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法定後見制度と任意後見制度の違いとは?

2020-08-11

法定後見制度と任意後見制度の違い

近年テレビ、雑誌でも「成年後見制度」という言葉を目や耳にすることもあるでしょう。この成年後見制度には大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。この2つの制度とも「判断能力の不十分な方の財産や権利を保護したり、生活を支援するための制度」という大きな趣旨は異なりません。しかしながら、違う点についても勿論ありますので、その事柄を中心に説明していきます。

  • その1、制度の開始方法

法定後見は、実際に物忘れなど判断能力が低下してきたで、今後の財産管理などに不安がでてきた場合に、ご自身及び親族などにより家庭裁判所に申立てることにより始まります。具体的に判断能力が低下していることが前提となります。法定後見には判断能力の程度によって「後見」(判断が全くできない状態)「保佐」(判断が著しくできない状態)「補助」(判断ができないことがある状態)の3種類の制度が更にあり、ご本人の事情に応じて選べるようになっています。

一方、任意後見は、将来の判断能力が低下した場合に備え、ご自身で後見人を誰にし、その後見人にどういったことを任せるかなどを決めた上で、任意後見契約を結ぶことによって始まります。但し、任意後見はまだご自身に判断能力が十分ありますので、任意後見契約をしてもすぐには後見人の援助を必要としないでしょう。よって任意後見契約後に実際に判断能力が低下してから、家庭裁判所への申立てをして始めて後見人としての活動が始まることになります。

分かりやすくいうと法定後見は「実際に判断能力が低下してきた場合に、既に発生している不安・不都合や今後発生するであろう不安・不都合を解消するための制度」であり、任意後見は「判断能力がある内に、将来発生するである不安・不都合に備えるための制度」と言えるでしょう。

ともに後見人がつくと、法務局に成年後見(任意後見)の登記がされます。

  • その2、権限の違い

法定後見は「保佐」「補助」の場合は法律で定めれた範囲内での代理権・同意権となりますが、「後見」の場合は日用品の購入などの日常生活に関する行為及び結婚や認知、養子縁組などの一身専属権、身上監護権以外のほぼ全ての同意権を持っています。成年後見人は被後見人の財産を守ることが求められており、逆に言うと資産運用や相続税対策などの財産を増やす行為をすることはできません。

これと異なり、任意後見はあくまで当事者間の契約で内容を決めることができますので、先に述べたような法定後見ではできないような行為についても可能と言えます。但し、任意後見の代理権はあくまで契約内容で決まりますので、任意後見契約に記載した代理権しかありません。また、法定後見と違い、後見人に取消権も存在しません。

どちらの制度についても、被後見人の財産や権利を守るという観点から大きな差はありませんが、任意後見の方がご本人の意思で始まることから幅広い選択肢があると言えるでしょう。

 

任意後見制度って?任意後見制度をご検討の方へ

2020-07-01

任意後見制度とは

法定後見制度が、判断能力が低下した時に利用する制度であるのに対し、任意後見制度は、判断能力が十分にあるときに信頼できる人と任意後見契約を結んでおいて、将来判断能力が低下した時にその契約をした人に後見をしてもらう制度です。
任意後見制度は、将来判断能力が十分にある時に、不十分となった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活や療養看護、財産管理などに関する事務について代理権を与えておく契約(任意後見契約)を結んでおくものです。
簡単に言うと、自分の信頼できる人・団体に自信の判断能力が低下したら、その後の財産管理などについて「お願いできる仕組み」を自ら作っておく制度になります。

任意後見制度を利用する際には必ず公証人役場で公正証書を作成する必要があります。公正証書を作成する費用は以下のとおりです。
①公正証書作成の基本手数料・・・1万1,000円
②登記嘱託手数料・・・1400円
③登記所に納付する印紙代・・・2600円
この他にも当事者に交付する正本等の証書代や登記嘱託書郵送代がかかります。

