Archive for the ‘相続’ Category
遺言作成に関するご相談で多い事項
遺言作成に関するご相談
当事務所にも、遺言作成についてのご相談をよく受けますが、ここでは遺言作成を思い立ったキッカケで多い事項や遺言作成をお勧めするケースについて説明していきます。
・相続人がいないため財産を寄付したい
相続人が誰もいない場合(親族がいない、親族はいるが全員が相続放棄している)は、その財産は最終的には国庫に帰属されます。遺言をのこすことにより、特定の慈善団体や公共団体に寄付することができます。
・子どもがいない
子どもがいない夫婦においては、配偶者に全財産を相続させたい、あるいは住んでいる家は配偶者にそのまま継続して住んでほしいと考えることも多いでしょう。子どもがいない場合の法定相続人は亡くなられた方の親がまだ生きている場合はその親と配偶者、既に親も亡くなられている場合は亡くなられた方の兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。
特に兄弟姉妹と配偶者が相続人のケースでは、お互いが疎遠であったり意思疎通が上手くいかないことで、紛争になってしまうケースが多いのではないでしょうか。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、遺言(全財産を妻に相続させる)をのこしておくことによって配偶者にすべて相続させることができます。
・相続人以外のお世話になった人に財産を渡したい
遺言がない場合、特定のケースを除いて相続人以外の人には財産は渡りません。
子や兄弟姉妹などの相続人は生きているが、財産をそれ以外の人にのこしたいのであれば遺言をのこしておく必要があります。
・帰化したことを子どもに知られたくない
通常相続が発生した場合には、金融機関などの手続きで亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となってきます。
帰化した方については、帰化してからの戸籍謄本は取得できますが、帰化する前の戸籍については日本の役所で取得することはできません。
自身が生まれた国の大使館などで書類を集めなければならず、その過程で子どもに知られてしまうこともあるでしょう。
両親の氏名が日本名になっているかなどの諸条件はあるものの、遺言を残しておくことで、戸籍の取得も軽減されることとなり、結果相続人の労力も少なくなることでしょう。
・相続人のうちの誰かに、他の相続人より多く遺産をのこしたい
遺言がないと、原則各相続人の取り分は法定相続割合で決まってしまいます。
最期まで看病をしてくれた相続人、将来的にお金が必要になるであろう相続人がいる場合など、特定の相続人に多く財産をのこしたいのであれば、遺言を残しておくことでご自身の意思に沿った財産の分け方をすることができます。
・自身が会社経営をしている
相続人が複数おり、特定の相続人に事業を引き継いでもらいたいケースなどでは、遺言でその旨を指定することができます。
遺言がないと相続人が事業や株式が分割されてしまい、後々の紛争の種となる可能性もあります。
・先妻との間に子がいる、養子がいる
このようなケースでは、相続人同士で全く面識がないことも多く、話し合い自体にも進まなかったり、争いになるケースも多くでてきます。
遺言を残しておくことで、争いのリスクを下げることができます。
・相続人同士の仲が悪い、相続人が多数いる、相続財産が多い
相続人間の仲が悪い、相続人が多数いる場合には、話し合いをすること自体難しく、またそれをまとめることも非常に大変な作業となってきます。
遺言を残しておくことで、争いのリスクを下げることができます。
・内縁の夫婦がいる
内縁の夫・妻は、内縁の相手方の法定相続人ではありません。例えば、亡くなった内縁の夫に法定相続人がいる場合、遺言を残しておかないと内縁の妻は、内縁の夫の財産を貰うことができなくなります。
いずれのケースでも、遺留分に配慮した遺言を作成するなど注意が必要となることもあります。
遺言作成でお困りのことや、不安なことなどあれば当事務所にご相談ください。
抵当権の債務者の相続登記
抵当権の債務者が亡くなったら
抵当権の債務者が亡くなられたら、相続により各相続人に法定相続分に応じて引き継がれます。
よって、本来は遺産分割協議の対象とはなりませんが、遺産分割協議によって債務を相続人の誰が引き継ぐのか取り決めることも可能です。
今回は債務者が亡くなった後の債務者変更登記の手続きについてご案内します。
登記手続きの方法としては、遺産分割協議があるのかないのかで方法も異なってきますので、参考にしてください。
相続による債務者変更の登記手続き
1.法定相続人全員で変更登記をする場合
相続を原因として、債務者を共同相続人全員に変更登記をします。この場合は、相続人全員が債務者として登記されます。
2.遺産分割協議による場合
債権者(金融機関)の承諾を得た上で、遺産分割協議に相続人の内の一人が債務を承継する旨を取り決めることによって、債務者変更登記をする方法です。
この場合は、1の申請を踏まずにいきなり遺産分割協議で定めた債務者に変更登記もされ、登記申請は1件となります。
3.法定相続人全員で変更登記をした後に免責的債務引受をする場合
相続を原因として、債務者を共同相続人全員に変更登記をします。この場合は、相続人全員が債務者として登記します。
この過程は1と変わりませんが、この後に相続人の一人が債務を引き受ける場合には、免責的債務引受を行うことで債務者を一人にする登記手続きが可能です。
登記申請は2件となります。
いずれの方法をとるにしても、まずは金融機関との話し合いが事前に必要となってくるでしょう。
金融機関からどの方法で登記すべきか指示されることもあります。
抵当権の債務者が亡くなられた場合で、お困りのことがあれば、気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積書は無料で承っております。
帰化したことは戸籍で分かる?
