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根抵当権の債務者を変更したいときは?
金融機関から借入を継続的に行いたいときは、所有不動産に根抵当権を設定して借入を行うときもあるかと思います。一旦根抵当権を設定すると借入金を返済してしまうか、他の担保を提供することなどがない限り、中々金融機関は担保の解除には応じてくれないでしょう。ただし、途中で自身の息子に事業を承継したので、債務者を変えたいような要望も起こることもあるでしょう。そのようなときに、一旦設定した根抵当権の債務者を変更することはできないのでしょうか。結論からいきますと、下記のような条件を満たすことで債務者の変更登記を行うことができます。
債務者変更の要件
- 確定前の根抵当権であること
- 根抵当権者「全員」と設定者(不動産の所有者)の間での契約をすること
- 共同根抵当権(複数の不動産に担保設定をしていること)の場合は、すべての不動産について債務者の変更の登記がなされること
それでは、説明を続けていく前に、確定前の根抵当権とはどういうものを指すのでしょうか。
根抵当権は抵当権と異なり、設定段階では根抵当権が担保する元本債権が特定されていません。しかしながら、下記のような理由で根抵当権の元本が確定することで、その後に発生する元本債権が、その根抵当権で担保されなくなります。つまり、元本が確定した時に存在する元本債権および利息、損害金とその後にその元本債権から発生する利息、損害金が極度額を限度として担保されることになり、抵当権と同じような状態になります。
根抵当権の主な元本確定事由
①確定期日の到来【これは、設定(設定後でも可能)のときに確定期日を定めておくことで期日の到来により当然に元本が確定します】
②債務者か根抵当権者が死亡した後に、相続開始後6ヶ月以内に合意の登記をしなかった場合
③根抵当権設定者が確定請求をした場合(これは、設定後3年を経過すると行うことができます)
④根抵当権者が確定請求をした場合(こちらは、3年経たなくても、いつでも請求ができます)
⑤根抵当権者が競売などの申し立てをした場合
⑥債務者または設定者が破産手続開始決定を受けた場合
その他にも確定事由はありますが、以上のような事由により、元本が確定した場合は原則的に元本確定登記をすることになります。
根抵当権者と設定者の変更契約により債務者変更を行うときは、旧債務者および新債務者の承諾は不要ですが、一般的には新債務者も契約書に捺印をもらうことで承諾をとっておくことが多いでしょう。
根抵当権の債務者変更の効果
債務者変更がされると、当社から変更後の債務者により根抵当権が設定されたいたのと同様の効果が生じます。つまり、変更後の債務者に対する債権は、既に発生しているものも含めて、将来の元本確定時において被担保債権となりうる可能性が発生、変更前の債務者に対する債権は、既に発生しているものも含めて、将来の元本確定時において被担保債権となりうる可能性がなくなります。よって、変更の結果、元本確定時点において担保される可能性がなくなった既に発生している債権を根抵当権で担保するには、当該債権を特定債権として根抵当権の債権の範囲に加える変更契約および登記申請が必要です。
具体的には、変更後の債権の範囲として「〇年〇月〇日債務引受(旧債務者甲)にかかる債権」のように登記されます。
尚、元々会社が設定(所有)している不動産の根抵当権の債務者を会社から取締役などに変更するときは、利益相反行為となるために、「取締役会議事録」が必要となりますので、ご注意ください。逆を言うと取締役個人で設定している不動産の根抵当権の債務者を取締役から会社に変更するときは、「取締役会議事録」は不要です。