任意後見契約の類型

任意後見契約には、現在のお考え、お身体の状態に応じてさまざまなタイプ(将来型・移行型・段階型)の契約方法があります。
今のご自身にあった契約内容を選ぶことで安心して後見契約を締結することができます。

●将来型とは?
財産管理までお願いするのは不安なのでとりあえずは「見守り契約」からはじめて信頼関係を築きたいと、いう方に適しています。

「将来型」の場合、任意後見契約締結から任意後見の開始まで相当な期間が経過することから、任意後見を開始せずに本人が亡くなられることもあり得ます。
また、任意後見受任者が、本人の判断能力の低下に気がつかなかったりすることもあります。そのため別途、「見守り契約」(本人の健康状態等を把握するために定期的に電話や訪問するなどして見守るという契約)を結び、任意後見の発効まで継続的に支援する仕組みを作ることをおすすめします。

●移行型とは?
現在、判断能力はあるが、身体の具合がよくないなどの理由から、金融機関などの手続きを任せたい、という方に適しています。

任意後見契約で恐らく最も多く使われている類型です。
任意後見契約締結と同時に「財産管理契約」(財産管理・身上監護に関する委任契約)を締結します。
本人の判断能力がある当初は委任契約による支援を行い、本人の判断能力が低下後は任意後見契約による支援を行うため、支援の空白期間がないというメリットがあります。

●段階型とは?

はじめに段階的に信頼関係を築きつつ、身体が不自由になった場合に、金融機関の手続きなどで慌てないようにしておきたい、などの手厚いサポートを望む方に適しています。

任意後見契約締結と同時に「見守り契約」の他「財産管理契約」や「死後事務委任契約」などを締結します。

いずれの契約類型においても、※死後事務委任契約を結んだり、遺言書作成をすることで葬儀から埋葬、相続までよりご自身のお気持ちを反映することができます。

  • 死後事務委任契約~
    本人に相続人がいない場合や、相続人がいても妻が認知症であったり、お子様が知的障害を持たれている場合などは、本人の死後の事務ができないこともあります。
    後見人は本人が死亡すると、後見事務は終了してしまいますので、本人の死後事務をあらかじめ委任しておく必要性があるケースもあります。
    そのような場合に、死後事務委任契約をしておくことで不安を解消できます。

任意後見制度のメリット・デメリット

メリット:
本人の意思で適切と考える任意後見人を選任できる
●任意後見制度は本人の意思を尊重する制度であり、事前に本人に関する情報を把握することができる
●資格のはく奪や権利の制限がない
●任意後見契約だけでなく、他の死後事務委任契約などの制度も選択ですることで、自身が亡くなった後の不安も解消できる

デメリット:
●契約などの取り消し権は持たないので、本人に不利益な契約であっても取り消すことができない
●任意後見監督人の監督下にあり、財産の柔軟な利用・処分ができない任意後見制度の場合は、家庭裁判所の選任により、任意後見監督人がつけられます。任意後見監督人が定期的に任意後見人の職務を監督しますので、任意後見契約で定めた権限が全て履行できるとは限りません。
●報酬が必要となる
●任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決定します。

当事務所は、阪急「塚口」駅徒歩3分に位置しています。尼崎市内の方に関わらず、任意後見制度について、ご関心がある方、ご検討されている方がおられましたら、当事務所にご相談ください。

初回相談・見積は無料です。

 

認知症になったら不動産を売却できるの?

2020-06-17

不動産を所有している親が認知症になったら?

