不在者財産管理人の手続きを解説|選任申立から報酬・権限まで

相続人に行方不明者が…不在者財産管理人制度で手続きを進めませんか?

「相続人の一人とどうしても連絡がとれない…」
「遺産分割協議が進まず、預貯金の解約も不動産の名義変更も、すべてが止まってしまった…」

相続が発生したものの、行方不明の相続人がいるために、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方は少なくありません。大切なご家族が亡くなられた悲しみに加え、手続きが進まないことへの焦りや不安で、心身ともにお疲れのことと思います。

このような状況を打開するための法的な制度があります。それが「不在者財産管理人」制度です。

この制度を利用すれば、行方不明の方(不在者)の代わりに財産を管理し、必要な手続きを進める人(管理人)を家庭裁判所に選んでもらうことができます。管理人が不在者の代理人として遺産分割協議に参加することで、止まっていた相続手続きを再び動かすことが可能になるのです。

この記事では、不在者財産管理人制度の利用を検討されている方のために、

  • 選任を申し立てるための具体的な手続きと書類の書き方
  • 管理人にかかる報酬や費用の相場
  • 管理人に選ばれた場合の権限と責任

といった核心部分を、司法書士が分かりやすく解説します。複雑に思える手続きも、一つひとつ手順を追っていけば理解しやすくなります。この記事を読み終える頃には、ご自身の状況で次に何をすべきかが明確になっているはずです。相続手続きの全体像については、相続人が行方不明|尼崎での探し方と遺産分割手続きを解説で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。

相続手続きについて司法書士に相談し、安心した表情を浮かべる夫婦。

不在者財産管理人の選任申立て|手続きと書類の書き方

不在者財産管理人を選任してもらうには、家庭裁判所に「選任申立て」を行う必要があります。ここでは、申立てから管理人が選ばれるまでの具体的な流れと、申立てに欠かせない書類の準備・書き方のポイントを詳しく見ていきましょう。

手続きの流れ:申立てから選任までの4ステップ

申立てから選任までの手続きは、大きく分けて以下の4つのステップで進みます。全体の流れを掴んでおくと、今どの段階にいるのかが分かり、安心して手続きを進められます。

  1. 準備:必要書類の収集
    まずは、申立てに必要な書類を集めます。不在者の方の戸籍謄本や住民票の附票、財産に関する資料など、多岐にわたります。この段階でしっかりと準備できるかが、後の手続きをスムーズに進める鍵となります。
  2. 申立て:家庭裁判所へ書類を提出
    必要書類がすべて揃ったら、申立書を作成し、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に提出します。申立てができるのは、利害関係人(他の相続人や債権者など)や検察官です。
  3. 審理:裁判所による調査・面談
    申立てが受理されると、家庭裁判所の調査官が申立人や管理人候補者と面談(審問)を行い、申立ての内容や事情について詳しく聞き取りをします。本当に不在者財産管理人が必要なのか、候補者は適任かなどを慎重に審査します。
  4. 選任:審判と公告
    審理の結果、裁判所が管理人を選任する必要があると判断すれば、「審判」という形で決定が下されます。選任までに要する期間は、事案や裁判所の運用により異なります。

必要書類一覧と収集のポイント

申立てには、主に以下の書類が必要です。事案によって追加の書類を求められることもありますので、事前に管轄の家庭裁判所に確認することをおすすめします。

不在者財産管理人の選任申立てに必要な書類をまとめた一覧図。
書類名収集のポイント・注意点
申立書家庭裁判所のウェブサイトで書式を入手できます。書き方は次の項目で詳しく解説します。
不在者の戸籍謄本・戸籍附票不在者の本籍地、最後の住所地の市区町村役場で取得します。戸籍を辿ることで、本当に相続人がその方で間違いないかを確認します。
財産管理人候補者の住民票または戸籍附票候補者を立てる場合に必要です。候補者の住所地の市区町村役場で取得します。
不在の事実を証する資料ここが重要なポイントです。「単に連絡が取れない」だけでは不十分で、客観的な証拠が求められます。具体的には、宛先不明で返送された郵便物、警察への捜索願受理証明書、親族からの「何年も音信不通である」旨の上申書などが該当します。
不在者の財産に関する資料不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)、預貯金通帳のコピー、固定資産評価証明書など、不在者がどのような財産を持っているかを示す資料を、分かる範囲で準備します。
利害関係を証する資料申立人が相続人であれば、申立人の戸籍謄本など、不在者との関係性を示す資料が必要です。
収入印紙・郵便切手申立て手数料として800円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所により異なる)が必要です。
不在者財産管理人選任申立の必要書類