帰化した後の戸籍の状態
帰化を検討されている方、既に帰化されている方など、帰化した後のご自身の戸籍の状態が気になることもあるでしょう。
中には子どもたちに元々外国籍だったことや帰化したことをお話されていないなど、ご事情によっては将来的に分かられたくないこともあると思います。
今回はこの点について、ご説明していきます。
帰化は戸籍から分かる
結論からいうと、帰化したことは戸籍に記載される為に、戸籍を遡っていけば帰化したことは分かってしまいます。
戸籍から帰化した旨を削除するような手続きもありません。
本籍地を変える(転籍)ことによって、帰化した旨が記載されている戸籍から新しく戸籍がつくられる為に、多少は分かりづらくなりますが、両親が帰化していなければ氏名の記載などから、いずれにしても分かってしまうこともあります。
両親が帰化して日本名になっていれば、更にご本人も転籍をすることで、遡って戸籍を追っていかない限り、帰化されたことは分かりづらくなるでしょう。
もし、上記のようなケース(両親が帰化しており、ご自身も転籍などしている)に当てはまるのであれば、帰化したことが相続人に分かりづらくする為に書類集めを簡略化した相続手続きをすることもできます。
帰化した後の相続手続き
日本に帰化された方が亡くなった場合には、通常の日本の相続手続きとなります。
よって、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となります。
この場合、帰化した後の戸籍関係は日本で取得できますが、出生から帰化する前までの戸籍については日本にありません。
帰化前に国籍をおいていた国から取り寄せていかなければなりません。
例えば、韓国では家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書などで法定相続人を特定します。
アメリカでは、出生証明書・結婚証明書・死亡証明書などが必要となってきて、それらの書類により相続人を特定し、相続人全員で「私たちは被相続人の相続人であり、私たち以外に相続人はいません」という旨の宣誓供述書を作成し、 当該国の在日領事館や公証人の認証を受けます。
これらの書類を相続人が集めるのは、大変苦労しますし、費用や時間もかかってきます。
そこで当事務所では帰化された方については、相続手続きで残された相続人が困らないように公正証書遺言の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット
①自筆証書遺言や秘密証書遺言では、被相続人が亡くなった後に遅滞なく、家庭裁判所への遺言書の検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言ではその手続きが不要です。
よって公正証書遺言は、検認手続きを経ることなくそのまま相続登記の添付書類として使用することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、正本または謄本を相続登記の申請書に添付することになります。
②相続登記の手続きについても、遺言執行者を定めておければ、その者と不動産を承継する方のみで申請することができ、他の相続人の関与は必要ありません。
③戸籍関係についても、出生から取り寄せる必要はなく、亡くなられ方については最後の戸籍(除籍)謄本のみで足ります。
以上のように公正証書遺言を残しておくことで、遺言書に偽造・紛失及び相続人同士の紛争が起きるリスクも減り、また相続手続きについても必要書類の簡素化や検認手続きが要らないなどの手間を省くこともでき、当事務所では、遺言を作成される際には公正証書遺言をお勧めしております。
遺産に関する話し合いがまとまったら、速やかに手続きを行いましょう
遺産に関する話し合い
亡くなられた方の相続財産の分け方について、口頭ではまとまっているものの、そのまま手続きを放置していることもあるかと思います。
相続人同士が仲良く、すぐに手続きを進めなくても、その内タイミングが来ればで良いと思っている方もおられるでしょう。
但し、口約束で話し合いがまとまったとしても、それだけでは何も話し合いの結果に対する証拠がありませんので遺産分割協議書を作成し、それに沿った相続手続きを行うことが大切です。
特に不動産の相続手続きは、放置しておくと以下のようなデメリットがでてきます。
相続手続きを放置するデメリット
①相続人に更に相続が発生するリスク
– 相続人に相続が発生すると、その相続人と再度話し合い(遺産分割協議)をやり直さなければならないリスクがあります。
②相続人と遺産分割協議自体ができなくなるリスク
