信託財産について
信託法上は、信託財産とすることができる財産の範囲については特に制限はありません。よって、銀行預金、不動産、株式等を信託財産にすることは可能です。
ただし、銀行預金については特に注意が必要です。
金融機関に預けているお金は、法律上「預貯金債権」とされており、金融機関との預金契約によって譲渡禁止とされています。金融機関の承諾がなければ、預金名義人以外の財産として取り扱うことはできないのです。
つまり、信託契約書に預金口座・預金債権を信託財産とする旨を記載しても、その契約書を金融機関の窓口に持ち込んで、口座の名義人を受託者に変える名義変更や受託者名義の信託専用口座への送金手続きは不可能なのです。
よって信託契約書の信託財産目録に記載すべき金銭としての資産は、「現金〇〇円」と記載するのが望ましいでしょう。
実務としては、預金を信託財産とする場合には以下の手順が考えられます。
①委託者名義の預金を一旦払い戻す
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②委託者が当該預金を受託者に引き渡す
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③※受託者名義の信託口口座か信託専用の口座に送金・預入する
※信託契約書を持参しても、金融機関で信託口口座を開設してくれる金融機関は現状殆どありませんので、実務的には受託者名義の専用口座を開設し、そちらに預入れすることが一般的です。
大事なことは、金銭としての資産は、外形上区別することができる状態で保管することです。ただし、受託者が先に亡くなったときには、受託者固有の財産とみなされてしまう恐れがありますので、注意も必要です。
以上のように、信託契約を締結しただけでは預金は委託者から受託者に移動されません。信託契約締結度速やかに、銀行窓口に行き、委託者から受託者の管理する専用口座に信託目録記載の現金額を実際に移動することが必要です。