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売買代金の分割払いはリスク?まず知るべき基本
「不動産を売りたいけれど、買主から分割払いを提案されて不安…」「どうしても欲しい土地があるけれど、一括では支払えない…」
個人間での高額な売買、特に親族間での不動産取引などでは、売買代金の「分割払い」が選択肢に挙がることがあります。しかし、住宅ローンのような金融機関を介さない取引だからこそ、代金未払いをはじめとする様々なトラブルへの不安がつきまとうのも事実です。
この記事を読んでくださっているあなたも、きっと同じような不安や疑問を抱えているのではないでしょうか。
ご安心ください。分割払いは、正しい知識を持ってきちんと契約書を作成すれば、売主・買主双方にとってメリットのある、安全な取引にすることができます。この記事では、分割払い契約の基本から、トラブルを未然に防ぐ契約書の作り方、そして万が一未払いが発生してしまった場合の具体的な対処法まで、解説します。
そもそも分割払い(割賦販売)とは?
分割払い(法律上は「割賦販売」と呼ばれます)とは、その名の通り、売買代金を一括ではなく、複数回に分けて支払うことを約束する売買契約の一種です。一度にまとまった資金を用意するのが難しい場合でも高額な商品を購入できるため、様々な場面で利用されています。
住宅ローンも分割で支払う点は同じですが、個人間の分割払いとは大きく異なります。住宅ローンは「買主」と「金融機関」との間の金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)に基づいており、金融機関が売主へ代金を一括で支払い、買主は金融機関へ返済していきます。これに対し、個人間の分割払いは、「売主」と「買主」が直接、代金の支払い方法について取り決める契約です。
そのため、親族間で不動産を譲りたい場合や、事情があって住宅ローンを組めない買主との取引などで、この方法が検討されることがあります。
売主・買主それぞれのメリットとデメリット
分割払いを選択する前に、ご自身の立場からメリットとデメリットを客観的に把握しておくことが大切です。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 売主 | ・買い手の幅が広がり、売却の機会が増える・利息を設定すれば、一括払いより総受取額が増える可能性がある | ・代金が支払われない(未払い)リスクがある・代金の全額回収までに時間がかかる |
| 買主 | ・まとまった資金がなくても購入できる・住宅ローン審査が不要(当事者間の合意のみ) | ・代金を完済するまで所有権を得られない可能性がある・支払い総額が割高になることがある |
売主にとって最大の懸念は、やはり「代金未払いリスク」です。一方で買主は、毎月きちんと支払っているのに、いつまでも所有権が自分のものにならないという不安を抱える可能性があります。こうした双方のリスクを解消するために、法的に有効な「売買契約書」の作成が不可欠となるのです。
トラブル回避の鍵!分割払い契約書に必須の7つの記載事項
口約束だけで分割払いを始めるのは、将来のトラブルを招くもとです。ここでは、あなた自身を守るために、契約書に必ず盛り込むべき7つの重要項目を、司法書士が具体的に解説します。なぜその条項が必要なのか、理由とあわせて理解していきましょう。
1. 売買の対象物と代金総額
【記載内容】
契約の基本として、「何を」「いくらで」売買するのかを明確に特定します。不動産であれば、土地の所在・地番・地目・地積、建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを登記簿謄本(登記事項証明書)の記載通りに正確に記載します。代金総額も、分割手数料や利息を含めた最終的な支払総額を確定して記載することが重要です。
【なぜ必要?】
対象物の特定が曖昧だと、後から「売買したのはこの土地ではなかった」といった争いになりかねません。金額の記載ミスも、当然ながら大きなトラブルの原因となります。
2. 支払回数・各回の支払額と支払期限
【記載内容】
「買主は売主に対し、売買代金〇〇円を、令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、毎月末日限り、金〇〇円を〇〇回に分割して支払う」のように、誰が見ても誤解のしようがないほど具体的に定めます。支払方法(銀行振込など)や振込手数料の負担者についても明記しておくと、より丁寧です。
【なぜ必要?】
