亡くなった方の不動産調査方法|相続の専門家が全手順を解説

故人の不動産、何から調べる?相続財産調査の全体像

ご家族が亡くなられた後、悲しみに暮れる間もなく、さまざまな手続きが始まります。その中でも特に重要かつ複雑なのが、故人(被相続人)が所有していた不動産の調査です。

「父は自宅以外に不動産を持っていたのだろうか…」「どこかに隠れた土地がないか心配…」

こうした不安を抱えたまま手続きを進めることは、非常に危険です。なぜなら、相続には期限があるからです。例えば、相続を放棄するかどうかは、原則としてご自身が相続人であることを知った時から3ヶ月以内に決めなければなりません。もし借金の方が多ければ相続放棄を検討する必要がありますが、そのためには財産の全体像を正確に把握することが大前提となります。

さらに、2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に名義変更をしないと、10万円以下の過料が科される可能性も出てきました。

不動産の調査は、これらすべての相続手続きの土台となる、非常に重要な第一歩なのです。この記事では、相続の専門家である司法書士が、亡くなった方の不動産を漏れなく調査するための全手順を、3つのステップに分けて分かりやすく解説していきます。複雑に見えるかもしれませんが、一つひとつ手順を踏んでいけば大丈夫です。順を追って確認していきます。

【ステップ1】まず確認すべき3つの基本書類

不動産調査の第一歩は、故人が遺した書類の中から手がかりを探すことです。まずは以下の3つの書類がご自宅や貸金庫などに保管されていないか、確認してみてください。これらは、調査の手がかりとなる重要な書類です。

固定資産税の納税通知書:調査の出発点

毎年4月〜6月頃に、不動産が所在する市区町村から所有者宛に送られてくるのが「固定資産税の納税通知書」です。これが見つかれば、調査は大きく前進します。

固定資産税の課税明細書のサンプル画像。土地と家屋の所在地、地番、評価額などが記載されている例。

特に重要なのが、通知書に添付されている「課税明細書」です。ここには、その市区町村内で故人が所有し、固定資産税が課税されている土地・建物の一覧が記載されています。所在、地番、家屋番号、評価額などがわかるため、不動産を特定する上で最も基本的な手がかりとなります。

ただし、この通知書だけで安心はできません。なぜなら、私道などの公共性の高い土地で固定資産税が課税されていない「非課税不動産」や、共有不動産で代表者以外の方に通知書が届いていないケースでは、課税明細書に記載されない可能性があるからです。完全な調査のためには、次のステップが必要になります。

権利証(登記識別情報通知):不動産を特定する重要書類

「権利証(登記済証)」や、2005年以降に発行された「登記識別情報通知」は、不動産の所有者であることを証明する大切な書類です。多くの場合、通帳や印鑑などと一緒に金庫や仏壇の引き出しといった大切な場所に保管されています。

これらの書類が見つかれば、そこに記載されている地番や家屋番号から不動産を正確に特定できます。これは非常に強力な手がかりと言えるでしょう。

ただし、注意点もあります。権利証は不動産を売却しても手元に残ることがあるため、「権利証がある=今も所有している」とは限りません。また、紛失していても再発行はされませんが、相続手続きは可能です。あくまで手がかりの一つとして捉え、最終的には法務局の登記情報で確認することが重要です。

【ステップ2】「名寄帳」で所有不動産を一覧化する

「固定資産税の納税通知書が見つからない…」「通知書に載っていない不動産があるかもしれない…」
そのような場合に有効な方法の一つが「名寄帳(なよせちょう)」の取得です。名寄帳は、不動産調査で重要な手がかりとなる資料です。

名寄帳とは?固定資産税通知書との違い

名寄帳とは、ある特定の人が、その市区町村内に所有している不動産をすべて一覧にまとめたものです。市区町村が固定資産税を課税するために作成している台帳であり、一般に公開はされていませんが、所有者本人や相続人であれば取得することができます。

名寄帳と固定資産税の課税明細書の違いを比較する図解。名寄帳は非課税不動産も含む網羅性が特徴であることを示している。

名寄帳の最大のメリットは、課税されている不動産だけでなく、非課税の不動産(私道や用悪水路など)も含めて網羅的にリストアップされる点です。固定資産税の課税明細書では漏れてしまう可能性のあった不動産も、名寄帳なら発見できる可能性が高まります。特定の市区町村内における所有不動産を確認するための一覧資料といえます。