– 相続人が認知症になったり、音信不通・行方不明になると遺産分割協議書に署名・捺印をもらえず手続きが進まないリスクがあります。
③相続人の一人が法定相続登記を入れてしまうリスク
– 相続登記については、相続人の内の一人が単独で法定相続分による相続人全員の相続登記をすることが可能です。これによって、後日登記をやり直すにしても余計な手間や費用などもかかってきます。
➃令和6年4月より相続登記が義務化される為に、過料が発生するリスク
– 令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。理由なく、相続登記を放置していると過料が科せられるリスクがあります。
いずれにしても、相続登記の義務化により今後は正当な理由なくして相続登記を放置していると過料が発生してしまいます。
既に話し合いでご自身が不動産を相続することが決まっているのであれば、なるべく早めに相続登記をしておくのが望ましいでしょう。
当事務所では、相続登記やその他預貯金の相続手続きにも必要な戸籍収集の代行や遺産分割協議書の作成、登記申請までサポートさせて頂きます。
相続手続きで思い立ったら、是非気軽にご相談ください。
相続人なき財産の行方は?自身の意思を実現する方法とは
相続人なき財産は国庫に帰属されます
相続が発生し、相続人の捜索の公告の期間満了まで相続人が現れないなど、一定の手続きを経た後に、相続財産は国庫に帰属されます(民法第959条)。
こちらについては、年々国庫に帰属する相続財産は増加しているというニュースがリリースされていますので、下記もご参考にしてください。
「遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。」
朝日新聞デジタルニュースより抜粋
https://www.asahi.com/articles/ASR1N4VWKR1HULFA00H.html(2023年1月23日)
相続人がいないケースとは
相続人がいないケースとは、子や孫、配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹等の法定相続人が被相続人の死亡時に誰も存在していないことを指します。
それに加えて、法定相続人はいるけれども、法定相続人全員が相続放棄をした場合も、相続人がいないことになります。
国庫に帰属させない方法とは
ご自身の意思で国庫に帰属させることは民法でも定められたものであり、悪いことではありませんが、もし誰か財産を渡したい方がおられるのであれば、そちらを実現させる方が望ましいでしょう。
国庫に帰属させずに、ご自身の意思を実現させる方法の一つとして「遺言」があります。
遺言で財産の残す方を指定することにより、相続財産は国庫に帰属することなく、その方(受遺者)に帰属させることができます。
当事務所でも時折相談を受けることがありますが、この意思表示は「遺言」として書面を残すことが重要であり、口約束ではできません。
また、遺言自体も要式が決まっており、それらを満たしてないと無効になる恐れもありますので、注意が必要です。
遺言の要式が整っていなかった、せっかく遺言を作成したのに誰にも発見されない、という事態がないよう遺言作成は専門家に相談することをお勧めします。
包括遺贈と相続放棄
相続放棄
相続放棄とは「被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄すること」です。
相続放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます。
相続放棄の対象となるのは被相続人(亡くなった方)のすべての財産であり、預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、負債(借金)などのマイナスの財産も含まれます。相続を放棄した場合、プラスの財産、マイナスの財産のいずれも相続人が承継することはありません。
包括遺贈
包括遺贈とは、遺言によって例えば「相続財産の2分の1をAに遺贈する」「相続財産の全部をBに遺贈する」というように相続財産の全部あるいは割合を指定してする遺贈のことを指します。
ここで注意が必要なのが、包括遺贈を受けた人は相続人と同一の権利義務を有するので、プラスの財産だけでなく、割合に応じてマイナスの財産も承継するという事です。
遺言により包括遺贈を受け取ったものの、借金があったので全体としてみればマイナスになるケースもあり得るという事です。
相続人への包括遺贈と相続放棄の関係
包括遺贈を受けた人は相続人と同一の権利義務を有するので、その放棄をしたい場合には、相続人と同様の手続きをする必要があります。