「毎月だいたい10万円くらい」といった曖昧な約束では、支払いが遅れた際に「今月は少し待ってほしい」などと言い逃れされる余地を与えてしまいます。支払いが遅れているかどうかを客観的に判断できる基準を設けることが大切です。
3. 遅延損害金に関する定め
【記載内容】
「買主が本契約に定める金銭の支払いを怠ったときは、支払期日の翌日から支払済みに至るまで、年〇%の割合による遅延損害金を付加して支払うものとする」といった条項を加えます。
【なぜ必要?】
これは、支払いが遅れた場合のペナルティです。遅延損害金の定めがあることで、買主に「遅れずに支払わなければ」という心理的なプレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できます。利率は当事者間で自由に定められますが、利息制限法の範囲内(年15%~20%)で設定するのが一般的です。
4. 期限の利益の喪失(一括請求の条件)
【記載内容】
「買主が分割金の支払いを2回以上怠り、その額が〇〇円に達したときは、売主からの通知催告がなくても当然に期限の利益を喪失し、残代金全額を直ちに支払わなければならない」という条項です。
【なぜ必要?】
これは、売主にとって最も重要な条項の一つです。「期限の利益」とは、分割で支払うことができるという買主の権利のこと。この権利を失わせる(喪失させる)条件を定めておくことで、約束違反があった場合に、残りの代金全額を一括で請求できるようになります。もしこの条項がないと、支払いが滞っても、その滞納分しか請求できず、非常に弱い立場に立たされてしまいます。
5. 所有権移転の時期
【記載内容】
売買の対象物の所有権が、いつ売主から買主に移るのかを定めます。主な選択肢は以下の通りです。
- 代金完済時:売主にとって最も安全な方法。未払いのリスクがありません。
- 契約時(引渡時):買主にとっては安心ですが、売主は代金未払いのまま所有権を失うリスクを負います。
- 頭金など一部支払時:双方のリスクを折半する方法です。
【当事務所からのアドバイス】
不動産の場合、所有権の移転は法務局で「所有権移転登記」を行うことで第三者に対抗できるようになります。売主としては、「所有権は代金全額の支払いが完了したときに買主に移転する」と契約書に明記し、登記手続きも完済後に行うのが最も安全な方法と言えるでしょう。
6. 所有権移転仮登記の設定(買主のリスクヘッジ)
買主にとっては、売買代金を全額支払うまでは自身の名義とならない為に、もし途中で売主が
第三者に売却してしまったら、というリスクが伴います。
これを保全するには、「所有権移転仮登記」という方法もあります。
【所有権移転仮登記とは】
不動産の所有権移転登記に必要な書類が揃わない場合や、将来的に所有権を移転する予定がある場合に、登記の順位を確保するために行う仮の登記です。これにより、将来本登記が可能となった際に、仮登記をした時点に遡って登記の効力を発生させることができます。
7. 親族間売買と「みなし贈与」のリスク
【記載内容】
親族間売買の場合、特に金利(利息)の設定が重要になります。契約書に、客観的に見て妥当な利率(例えば、親が銀行に預けて得られる利率など)を定めておくことが望ましいです。
【なぜ必要?】
親子や兄弟など、親しい間柄での取引で「利息はなしでいいよ」としてしまうと、税務署から「利息分を贈与したのと同じ」とみなされ、思わぬ贈与税(みなし贈与)が課される可能性があります。また、相場より著しく低い価格での売買も同様です。きちんと利息を設定し、契約書通りに返済している事実を示すことが、将来の税務リスクを回避するために重要です。
参考:No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
もし未払いに…その時あなたが取るべき3つのステップ
契約書を完璧に作成しても、残念ながら支払いが滞ってしまうケースは起こり得ます。そんな時、感情的になって関係をこじらせる前に、法的な手順に沿って冷静に対応することが解決への近道です。ここでは、あなたが取るべき具体的な3つのステップをご紹介します。

ステップ1:まずは内容証明郵便で支払いを催告する
電話やメールでの催促に応じてもらえない場合、最初の法的なアクションとして「内容証明郵便」を送付します。これは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれるサービスです。
法的な通知であるため、受け取った相手に強い心理的プレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できます。また、支払いを催告したという事実が証拠として残るため、将来、裁判などの法的手続きに進む際にも非常に重要な意味を持ちます。