名寄帳の取得方法と必要書類【完全ガイド】

名寄帳の取得は、決して難しい手続きではありません。以下のポイントを押さえておけば、スムーズに進めることができます。

項目内容
申請できる人・不動産所有者本人・相続人・上記から委任を受けた代理人(司法書士など)
申請先不動産が所在する市区町村の役所(資産税課、税務課など)※東京23区の場合は都税事務所
必要書類【相続人が申請する場合】① 故人が亡くなったことと、申請者が相続人であることを証明する戸籍謄本等(故人の死亡記載のある戸籍謄本、申請者の現在の戸籍謄本など)② 申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)③ 申請書(役所の窓口またはホームページで入手)④ 認印※法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍謄本一式の代わりに利用できる場合が多いです。
手数料1通300円程度(自治体により異なります)
名寄帳の取得方法まとめ

【専門家からのワンポイントアドバイス】
申請する際には、窓口で「被相続人名義の単独所有分と、共有名義になっている不動産の両方をください」と必ず伝えましょう。単に「名寄帳をください」とだけ言うと、単独所有分しか発行されないことがあります。共有不動産を見落とさないための重要なポイントです。

また、不動産が遠方にある場合でも、ほとんどの自治体で郵送による請求が可能です。各自治体のホームページで手続き方法を確認してみてください。

【ステップ3】「登記事項証明書」で権利関係を最終確認

名寄帳によって不動産のリストが手に入ったら、最終確認のステップに進みます。それが「登記事項証明書(登記簿謄本)」の取得です。

名寄帳はあくまで市区町村が管理する「課税台帳」であり、最新の正確な権利関係を証明するものではありません。一方、登記事項証明書は法務局が管理する公的な記録であり、その不動産の「今現在の、本当の所有者は誰か」「担保は付いていないか」といった情報を正確に確認できます。このステップを踏むことで、調査の信頼性が格段に高まり、後の遺産分割や相続登記をスムーズに進めることができます。不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産の権利関係を確認するための公的な証明書です。

登記事項証明書の取得方法(オンライン・窓口)

登記事項証明書は、全国どこの法務局でも取得できます。取得方法は主に2つです。

  • 法務局の窓口で請求:手数料は1通600円です。備え付けの請求書に、名寄帳や権利証で調べた「地番」「家屋番号」を記入して申請します。
  • オンラインで請求:法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用して請求し、郵送で受け取るか、最寄りの法務局で受け取ることができます。郵送の場合は手数料が1通520円、窓口受取の場合は490円と少し安くなるのがメリットです。

登記簿で見るべき3つのポイント:甲区・乙区・共同担保目録

登記事項証明書を取得したら、以下の3つのポイントを重点的に確認しましょう。

  1. 「甲区(こうく)」で所有者を確認する
    甲区には、所有権に関する事項が記載されています。「所有者」の欄を見れば、現在の所有者の氏名・住所がわかります。共有者がいる場合は、その全員の氏名と「持分」も記載されているので、必ず確認してください。
  2. 「乙区(おつく)」で担保の有無を確認する
    乙区には、所有権以外の権利に関する事項、主に抵当権や根抵当権といった担保権が記載されています。ここに記載があれば、故人がその不動産を担保に住宅ローンなどの借り入れをしていた可能性があります。完済されていれば下線が引かれていますが、そうでなければ、その債務も相続の対象となります。
  3. 「共同担保目録」で他の不動産の手がかりを探す
    乙区に担保権の記載がある場合、登記事項証明書を請求する際に「共同担保目録付き」で申請することをおすすめします。これは、同じ債務の担保として他にどの不動産が提供されているかを示すリストです。ここに、まだ把握できていない別の不動産が記載されている可能性があり、調査漏れを防ぐための重要な手がかりになります。

調査で判明しがちな3つの落とし穴と対処法

ここまでの調査で、ほとんどの不動産は把握できるはずです。しかし、実務では思わぬ落とし穴に遭遇することがあります。ここでは、よくある3つのケースとその対処法をご紹介します。

ケース1:登記されていない建物(未登記建物)がある

古い家屋や、後から増築した部分などが登記されていない「未登記建物」であるケースは少なくありません。この場合、登記事項証明書は存在しませんが、固定資産税は課税されていることが多いため、名寄帳には記載されています。