よって、自身に相続権があることを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する方法により、遺贈の放棄をしなければなりません。
では、包括受遺者が相続人だった場合には相続放棄の手続きはどうすればよいでしょうか。
包括遺贈を放棄しても相続人であることに変わりはありませんので、遺贈の放棄と合わせて相続人としての相続放棄も必要となります。
この2つの放棄の手続きを忘れていると、思わぬ負債を背負ってしまうこともありますので、ご注意ください。
遺言執行者の重要性について
遺言執行者の重要性
遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、遺言の内容にそった手続きをする人のことをいいます。財産目録の作成から始まり、預貯金の解約手続きや不動産の名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持ちます。
上記のように遺言執行者は大きな役割を担うこととなりますが、下記例外を除いては必ずしも必要ではありません。
例外:遺言執行者だけができるもの
① 認知
② 推定相続人の廃除・取消
「認知」「推定相続人の廃除・取消」が遺言に記載されている場合には、遺言執行者は必ず必要となってきます。
これらは身分関係について法律の効果を生じさせる重要な遺言事項である為、その内容が確実に実現されるように、遺言執行者の存在が必須とされているのです。
もし、遺言に執行者の定めがなかった場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことになります。
上記以外の場合
遺言執行者が定められていない遺言ももちろん有効であり、その場合には、相続人全員で協力して遺言の内容を実現していくことになります。
とはいえ、相続人が複数いる場合、作成する書類の収集や署名押印手続きなど全員の関与が必要となり何かと頻雑になりがちです。
遺言執行者の指定があれば執行者が相続人の代表者として一人で手続きを進められるので手間が省けますし、時間の短縮にもなります。
よって、相続人が相続手続きを円滑に行うことが難しい場合には、遺言執行者を指定しておいた方が良いでしょう。
その他にも、遺言執行者の重要性としては、不動産の登記を遺贈するケースです。
遺言執行者が指定されていれば、その人だけが登記義務者となって、受遺者と共同で登記を申請することが可能です。しかし、もし遺言執行者が指定されていなければ、相続人全員が登記義務者となり、全員の印鑑証明書や署名捺印が必要となるため、相続人の中に1人でも登記への協力を拒否する人がいれば、手続きは滞ってしまうことになります。
遺言執行者が選任されるパターン
遺言執行者(遺言執行人)はいつでも誰でも選任できるわけではなく、3つの決まった指定方法で選任しなければなりません。
- 遺言書で指定する
- 第三者に遺言執行者を指定してもらうような遺言書を作成する
- 遺言者死亡後に家庭裁判所にて遺言執行者を選任してもらう
この中で家庭裁判所に選任してもらうには、もともと遺言書で指定されていない場合や、指定されていても遺言執行者が辞任した場合などに限られます。このようなケースで必要な際には利害関係人の申立によって家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらうことができます。
申立人
- 利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)
申立先
- 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
費用
- 収入印紙800円
- 郵券(家庭裁判所によるがだいたい2000円程度)
申立に必要な書類
- 遺言執行者選任申立書
- 遺言執行者の死亡の記載のある除籍謄本
- 遺言書のコピー
- 利害関係を証明する資料
遺言執行者と司法書士
司法書士は家庭裁判所に提出する書類の作成ができるので、遺言執行者選任申立書類の作成をご依頼頂くことも可能です。
また、遺言書で遺言執行者が指定されていない場合、司法書士を遺言執行者の候補者として、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることもできます。
遺言執行者の選任手続き方法や候補者などでお困りのことがあれば、当事務所にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
日本に帰化した方が亡くなられたら相続手続きは?
