます。そのため、次順位の相続人が新たに相続権を持つことになります。次順位の相続人が相続放棄を希望しない場合、予想外の責任を負わせてしまう可能性があります。
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負債の確認
- 被相続人に借金や未払いの債務がある場合、相続放棄を検討することが一般的です。ただし、負債だけでなく資産も放棄することになるため、プラスの財産がある場合は慎重に検討する必要があります。
主なリスク
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新たな財産が発見された場合
- 相続放棄後に、新たな財産が発見されたとしても、その財産を相続する権利は失います。特にプラスの財産が見つかった場合、それを受け取ることができないリスクがあります。
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負債が相続人の負担になる場合
- 相続放棄を行わないと、被相続人の負債が相続人に引き継がれることになります。負債の金額が大きい場合、相続することで大きな経済的負担を背負うリスクがあります。
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次順位の相続人が不在の場合
- 全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人がいないと、遺産の管理や清算が複雑化します。最終的に、相続財産清算人が選任され、財産が国庫に帰属することになりますが、その手続きは時間がかかる可能性があります。
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親族関係の悪化
- 相続放棄の決定が親族間でのトラブルや不和の原因になることもあります。特に、相続放棄によって次順位の相続人に負担がかかる場合、親族関係が悪化するリスクがあります。
相続放棄を検討する際のアドバイス
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困った時には専門家の相談:
相続放棄は法的に複雑な手続きであり、専門的な知識が必要です。お困りのことがあれば、専門家に放棄するかどうかを慎重に判断することをお勧めします。
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財産のリストアップ:
被相続人の財産や負債を詳細にリストアップし、それぞれの価値を確認した上で、相続放棄をするかどうかを決定します。
これらの点を考慮し、相続放棄を決定する前に十分な情報収集と検討を行うことが重要です。
相続人が全員相続放棄をすると、その財産は?
相続人が全員相続放棄をすると、その相続財産はどうなるのかについて、説明します。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産を一切受け取らないことを宣言する手続きです。相続放棄をすることで、被相続人の財産(プラスの財産とマイナスの財産の両方)を受け継ぐ権利を放棄します。
相続放棄の手続き
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家庭裁判所への申述:
- 相続放棄は、原則相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。この期間を「熟慮期間」と言います。
- 申述が受理されると、相続人は相続権を失います。
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必要書類の準備:
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の戸籍謄本、住民票除票
- 相続人の戸籍謄本
- その他、家庭裁判所が指定する書類
全員が相続放棄した場合の流れ
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次順位の相続人へ移行:
法定相続人全員が相続放棄をすると、相続権は次順位の相続人に移ります。法定相続人の順序は以下の通りです:※配偶者は常に相続人となります。
①被相続人の子供(直系卑属)
②被相続人の親(直系尊属)
③被相続人の兄弟姉妹
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例えば、子供全員が相続放棄をした場合、次に被相続人の親が相続人となります。親も相続放棄をすると、次に兄弟姉妹が相続人となります。
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相続人がいなくなる場合:
- 法定相続人全員が相続放棄をした場合、相続人がいなくなります。この場合、被相続人の財産は「相続財産清算人」によって管理されることになります。
- 相続財産清算人は家庭裁判所によって選任され、財産の管理および処分を行います。相続財産清算人の選任は、利害関係人(例えば債権者や特別縁故者であると主張する者など)が家庭裁判所に申し立てることができます。
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相続財産の清算:
- 相続財産清算人は、被相続人の財産を管理し、債権者への支払いを行います。債務が財産を上回る場合、財産を売却して債務の弁済に充てることになります。
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最終的な財産の処分:
- 債務を弁済した後に財産が残った場合、その財産は国庫に帰属します。
注意点
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相続放棄の取り消し:
- 一度相続放棄をすると、基本的には取り消すことはできません。ただし、特別な事情がある場合は例外的に取り消しが認められることもあります。
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相続放棄の影響:
- 相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます。したがって、相続放棄をした人は被相続人の財産に関して何の権利も持ちません。
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次順位の相続人への通知:
- 全員が相続放棄をする場合、次順位の相続人にその旨を通知することが望ましいです。次順位の相続人が相続放棄をするかどうかを判断するために必要な情報を提供することが求められます。
遺言による名義変更登記手続き
遺言がある場合の不動産の名義変更登記(相続登記)は、遺言に基づいて相続人が不動産の所有権を取得する手続きです。以下に、遺言がある場合の名義変更登記の流れと必要な書類について説明していきます。
遺言による名義変更登記の手続き
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遺言の確認:
- 遺言書が公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言のいずれかであるかを確認します。
- 自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、管轄の家庭裁判所で検認手続きを行います。(検認手続きには、別途費用や時間も要します)
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必要書類の準備:(下記は一例となりまので、状況によって必要書類が追加されることもあります)