もし名寄帳に家屋の記載があるのに登記事項証明書が取得できない場合は、未登記建物の可能性が高いでしょう。未登記建物も相続財産ですので、遺産分割の対象となります。相続後に売却したり、担保に入れて融資を受けたりする際には、前提として建物の表題登記や所有権保存登記が必要になります。

ケース2:亡くなった方の親名義のまま(先代名義)になっている

調査を進めると、故人が住んでいたり利用したりしていた不動産が、実はその親(祖父母など)の名義のままだった、というケースに遭遇することがあります。これは、先代が亡くなった際に相続登記が行われず、放置されていたために起こります。

この場合、今回の相続手続きの前に、まず先代の相続から解決する必要があります。これを「数次相続」と呼び、関係する相続人が数十人に膨れ上がっていることも珍しくなく、手続きは非常に複雑になります。登記事項証明書で所有者名をしっかり確認し、もし先代名義だった場合は、すぐに専門家へ相談することを強くお勧めします。

ケース3:他の親族との共有名義になっている

不動産が故人の単独所有ではなく、兄弟姉妹など他の親族との共有名義になっていることもよくあります。登記事項証明書の甲区で、所有者とそれぞれの持分割合を必ず確認してください。

共有不動産は、遺産分割の対象となるのは故人の持分のみです。しかし、将来その不動産全体を売却したり、活用したりする際には、共有者全員の同意が必要になるため、遺産分割協議が複雑化しやすい傾向にあります。早い段階で共有関係を正確に把握しておくことが重要です。

司法書士に相続不動産の調査について相談し、安心している夫婦のイラスト。

【2026年開始】所有不動産記録証明制度とは?

ここで、今後の不動産調査に役立つ最新情報をご紹介します。2026年(令和8年)2月2日から、「所有不動産記録証明制度」という新しい制度が始まっています。

これは、相続人などが申請すれば、被相続人が登記上の所有者として記録されている不動産の一覧を、全国の法務局でまとめて証明書として発行してもらえるという画期的な制度です。これまでは市区町村ごとに名寄帳を取得する必要がありましたが、この制度を使えば、一定の検索条件に該当する全国の登記済み不動産を一覧的に確認できるため、調査の負担が軽減されると期待されています。

ただし、この制度も万能ではありません。

  • 登記されていない建物(未登記建物)は対象外
  • 登記されている氏名や住所が、亡くなった時点のものと一致しないと抽出されない可能性がある(住所変更登記がされていないケースなど)

こうした限界もあるため、制度開始後も、これまで解説してきた名寄帳など既存の調査方法と組み合わせて利用することが、より確実な調査に繋がるでしょう。

参照:所有不動産記録証明制度の概要

不動産調査が終わったら次にすべきこと

無事に不動産の調査が完了したら、次のステップに進みましょう。調査結果を元に、まずは「財産目録」を作成することをおすすめします。財産目録とは、プラスの財産(不動産、預貯金など)とマイナスの財産(借金など)を一覧にまとめたものです。これを作成することで財産の全体像が明確になり、その後の手続きがスムーズに進みます。

財産目録が完成したら、次に行うのは相続人全員での「遺産分割協議」です。調査で判明した不動産を誰が、どのように相続するのかを話し合います。話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、最後に不動産の名義を相続人へ変更する「相続登記」を法務局に申請して、一連の手続きは完了となります。

遺産分割協議は、不動産の分け方が焦点となり、話し合いが難航することも少なくありません。調査結果を元に、早めに準備を進めることが大切です。

自分で調べるのが難しいと感じたら専門家へ相談を

ここまで不動産調査の方法を解説してきましたが、「戸籍を集めるのが大変」「遠方に不動産があって手続きが面倒」「調査結果が複雑でどう判断していいかわからない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

特に、

  • 先代名義の不動産が見つかった
  • 未登記の建物があるようだ
  • 相続人が多くて話し合いがまとまりそうにない

といったケースでは、ご自身だけで手続きを進めるのは困難な場合が多いです。そんな時は、無理せず専門家である司法書士にご相談ください。

私たち司法書士は、不動産調査や登記手続きに関する実務を取り扱っています。面倒な戸籍の収集から、名寄帳や登記事項証明書の取得代行、そして判明した不動産の権利関係の分析まで、一括してお手伝いすることができます。早期にご相談いただくことで、トラブルの予防や手続きの見通しを立てやすくなる場合があります。

司法書士法人れみらい事務所では、相続に関する初回のご相談は無料で承っております。何から手をつけていいかわからないという段階でも構いません。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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