任意後見制度とは
任意後見制度は、ご本人の意思に基づいて任意後見契約を締結した方が利用できる後見制度です。したがって、任意後見契約を結ぶために必要が判断能力があることが前提となります。
この任意後見契約の主旨は、将来判断能力が十分にある時に、不十分となった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活や療養看護、財産管理などに関する事務について代理権を与えておく任意後見契約を結んでおくものです。
これに対し、法定後見制度が、判断能力が低下した時に利用する制度となりますので、支援してもらう人を自身で選ぶことが困難であることが大きな違いの一つといえるでしょう。
任意後見契約の契約方法
任意後見契約には、判断能力が不十分な状況になった際に自己の生活、療養看護、財産管理に関する事務の全部又は一部について代理権を与えておくもので、契約の効力は「任意後見監督人」が選任されたときから生じます。また契約の際は公正証書にて作成する必要があるのも特徴です。
また、任意後見契約に付随する契約として①「見守り契約」②「財産管理契約」③「死後事務委任契約」があります。
①「見守り契約」
契約開始後、任意後見契約や財産管理契約の効力が発生する前の段階で、ご本人と受任者が定期的に連絡などを取り合うことで、ご本人の安否、心身の状態や生活の状況を確認し、任意後見契約を発効させる必要があるかどうかを把握するために行う契約です。
②「財産管理契約」
任意後見契約自体は判断能力に問題がない場合には開始することはできません。しかし、判断能力に問題がないとしても、健康上の理由などにより行動が不自由な場合や、病院や施設に入所しているため外出が困難な場合には、財産管理がうまく行えないこともあります。
そのために一定の代理権を受任者に与えることで、財産管理や療養看護の事務を委任することができるようにするために行う契約です。
③「死後事務委任契約」
人が亡くなられると、葬儀場の手配、役所への届出、また病院や施設の費用清算や年金の手続きなど様々な手続きが発生します。
一般的に、これらの手続きは残された家族や親族が行います。家族や親族であれば、わざわざ契約をしておかなくても葬儀の手続きや役所への届出をすることは当然可能です。
ただし、家族や親族、身寄りの方がおられない方の場合には、代わりにその手続きを行ってくれる人がいないこともあり得るでしょう。
今後より一層高齢化社会が進み、家族関係も変わってきていることから、このような手続きを行ってくれる方がおられないまま亡くなられてしまう事も増えてくる事は当然予想されます。
ご自身が亡くなった後の事を考えて、亡くなられた後の事務手続きを任せたいと思った方に、手続きを行ってくれるようにするための契約です。ただし、亡くなられた後の意思の実現については遺言制度がありますので、遺言事項と関連しない事項として、葬儀や法要に関するものや墓や供養に関するなどが対象とされています。
この他にも公正証書遺言を組み合わせることで、より一層ご自身の意思表示を明記しておくこともできます。
任意後見契約のパターン
任意後見契約に、現在のお考え、お身体の状態に応じてさまざまなタイプ(将来型・移行型・段階型)の契約方法があり、今のご自身にあった契約内容を組み合わせることができます。
- 将来型・・・「見守り契約」+「任意後見契約」
財産管理までお願いするのは、不安だし、契約に際してあまり費用をかけたくないような場合に行われます。まずは、見守り契約からはじめて信頼関係を築いていくことも可能です。
- 移行型・・・「財産管理契約」+「任意後見契約」
身体の具合が良くない場合や、病院や施設に入所中であるなど、判断能力に問題はないものの、金融機関の手続きや財産管理の支援をすぐにお願いしたいような場合に行われます。
- 段階型・・・「見守り契約」+「財産管理契約」+「任意後見契約」
段階的に信頼関係を築きながら、身体が不自由になった場合にも、金融機関の手続きや財産管理の支援もお願いできるようにしておくことで慌てないようにしておくことができます。
- 完全型・・・「見守り契約」+「財産管理契約」+「任意後見契約」+「死後事務委任契約」
任意後見契約の当初から、死後の事務まで、生涯の生活の全般を通して契約をしておく場合です。相続人となるべき親族がいない場合や、親族がいても疎遠で他に頼める人がいないような場合に利用されます。
任意後見制度の流れ
任意後見契約の締結から後見が開始されるまでの全体の流れです。
任意後見契約の効力は、ご本人の判断能力が不十分となったときに、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをし、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力を発生させます。
任意後見制度のメリット
- 本人の意思で適切と考える任意後見人を選任できる
- 任意後見制度は本人の意思を尊重する制度であり、事前に本人に関する情報を把握することができる
- 資格のはく奪や権利の制限がない
- 任意後見契約だけでなく、他の※死後事務委任契約などの制度も選択できる
任意後見制度のデメリット
- 契約などの取り消し権は持たないので、本人に不利益な契約であっても取り消すことができない
- 任意後見監督人の監督下にあり、財産の柔軟な利用・処分ができない任意後見制度の場合は、家庭裁判所の選任により、任意後見監督人がつけられます。任意後見監督人が定期的に任意後見人の職務を監督しますので、任意後見契約で定めた権限が全て履行できるとは限りません。
- 報酬が必要となる
任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決定します。
「任意後見制度」について検討されている方、お悩みの方、ご質問などあれば、当事務所にお気軽にご相談ください。
初回相談・費用見積は無料です。