申立書の書き方:記載例で見る重要項目

申立書の中でも特に重要なのが「申立ての趣旨」と「申立ての理由」です。ここをいかに説得力をもって書けるかが、裁判所の判断に大きく影響します。

申立ての趣旨

ここでは、「何を裁判所にお願いしたいのか」を簡潔に記載します。

【記載例】

「申立人(または、○○)を不在者○○の財産管理人として選任することを求める。」

「不在者○○のために財産管理人の選任を求める。」

このように、結論を明確に記述します。

申立ての理由

ここは、申立てに至った経緯や、なぜ不在者財産管理人を選任する必要があるのかを具体的に説明する最も重要な部分です。

【記載のポイント】

  • 不在の状況:いつから、どのような経緯で連絡が取れなくなったのかを時系列で具体的に書きます。「最後の連絡は〇年〇月頃で、以降、電話もつながらず、手紙も宛先不明で返送される状況が続いている」など。
  • 管理の必要性:なぜ今、管理人を選任しなければならないのかを明確にします。例えば、「被相続人△△の遺産分割協議を行いたいが、不在者○○がいないため協議ができず、相続手続きが停滞している」「不在者所有の不動産が空き家となっており、倒壊の危険があるため管理が必要」といった具体的な事情を記載します。
  • 候補者について:管理人候補者を立てる場合は、その人がなぜ管理人にふさわしいのか(不在者との関係、職業、財産管理の能力など)を説明します。

裁判所は、この理由を読んで「確かに管理人を選任しないと、申立人や関係者が困る状況だな」と納得する必要があります。感情的に訴えるのではなく、客観的な事実を淡々と、しかし具体的に記述することが大切です。

申立書の書式や記載例は、裁判所のウェブサイトで確認できますので、参考にしながら作成を進めるとよいでしょう。
参照:不在者財産管理人選任の申立書 | 裁判所

不在者財産管理人の報酬と費用|相場と予納金について

不在者財産管理人を選任するにあたり、多くの方が心配されるのが費用面です。費用は大きく分けて「管理人への報酬」と「裁判所に納める予納金」の2つがあります。それぞれについて、誰が、いつ、いくらくらい負担するのかを見ていきましょう。

管理人への報酬は誰がいくら払うのか?

不在者財産管理人は、不在者の財産を管理するという重要な職務を担うため、その対価として報酬を受け取ることができます。

  • 支払元:原則として、不在者本人の財産から支払われます。申立人が直接支払うわけではありません。
  • 金額の相場:報酬額は法律で決まっているわけではなく、管理する財産の額や内容、業務の複雑さなどを考慮して、家庭裁判所が「報酬付与の審判」によって決定します。
  • 専門家か親族か:弁護士や司法書士などの専門家が管理人に選任された場合は、その専門性に応じた報酬が支払われます。一方、親族が管理人になった場合は、無報酬とされるケースや、比較的低額な報酬となることが多いです。

裁判所に納める予納金とは?

予納金とは、申立ての際に、申立人があらかじめ家庭裁判所に納めるお金のことです。これは、将来的に管理人の報酬や管理費用を支払うための原資を確保する目的があります。

  • 目的:管理人の報酬や、財産管理にかかる経費(固定資産税の支払いや建物の修繕費など)の支払いに充てられます。
  • 金額の目安:予納金の額は事案によって異なり、不在者の財産の内容から管理に必要な費用(報酬を含む。)に不足が出る可能性がある場合などに、家庭裁判所から相当額の予納金の納付を求められることがあります。
  • 負担者と返還:この予納金は、申立人が立て替えて納める必要があります。ただし、これはあくまで立て替えです。管理業務が終了した時点で予納金が残っていれば、その残額は申立人に返還されます。

申立人にとっては一時的に大きな負担となる可能性がありますので、事前にどのくらいの予納金が必要になりそうか、専門家に相談しておくと安心です。

不在者財産管理人の職務権限と責任|辞任と越権行為のリスク

もしご自身が不在者財産管理人の候補者となった場合、その職務内容や権限、そして伴う責任について正しく理解しておくことが極めて重要です。「どこまでやっていいのか?」「一度引き受けたら辞められないのか?」といった疑問や不安を解消していきましょう。

管理人の権限:保存行為と権限外行為許可

不在者財産管理人の権限は、民法で定められており、大きく2つに分けられます。

① 保存行為・管理行為(許可なくできること)

財産の価値を現状のまま維持するための行為です。具体的には、壊れた家屋の修繕、期限が到来した債務の弁済、腐りやすいものを売却して金銭に換えることなどが該当します。これらの行為は、管理人の判断で家庭裁判所の許可なく行うことができます。

② 処分行為(許可が必要なこと)

財産の性質を変えてしまうような行為です。これを行うには、事前に

「権限外行為許可」

を家庭裁判所に申し立て、許可を得る必要があります。

【権限外行為の具体例】

  • 遺産分割協議への参加
  • 不動産の売却
  • 預貯金の解約
  • 建物の取り壊し
  • 訴訟の提起

相続手続きを進めるためには、遺産分割協議が不可欠です。管理人が不在者の代理人としてこの協議に参加することは、まさにこの「処分行為」にあたるため、必ず家庭裁判所の許可が必要になります。例えば、

相続した不動産を売却

して金銭で分けるような場合も、権限外行為許可が必須です。

一度なったら辞められない?辞任できる正当な事由とは

「もし管理人になった後、事情が変わって続けられなくなったら…」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

