遺言執行者がいないとどうなる?トラブル事例と専門家選びのコツ

遺言執行者がいない…相続で起こりうる3つの典型トラブル事例

「遺言書さえあれば、自分の想いは確実に実現されるはず」――そう信じている方は少なくないかもしれません。しかし、その遺言書に「遺言執行者」の指定がないだけで、残されたご家族が思いもよらないトラブルの渦に巻き込まれてしまうケースが後を絶ちません。

ここでは、遺言執行者がいなかったために実際に起こりうる、3つの典型的なトラブル事例をご紹介します。これは、決して他人事ではありません。ご自身の家族に起こるかもしれない未来として、少しだけ想像してみてください。

【事例1】銀行口座が凍結!相続人全員の協力が得られず手続きが停滞

「父の遺言書には、確かに預金はすべて母に相続させると書いてある。それなのに、なぜお金が引き出せないんだ…」

故人の葬儀費用や、残された配偶者の当面の生活費を支払うため、銀行窓口を訪れた長男は頭を抱えました。遺言書があっても、遺言執行者が指定されていない場合、金融機関の手続は遺言の内容や各金融機関の取扱いによって異なり、受遺者(承継する方)だけで足りることもあれば、法定相続人全員の署名・捺印(実印)と印鑑証明書の提出を求められることもあります。

相続人の一人は遠方に住んでいて連絡がつきにくく、もう一人は遺言の内容に納得がいかないのか、協力に後ろ向きな様子。時間が過ぎるばかりで、必要な支払いは滞り、家族の焦りと不安は募る一方です。故人が遺してくれた大切なお金が、目の前にあるのに使えない。これは、銀行預金の相続手続きで最も頻繁に起こる、深刻な問題なのです。

【事例2】不動産の名義変更が進まない…相続人間の意見対立で売却もできず

「この家を長男に相続させる」という遺言に従い、不動産の名義変更(相続登記)をしようとしたところ、法務局での手続きが止まってしまいました。遺言の内容が「遺贈」であったため、登記手続きには他の相続人全員の協力が必要だったのです。

しかし、遺産分割に不満を持つ他の兄弟が「実印は押さない」と協力を拒否。結果として、遺言書に基づく相続登記は暗礁に乗り上げました。相続税の納税資金のために売却を考えていた計画も頓挫し、誰も住まない実家は空き家のまま、固定資産税だけが重くのしかかります。遺言執行者がいれば、このような事態は避けられたかもしれません。

【事例3】遺産の使い込み?財産調査が進まず相続人間の不信感が爆発

「父さんと同居していた兄さんが、生前に財産を勝手に使っていたんじゃないか?」

遺言執行者がいないと、誰が中心となって故人の財産を正確に調査し、管理するのかが曖昧になります。特に、相続人の一人が生前に故人の財産を管理していた場合、他の相続人から疑念の目が向けられることは少なくありません。

「通帳を見せてほしい」「いや、プライバシーだ」――誰が相続財産の調査を行うのか、その費用は誰が負担するのか。ささいな意見の食い違いから始まった対立は、やがて修復不可能なほどの不信感へと発展。法的な手続きが滞るだけでなく、これまで仲の良かった兄弟の関係に、深い亀裂が入ってしまいました。中立的な立場で財産を管理する遺言執行者の不在が、家族の絆を壊す引き金になることもあるのです。

なぜ遺言執行者が必要なのか?

先ほどのようなトラブルは、なぜ起きてしまうのでしょうか。その根本的な原因を理解することで、遺言執行者の真の重要性が見えてきます。ここでは、司法書士の視点から、その法的な背景を分かりやすく解説します。

このテーマの全体像については、遺言執行者をつけるべきか悩んでいる方へで体系的に解説しています。

相続手続きの原則は「相続人全員の協力」

日本の法律では、相続人が複数いる場合、少なくとも遺産分割の対象となる相続財産は、分割が成立するまで相続人全員の共有(遺産共有)として扱われます。これが、相続手続きにおける大原則です。

この原則があるからこそ、銀行は相続人の一人だけの依頼で預金を払い戻すことを拒み、法務局も不動産の名義変更に全員の協力を求めるのです。一人の相続人が勝手に財産を処分して他の相続人の権利を害することを防ぐための仕組みですが、裏を返せば、一人でも非協力的な相続人がいると、すべての手続きがストップしてしまう原因にもなっています。

遺言執行者は「全員の協力」を不要にする強力な権限を持つ

この「相続人全員の協力」という原則の、強力な例外となるのが「遺言執行者」の存在です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産を管理し、名義変更などの手続きを行うための法的な権限を単独で有します。

つまり、遺言執行者が就任している場合、遺言の類型や対象財産によっては、他の相続人の協力が得られない場面でも、遺言執行者が権限に基づいて手続きを主導し、預貯金の手続や不動産の名義変更(登記)を進められることがあります。この「単独で実行できる権限」こそが、相続人間の意見対立や感情的なもつれといった障害を乗り越え、故人の最後の意思をスムーズに実現するための最大の武器となります。

参照:遺言執行者の権限の明確化等

遺言執行者がいる場合といない場合の手続きの違いを図解したインフォグラフィック。執行者がいないと相続人全員の協力が必要で複雑だが、いると単独でスムーズに進められることを示している。

不動産登記では特に重要!「遺贈」と「相続させる」遺言の違い

不動産の相続において、遺言執行者の重要性はさらに増します。特に注意が必要なのは、遺言書の書き方による手続きの違いです。

遺言書に「長男Aに遺贈する」と書かれている場合、遺言執行者がいないと、Aさん(受遺者)と他の相続人全員が共同で登記申請をしなければなりません。これは、他の相続人が「登記義務者」となるためで、協力を拒否されれば手続きは進みません。