帰化した後の相続手続き
日本に帰化された方が亡くなった場合には、通常の日本の相続手続きとなります。
よって、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要となります。
この場合、帰化した後の戸籍関係は日本で取得できますが、出生から帰化する前までの戸籍については日本にありません。
帰化前に国籍をおいていた国から取り寄せていかなければなりません。
例えば、韓国では家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書などで法定相続人を特定します。
アメリカでは、出生証明書・結婚証明書・死亡証明書などが必要となってきて、それらの書類により相続人を特定し、相続人全員で「私たちは被相続人の相続人であり、私たち以外に相続人はいません」という旨の宣誓供述書を作成し、 当該国の在日領事館や公証人の認証を受けます。
これらの書類を相続人が集めるのは、大変苦労しますし、費用や時間もかかってきます。
そこで当事務所では帰化された方については、相続手続きで残された相続人が困らないように公正証書遺言の作成をお勧めしております。
公正証書遺言のメリット
①自筆証書遺言や秘密証書遺言では、被相続人が亡くなった後に遅滞なく、家庭裁判所への遺言書の検認手続きが必要となりますが、公正証書遺言ではその手続きが不要です。
よって公正証書遺言は、検認手続きを経ることなくそのまま相続登記の添付書類として使用することができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、正本または謄本を相続登記の申請書に添付することになります。
②相続登記の手続きについても、遺言執行者を定めておければ、その者と不動産を承継する方のみで申請することができ、他の相続人の関与は必要ありません。
③戸籍関係についても、出生から取り寄せる必要はなく、亡くなられ方については最後の戸籍(除籍)謄本のみで足ります。
以上のように公正証書遺言を残しておくことで、遺言書に偽造・紛失及び相続人同士の紛争が起きるリスクも減り、また相続手続きについても必要書類の簡素化や検認手続きが要らないなどの手間を省くこともでき、当事務所では、遺言を作成される際には公正証書遺言をお勧めしております。
相続人なき遺産、過去最高
本日(2023年1月23日)朝日新聞デジタルに以下のような記事が出てました。
「遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかった。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。専門家は早めに遺言書をつくるよう勧めている。」
相続人がいないということは、法定相続人がいない状態や法定相続人全員が相続放棄をしたような状態をいいます。
このようなケースで更に遺言がない場合には、財産を相続する方が誰もいないことになりますので、財産は国庫に帰属されることとなります。
※国庫に帰属される手続きとは、利害関係者の申し立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産管理人」が選任され、未払いの税金や公共料金などを清算し、相続人が本当にいないかを確認します。一緒に暮らしたり身の回りの世話をしたりした「特別縁故者」がいれば家庭裁判所の判断などにもとづいて財産を分与し、残りは国庫に帰属するものです。
法定相続人がいないことがあらかじめ分かっている場合には、お世話になった方やどこかの団体に寄付するなど、
ご自身の財産の行き先について、遺言を作成しておくことをお勧めします。
子どもがいない時の遺言の必要性
子どものいない夫婦の相続人とは?
法定相続人とは民法で定められており、子のいない夫婦のうち夫が亡くなった場合、夫の相続人は次のとおりとなります。
- ①妻と夫の直系尊属(夫の両親など)
- ②妻と夫の兄弟姉妹(夫の直系尊属がいない場合)
子がいない夫婦が高齢になり、直系尊属(父母、祖父母等)が既に他界している場合は、夫の相続人は妻と(夫の)兄弟姉妹となります。
長年連れ添ってきたご夫婦で、配偶者が亡くなったときには、当然に財産全てをご自身が相続されると思われているケースもありますので、ご注意ください。
子どものいない夫婦に相続が発生すると
子がいない夫婦において、仮に夫が亡くなった場合、既に夫の両親が他界していて兄弟姉妹がいるときには、夫の財産は妻と(夫の)兄弟姉妹が相続します。
この場合、基本的には妻と(夫の)兄弟姉妹が遺産分割協議をし、誰がどれだけ相続するかを決定することになります。
妻として、夫と一緒に築いてきた財産の一部を(夫の)兄弟姉妹が相続することに納得いかない人もいるかもしれませんが、(夫の)兄弟姉妹にも相続権が認められています。
夫の兄弟姉妹といっても、長年疎遠であったり、連絡先も分からないこともあるでしょう。
そうした中で連絡を取り合って相続の話合いを進めていくことは大変です。
配偶者に相続させる遺言があると
夫が、残された妻に全て相続させる旨の遺言を残すことは勿論可能です。
この場合、夫の相続財産は全て妻が承継することになります。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、相続財産につき妻に全て相続させる旨の遺言があれば、妻が全て相続することができます。
ただし、今後の関係を踏まえて兄弟姉妹にもいくらか財産の残すような遺言を残しておくこともできますので、そのような時には内容もご検討ください。
この遺言については、夫が先に亡くなり妻が残されるケースで記載しておりますが、その逆の可能性(妻が亡くなり、夫と妻の兄弟姉妹が相続人)も勿論あり得ます。
こうした事態に備えて、ご夫婦共に同時に遺言を作成しておくことをお勧めします。
注意点としては、夫が全て妻に相続させる旨の遺言を残したときに、妻が夫より先に亡くなっている場合です。
この場合、その遺言の効力は生じず、夫の財産は(夫の)兄弟姉妹が相続することになります。
もし、夫が自分の兄弟姉妹に自分の財産を相続させたくないときは、全て妻に相続させるが、先に妻が亡くなっていた場合は●●に相続させるという遺言を残すこともできます。
誰がいつ亡くなるかは分かりませんので、このような形態の遺言を残すことも検討されるのも方法の一つです。
遺言作成でお困りのことがあれば、当事務所にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料で承っております。
« Older Entries Newer Entries »