結論から言うと、不在者財産管理人は、自己都合で自由に辞任することはできません。これは、不在者の財産を守るという重い責任を担っているためです。

ただし、病気や転勤、高齢といった、職務の遂行が困難となる「正当な事由」がある場合には、家庭裁判所に辞任の許可を申し立てることができます。裁判所がその理由を正当だと認めれば、辞任が許可され、後任の管理人が選任されることになります(これを「改任」といいます)。管理人になるということは、長期にわたって責任を負う可能性があることを十分に理解し、慎重に判断する必要があります。

越権行為のリスクと損害賠償責任

最も注意しなければならないのが「越権行為」です。

越権行為とは、家庭裁判所の権限外行為許可を得ずに、勝手に処分行為を行ってしまうことを指します。例えば、許可なく遺産分割協議書に署名・捺印したり、不在者名義の不動産を売却したりするケースがこれにあたります。

越権行為は、家庭裁判所の権限外行為許可を得ずに処分行為を行ってしまうことを指します。権限外行為許可が必要な行為を無許可で行うと、手続が進められないなど重大な支障が生じ得ます。さらに、その無効な行為によって他の相続人や第三者に損害を与えてしまった場合、管理人が損害賠償責任を負う可能性があります。

不在者財産管理人は、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務(善管注意義務)を負っています。「知らなかった」では済まされない厳しい責任が伴うため、自身の権限の範囲を正確に理解し、少しでも判断に迷うことがあれば、必ず家庭裁判所に確認するか、専門家に相談することが不可欠です。

関連する法律については、下記をご参照ください。
参照:民法 | e-Gov法令検索

不在者財産管理人の権限について、「許可なくできること」と「許可が必要なこと」を比較した図解。

不在者財産管理人に関するよくあるご質問

最後に、申立てを検討されている方や、管理人候補者の方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 候補者は誰でもなれますか?自分でなることも可能ですか?

A. 不在者財産管理人になるための特別な資格は必要ありません。そのため、申立人自身や他の親族が候補者となることも理論上は可能です。

ただし、遺産分割協議のように、管理人と他の相続人との間で利害が対立する(利益相反)可能性がある場面では、親族が管理人になるのは難しいことが多いです。なぜなら、管理人はあくまで不在者の利益のために行動しなければならず、他の相続人の立場で協議に参加することはできないからです。このようなケースでは、公平中立な第三者として、弁護士や司法書士などの専門家が家庭裁判所によって選任されるのが一般的です。これは、親が未成年の子の代理人として遺産分割協議に参加できない場合に特別代理人が選ばれるのと似た考え方です。

Q. 管理人の仕事はいつまで続きますか?

A. 管理人の任務は、以下のいずれかの事由が発生するまで続きます。

  1. 不在者本人が現れ、自分で財産管理を始めたとき
  2. 不在者の死亡が確認され、相続が開始したとき
  3. 不在者について失踪宣告がされ、死亡したとみなされたとき
  4. 管理すべき財産がなくなったとき

よくある誤解として、「遺産分割協議が終われば任務も終了する」と思われがちですが、そうではありません。遺産分割協議が終わっても、上記のいずれかの事由が発生しない限り、管理人の任務は継続します。場合によっては、不在者の財産を清算する相続財産清算人への引き継ぎが必要になることもあります。

Q. 失踪宣告とはどう違いますか?どちらを選ぶべきですか?

A. 不在者財産管理人制度と失踪宣告は、どちらも行方不明者がいる場合に利用する制度ですが、根本的な前提が異なります。

  • 不在者財産管理人:不在者が「生きている」ことを前提に、その財産を管理・保存する制度です。
  • 失踪宣告:不在者が「死亡した」と法的にみなす制度です。これにより、不在者を被相続人とする相続が開始します。

どちらの制度を選ぶべきかは、状況によって異なります。不在者が生きている可能性が高い場合や、死亡したとみなすことに抵抗がある場合は、まず不在者財産管理人制度を利用するのがよいでしょう。一方、行方不明になってから7年以上が経過し、生死が全く不明な場合は、失踪宣告を検討することになります。どちらが適切か、ご自身の状況に合わせて慎重に判断する必要があります。

手続きが複雑で不安な方は、司法書士にご相談ください

ここまでご覧いただいたように、不在者財産管理人の選任申立ては、多くの書類準備が必要な上、裁判所とのやり取りも発生する専門的で複雑な手続きです。また、管理人になった場合の権限や責任も非常に重く、法的な知識なしに対応するのは大きなリスクを伴います。

もし、ご自身での手続きに少しでも不安を感じたり、何から手をつけて良いか分からなかったりする場合は、私たち司法書士にご相談ください。

司法書士は、相続手続きの専門家として、複雑な書類の作成から収集、家庭裁判所への申立てまで、トータルでサポートすることができます。私たちが間に入ることで、あなたの手続きに関する負担を軽減し、法的なリスクに配慮しながら、相続手続きを進めるお手伝いができます。

当事務所では、相続手続きをまるごとサポートするプランもご用意しております。一人で悩まず、まずは一度、お気軽にお話をお聞かせください。

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