一方、「長男Aに相続させる」と書かれている場合(これを「特定財産承継遺言」といいます)、遺言執行者がいれば、その執行者が単独でAさんへの名義変更登記を申請できます(民法改正により2019年7月1日から可能になりました)。「遺贈」という言葉一つで手続きの難易度が大きく変わるため、遺言書作成の段階から専門家のアドバイスを受けることが非常に重要です。

参照:法務省 民二第68号 令和元年6月27日

遺言執行者は誰に頼むべき?司法書士と弁護士の選び方

遺言執行者の重要性をご理解いただけたところで、次に考えるべきは「誰に頼むか」です。相続人の中から選ぶことも可能ですが、中立性や専門知識の観点から、専門家に依頼するケースが増えています。代表的な専門家である司法書士と弁護士、それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合った選択をすることが大切です。

司法書士への依頼が適しているケースとメリット

【こんな方におすすめ】

  • 相続財産に不動産が含まれている
  • 相続人間の関係は良好で、争いになる可能性は低い
  • 手続きをスムーズかつ正確に進めたい
  • 専門家への費用はできるだけ抑えたい

司法書士は、不動産登記の専門家です。相続財産に不動産が含まれる場合、遺言執行から相続登記までをワンストップで依頼できるため、手続きが非常にスムーズに進みます。また、預貯金の名義変更など、遺産整理業務全般に対応可能です。

相続人間で争いがない、あるいは争いになる見込みが低い「非紛争案件」であれば、弁護士に依頼するよりも費用を抑えられる傾向にあるのも大きなメリットです。当事務所の司法書士は、金融機関や不動産会社、さらには弁護士・税理士事務所での勤務経験もあり、手続き全般を熟知しておりますので、安心してご相談ください。

弁護士への依頼が適しているケースとメリット

【こんな方におすすめ】

  • すでに相続人間で揉めている、または将来揉める可能性が高い
  • 遺言の有効性について争いがある
  • 遺留分をめぐる請求が予想される
  • 特定の相続人との交渉が必要

弁護士の最大の強みは、「紛争解決の代理人」になれることです。相続人間の対立が激しく、交渉や調停、さらには訴訟に発展する可能性が高い場合には、弁護士への依頼が不可欠です。遺言の無効を主張されたり、遺留分侵害額請求を起こされたりといった法的な紛争に、代理人として対応できるのは弁護士だけです。

費用はどれくらい?報酬体系の比較と目安

専門家への報酬は、多くの場合、相続財産の総額に応じたパーセンテージで設定されます。例えば、「遺産総額の〇%」といった形です。最低報酬額が設定されていることも一般的です。

一概には言えませんが、前述の通り、紛争性のない事案であれば司法書士のほうが費用を抑えやすい傾向があります。しかし、これはあくまで目安です。事案の複雑さ、手続きの煩雑さによって費用は大きく変動します。

大切なのは、安さだけで選ばないことです。費用体系について明確な説明があり、あなたの話に親身に耳を傾けてくれる、信頼できる専門家を見つけることが最も重要です。当事務所では、料金表を公開しておりますので、ご参考にしてください。ご依頼いただく前には、必ず詳細なお見積もりを提示いたしますので、ご安心ください。

遺言執行者がいない場合の対処法と相談先

「すでに相続が始まっているのに、遺言書に執行者がいなくて困っている…」そんな方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。打つ手がなくなったわけではありません。今からできる具体的な対処法をご紹介します。

まずは家庭裁判所へ「遺言執行者選任」の申立てを

遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人がすでに亡くなっている場合、相続人などの利害関係人は、家庭裁判所に「遺言執行者選任の申立て」を行うことができます。申立て先は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

この申立てが認められると、家庭裁判所が事案に最も適した専門家(弁護士や司法書士など)を遺言執行者として選任してくれます。中立的な立場の専門家が就任することで、停滞していた預金の解約や不動産の名義変更といった手続きが、法的な権限に基づいて一気に進展する可能性が高まります。

より具体的な手順については、遺言執行者の選任申立手続き、必要なケースとは?をご覧ください。

参照:遺言執行者の選任

専門家への相談で手続きをスムーズに

家庭裁判所への申立てと聞くと、手続きが難しそうだと感じるかもしれません。実際、申立書の作成や戸籍謄本などの必要書類の収集は、一般の方には大きな負担となることがあります。

そのような場合は、ぜひ私たち司法書士にご相談ください。申立て手続きのサポートはもちろん、「そもそも何から手をつけていいかわからない」という段階から、お話を伺い、次に何をすべきかを明確にするお手伝いができます。

一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが、結果的によりスムーズな解決につながることがあります。当事務所では初回のご相談は無料でお受けしております。問題をこれ以上複雑にしないためにも、まずはお気軽にご連絡ください。

遺言執行者の相談

まとめ|円満な相続の実現には遺言執行者が不可欠です

遺言書は、ご自身の想いを未来へ託す大切なメッセージです。しかし、その想いをできる限り円滑に実現するためには、「誰が実行するのか」という視点が欠かせません。遺言執行者の指定がないだけで、残された家族が手続きの壁にぶつかり、時には不信感を募らせてしまう悲しい現実があります。

これから遺言書を作成される方は、円満な相続の「最後の仕上げ」として、信頼できる遺言執行者を指定することを強くお勧めします。そして、すでに相続が始まり、執行者がいないことでお困りの方は、決して一人で悩まないでください。

家庭裁判所への申立てという道がありますし、私たち司法書士のような専門家が、あなたのすぐそばでサポートする準備ができています。司法書士法人れみらい事務所は、あなたの不安に寄り添い、具体的な解決策をご提案するパートナーです。どうぞ安心して、その一歩を踏み出してください。

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