日本は超高齢化社会に突入しており、今後もますます高齢者の人口・割合が増えていくことが予想されます。

それに伴って認知症となる人が増えていくことは当然考えられます。
親が預貯金はあまりないが、不動産を所有しているケースで、認知症になった後の介護施設への入居費用、または生活費・医療費などの支払いのために今後誰も住むことがないであろう不動産を売却して現金化したいというニーズは出てくることもあると思います。

そのような場合に不動産を売却することができるのでしょうか。

不動産の売買契約には意思能力を有していることが求められます。

認知症になったり、判断能力が低下しているとこの契約の意思能力を有しているとみなすことが難しくなってしまいます。認知症になったら意思能力を有していないと単純に判断されるものではありませんが、少なくとも売買契約の内容及び登記名義人を変更するための登記手続きに対する理解は必要かと思います。

いずれにしても、認知症になったり、判断能力が低下すると不動産を売却することは一切できなくなるわけではありません。
以下に大きく分けて2種類ある売却する方法についてご説明します。

成年後見制度の利用

不動産の所有者が判断能力がない限り、仮にその相続人全員が同意していても売却することはできません。相続人といっても本人ではなく、あくまで代理人という立場にしかなれないからです。そこで成年後見制度を利用することで成年後見人が認知症である本人に代わって売却することができるようになります。

  • それでは成年後見制度とはどういう制度でしょうか。

成年後見といえば、皆さんは真っ先に、「高齢で認知症になったときに使わなくてはいけない制度」と思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、成年後見制度は高齢者だけを対象とするものではありません。
高齢による認知症に限らず、知的障害、精神障害などの理由で判断能力を欠く、もしくは不十分な方々も対象とした制度です。
判断能力を欠いたり、不十分になったりすると、預貯金の入出金などの管理、生活費・医療費などの給付、施設への入所の手続き、相続問題などについて、自身で判断し、対処することが難しい場合が出てきます。
また、自分に不利益な内容であっても判断できずに、高額商品の売り込みによる購入や、振り込め詐欺などの被害に合うケースも十分考えられます。
このような被害を防ぐために、財産を管理し、本人のために活用するなど判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。
しかしながら、成年後見制度を利用するには相応の時間とお金が必要となり、また家庭裁判所の管理下に置かれるために、本人の生活費・医療費のためなど本人にとって意味のあるものでしかお金を払い出ししたり、使うことはできません。
そのため、相続人の生活費のため、孫の教育費のためなどの理由では、成年後見人は本人の不動産を売却することはできません。
また、本人のためであったとしても、本人の金融資産が潤沢にあるような状況では、不動産を売る必要性が無いとみなされ、売却することはできないでしょう。

  • 成年後見制度を利用した不動産売却の手続きについて
    成年後見人が本人の居住用不動産を売却するときは、家庭裁判所の許可が必要となります。
    居住用不動産売却に係る家庭裁判所の許可を得るには、成年後見人が家庭裁判所に対して、居住用不動産処分の許可の申立てを行います。
    買主がいるからすぐに売却手続きができるわけではなく、家庭裁判所の許可を得て初めて取引ができるようになるなど、手続きも厳格化されます。
    ただし、成年後見人は不動産の売却だけではなく、本人が亡くなられるか意思能力が回復するまでは、業務は行うことになりますので、ご注意ください。

家族信託(家族のための信託)の利用

家族信託を利用すれば認知症及び判断能力が低下している方でも事前に信託契約を締結し、内容を定めておくことにより所有している不動産を売却することもできます。

実際に信託契約に沿った条件を満たした時には、受託者が不動産を売却できる旨などの記載しておくことで、受託者は委託者(本人)に代わって不動産を売却することができます。

この制度を利用する場合には、成年後見制度と違い、家庭裁判所の許可も不要であり、また資金使途なども信託契約に定めておくことである程度柔軟に対応することも可能です。

いずれにしても、家族信託は信託契約により成立しますので、認知症となった後では契約行為をすることはできず、この制度を利用することはできません。

どちらの制度を検討するにしても、今まで親子・家族間では言えなかった財産について前向きに話し合うきっかけにきっとなることでしょう。

当事務所は、阪急「塚口」駅徒歩3分に位置しており、お仕事帰りや日中少し時間が空いた時などにでも是非ご相談ください。

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