- 遺言書: 公正証書遺言の場合はそのまま使用できます。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認済みの遺言書を用意します。
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本: 被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)を用意します。
- 被相続人の住民票の除票: 住民票から除かれたことを証明する書類です。
- 相続人全員の戸籍謄本: 遺言に記載された相続人の戸籍謄本を用意します。
- 相続人の住民票: 名義変更する相続人の住民票を用意します。
- 不動産の登記簿謄本: 対象不動産の登記簿謄本を用意します。
- 固定資産評価証明書若しくは課税明細書: 相続する不動産の固定資産評価証明書を市区町村役場で取得するか市区町村役場より毎年届く課税明細書で代用することもできます。
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登記申請書の作成:(司法書士に依頼される場合には、司法書士が全て作成します)
- 法務局のウェブサイトから「相続登記申請書」をダウンロードし、必要事項を記入します。
- 申請書には不動産の所在、地番、家屋番号などを正確に記載します。
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法務局への申請:(司法書士に依頼される場合には、司法書士が代わりに申請します)
- 上記の書類を揃え、管轄の法務局に登記申請を行います。
- 登記申請は郵送若しくは法務局窓口で直接申請します。
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登記完了の確認:
- 法務局での審査が完了すると、相続登記が完了します。
- 完了した登記簿謄本を取得し、新しい所有者名義になっていることを確認します。
注意点
- 遺言書がない場合や遺言書に不備がある場合は、相続人全員の協議による遺産分割協議書を作成し、それに基づいて相続登記を行う必要があります。
- 登記申請には登録免許税がかかります。登録免許税は、固定資産評価額に基づいて計算されます。(原則固定資産税評価額×0.4%)
司法書士に依頼するメリット
遺言の内容を確認した上で、必要書類の指示や場合によっては司法書士で取得することもできます。
また、申請書の作成・法務局への申請・登録免許税の代理納付も一貫して行うことができますので、安心してご依頼してください。
在日韓国人の相続手続きの注意点
在日韓国人の相続
在日韓国人の方が亡くなられた場合、相続に関して適用される法律は、亡くなられた方の国籍により決まります。
よって、日本に居住されていても在日韓国人の方は、相続に関しては韓国の法律が適用されることとなります。
相続手続きを韓国の法律に基づいて行うこととなると、韓国の法律を調べて理解する必要もあり、また集める書類なども増えることから手続きは煩雑になってきます。
それでは、長年の居住地である日本の法律(民法)に基づいて手続きをすることができないかといえば、手続きをする方法もあります。
遺言により相続の準拠法を指定する
遺言に「相続の準拠法を日本法とする」旨を定めておくことで、日本の民法に従って相続手続きを進めることができます。
遺言については、外国籍の方であっても、日本の公証役場で厚生省主遺言を作成することは可能です。
長年住まわれていた日本法を適用させた方が、相続発生後の手続きも容易に進めることができると思われますし、遺言書があることで相続人の負担も軽減されることでしょう。
その他遺言作成によるメリット
韓国籍の方の相続が発生すると亡くなられた方の相続人を確定させる為に、一般的に以下のような戸籍等が必要となってきます。
①外国人登録原票の写し
②住民票除票
③基本証明書
④家族関係証明書
⑤入養関係証明書
⑥婚姻関係証明書
⑦除籍謄本(被相続人の出生~2008年(戸籍制度廃止まで)のもの)
これらの書類を集めた上で、更に日本語翻訳文も全て作成することも必要です。
遺言を作成しておくことで、上記⑦の除籍謄本などを取得する必要性はなくなることから、費用面や手続き面でも負担は軽減されます。
在日韓国人のみならず、外国籍の方は残された相続人が相続手続きで困らないように、遺言書の作成を検討してみるのも一つでしょう。
遺言の作り直しや見直しを検討したい
遺言の作り直し
一度遺言を作成していても、作成者がご存命の間は、何度でも作り直したり、内容を変更することができます。
但し新たに作り直す際にも、遺言の方式に則っていなければなりませんが、その方法は問われません。(例えば、自筆証書遺言を公正証書遺言で作り直すなど)
複数の遺言が存在し、ある遺言の内容が他の遺言の内容に抵触するような場合には、後の遺言で前の遺言を撤回したものをみなされ、後の遺言が有効となります。
それでは、一度作成した遺言を見直すべきタイミングとはいかなるものでしょうか。
遺言の見直しを検討するタイミング
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家族構成の変化:
- 結婚:新たに配偶者が加わるため、遺言に配偶者の取り分を反映させる必要があります。
- 離婚:離婚により、元配偶者への遺産分配を見直す必要があります。
- 子供の誕生:新たに子供が生まれた場合、その子供の取り分を遺言に追加します。
- 相続人の死亡:相続人が亡くなった場合、遺産の分配方法を変更する必要があります。
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財産状況の変化:
- 大きな資産の取得や売却:不動産の購入や売却、株式や貯蓄の大幅な増減があった場合。
- 事業の変動:会社の売却や新たな事業の開始など、事業資産の変動があった場合。
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法律の変更:
- 相続税法や遺産分割に関する法律が変更された場合、遺言内容が法律に適合しているか確認する必要があります。
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健康状態の変化:
- 自身の健康状態が大きく変わった場合(病気の診断や予期せぬ健康問題など)、遺言を見直して将来に備えることが重要です。
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関係の変化:
- 相続人との関係が大きく変わった場合(和解、争いなど)、その関係を反映させるために遺言を見直すことが必要です。
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定期的な確認:
- 特定のイベントがなくても、数年ごとに遺言を見直し、現状に即しているかを確認することが推奨されます。
遺言の見直し手順
①現状の確認:
- 現在の遺言内容を確認し、現状と一致しているかをチェックします。
②変更点の特定:
- 見直しが必要な項目や変更点をリストアップします。
③場合によっては、専門家への相談:
- 遺言作成の専門家に相談し、法的に問題がないかを確認します。
➃新しい遺言の作成:
- 必要に応じて新しい遺言を作成し、自筆証書遺言や公正証書遺言などの形で正式に残します。
遺言は故人の意思を実現させる為の最も有効な手段です。遺言の作成や、遺言の見直しを検討されるいる方でお困りのことがあれば、気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
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