ステップ2:裁判所の「支払督促」を利用する
内容証明郵便を送っても支払いがない場合、次に検討するのが裁判所の「支払督促」という手続きです。これは、書類審査のみで裁判所から相手方に支払いを命じてもらう、迅速かつ比較的簡単な手続きです。
相手方が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、売主は「仮執行宣言」を得ることができます。これにより、相手の財産を差し押さえる「強制執行」の申し立てが可能になります。通常の訴訟に比べて時間と費用を抑えられる点が大きなメリットです。
参考:支払督促
ステップ3:訴訟と強制執行で債権を回収する
支払督促に相手が異議を申し立てた場合や、事案が複雑な場合は、最終手段として「訴訟」を提起することになります。裁判で勝訴判決を得ることで、強制的に相手の給与や預金、不動産などの財産を差し押さえる「強制執行」が可能となり、債権の回収を図ります。
【司法書士からのアドバイス】
ここで絶大な効果を発揮するのが、契約書を「公正証書」で作成しておくことです。公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公的な文書です。公正証書に強制執行認諾文言を作成しておくと、執行手続きが容易になる場合があります。事案により要件や手続きが異なりますので、個別にご相談ください。
不安な契約は専門家へ。司法書士に相談するメリット
ここまでお読みいただき、分割払い契約には様々な注意点があり、ご自身だけで進めるのは不安だと感じられたかもしれません。特に高額な不動産取引など、失敗が許されない契約においては、専門家のサポートが不可欠です。
当事者だけで話を進めようとすると、知識不足から法的に不備のある契約書を作成してしまったり、いざトラブルになった際に関係性が悪化してしまったりするリスクがあります。そんな時、法律の専門家である司法書士が間に入ることで、安心して、そして円滑に手続きを進めることができます。
契約書作成から登記、トラブル対応までワンストップ
私たち司法書士法人れみらい事務所では、売買代金の分割払いに関するお悩みをトータルでサポートしています。ご相談は、下記の事務所情報をご確認の上、お気軽にお問い合わせください。
- 契約書・公正証書の作成支援:お二人のご希望を丁寧に伺い、将来のトラブルを未然に防ぐ、法的に万全な契約書案を作成します。公正証書にする際の手続きもサポートいたします。
- 各種登記手続きの代理申請:不動産売買に伴う所有権移転登記や所有権移転仮登記など、複雑な登記手続きをすべて代理で行います。
- 未払いトラブル発生時の法的手続き支援:万が一支払いが滞ってしまった場合も、内容証明郵便の作成や、支払督促、訴訟に必要な書類作成の支援など、債権回収に向けた法的手続きをサポートします。(※代理人として交渉や訴訟活動ができる範囲には制限があります)
このように、契約前の準備段階から、万が一のトラブル対応まで、一貫してあなたに寄り添い、サポートできるのが私たちの強みです。
初回相談は無料です。まずはお気軽にご状況をお聞かせください
「これから分割払いの契約をするので、契約書を見てほしい」
「親族間で不動産を分割払いで売りたいが、何から始めればいいか分からない」
「すでに支払いが滞っていて、どうしたらいいか困っている」
どのような状況でも構いません。一人で悩まず、まずはお気軽に私たちにご相談ください。司法書士法人れみらい事務所では、初回のご相談は無料(60分程度)でお受けしています。あなたの不安な気持ちに寄り添い、法律の専門家として、そしてあなたの味方として、最善の解決策を一緒に考えさせていただきます。
どうぞ安心して、下記よりお問い合わせください。
【事務所情報】
事務所名:司法書士法人れみらい事務所
代表司法書士:上西 祥平、大貫 智江
所在地:兵庫県尼崎市南塚口町2丁目19番2号 若松ビル201
所属:兵庫県司法書士会
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当事務所は兵庫県尼崎市を拠点に、相続や遺言に関する手続きをサポートしています。相続手続きでは、戸籍収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、複雑な手続きを一括してお任せいただけます。また、遺言書の作成支援も行っており、将来の相続に備えた適切なアドバイスを提供しています。
初回のご相談や費用のお見積もりは無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。

