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親族でも成年後見人になれる?まず知っておきたい基本
大切なご家族の判断能力が少しずつ衰えてきたとき、「これからの財産管理はどうしよう」「悪質な詐欺に遭わないだろうか」といった不安がよぎるのは当然のことです。そんなとき、ご家族を守るための選択肢の一つとして「成年後見制度」があります。しかし、多くの方が「専門家に頼むと費用が高そうだし、できれば家族で支えたい。でも、私たち親族が後見人になんてなれるのだろうか?」という疑問や不安をお持ちではないでしょうか。
このセクションでは、まずその一番の疑問に、分かりやすくお答えします。制度の基本的なところから、一緒に確認していきましょう。
結論:特別な資格は不要!親族も後見人になれます
まず、ご安心ください。成年後見人になるために、司法書士や弁護士のような特別な国家資格は一切必要ありません。大切なご家族を想う気持ちがあれば、その第一歩を踏み出すことができます。
実際に、最高裁判所が公表している成年後見関係事件の概況によれば、成年後見人に選ばれる人のうち、親族が占める割合は決して少なくありません。多くのご家族が、実際に後見人として大切な方の財産と生活を支えています。
ただし、一つだけ知っておいていただきたいのは、「私がやります」と手を挙げれば必ずなれるわけではない、ということです。最終的に誰を後見人にするかを決めるのは、家庭裁判所です。ご本人の財産状況やご親族の関係性などを総合的に見て、最も適任だと思われる人が選ばれる、という仕組みになっています。
知っておくべき2つの制度「法定後見」と「任意後見」
成年後見制度には、大きく分けて2つのタイプがあります。ご自身の状況がどちらに近いか、イメージしながら読み進めてみてください。
1. 法定後見制度
すでに認知症などで判断能力が不十分になってしまった場合に、ご家族などが家庭裁判所に申立てを行い、後見人を選んでもらう制度です。いわば「今、サポートが必要な方」のための制度と言えるでしょう。
2. 任意後見制度
まだ判断能力がしっかりしている元気なうちに、将来判断能力が衰えた場合に備えて、「この人にお願いしたい」と信頼できるご家族などとあらかじめ契約を結んでおく制度です。こちらは「将来への備え」のための制度ですね。

このように、ご本人の現在の状況によって、利用できる制度が異なります。特に、将来に備える「任意後見」は、ご本人の意思を最も尊重できる方法です。より詳しい手順については、任意後見契約書の作成ガイド|必要書類・費用・文例と注意点をご覧ください。
【決断の前に】親族が後見人になるメリット・デメリット
「家族が後見人になれるなら、その方がいいに決まっている」と考えるのは、とても自然なことです。しかし、実際に後見人としての責任を負う前に、その光と影の両面を冷静に知っておくことが、後悔しない選択のためにとても重要になります。ここでは、親族が後見人になることのメリットとデメリットを、具体的に見ていきましょう。
メリット:費用を抑えられ、本人の精神的な安心につながる
親族が後見人になることの大きなメリットは、主に2つあります。
1. 専門家への報酬が不要で、経済的負担を抑えられる
司法書士や弁護士などの専門家が後見人に就任すると、通常、月額数万円程度の報酬が発生します。成年後見制度は長期にわたることが多いため、この費用は決して小さな負担ではありません。親族が後見人になれば、この月々の報酬が原則としてかからないため、経済的な負担を大幅に軽減できるのです。
2. 気心の知れた家族だからこその、精神的な安心感
何より大きいのが、ご本人の精神的な安心感です。これまで通り、慣れ親しんだ家族が財産の管理や生活のサポートをしてくれることは、ご本人にとって大きな心の支えとなるでしょう。見ず知らずの専門家と一から関係を築くストレスがなく、ご本人の意思や希望を汲み取りやすいのも、家族ならではの強みと言えます。
デメリット:責任は重大。報告義務や親族間トラブルのリスクも
一方で、親族が後見人になることには、厳しい現実も伴います。安易に決断する前に、以下の3つのデメリットをしっかりと心に留めておいてください。
1. 家庭裁判所への定期的な報告義務という負担
後見人は、家庭裁判所が定めた期限までに、財産の状況やお金の使い道をまとめた報告書類(例:財産目録、収支の資料等)を提出する義務があります。これは、ご本人の財産をきちんと管理していることを証明するための重要な手続きです。しかし、日々の領収書を整理し、専門的な書類を作成する作業は、想像以上に時間と手間がかかり、大きな負担となることがあります。
2. 親族間トラブルの火種になる可能性
「お母さんの通帳を、長男だけが管理しているのは不公平だ」「本当に本人のために使われているのか?」など、一人の親族が財産を管理することで、他の兄弟姉妹から疑念を抱かれたり、不満が出たりすることがあります。良かれと思ってやっていることが、かえって家族の間に溝を生んでしまうケースは、残念ながら少なくありません。
3. 精神的なプレッシャーと時間的な制約
大切な家族の財産を預かるという責任は、非常に重いものです。「もし、管理を間違えたらどうしよう」という精神的なプレッシャーは常に付きまといます。また、煩雑な事務作業や各種手続きのために、ご自身の仕事や家庭生活の時間が削られてしまうという現実的な問題も覚悟しておく必要があります。
司法書士が解説!親族が後見人に「なれない」10のケース
「ぜひ、私が後見人になりたい」と強く願っていても、残念ながらなれない場合があります。これには、法律で明確に定められたケースと、法律上の問題はなくても、家庭裁判所が「この方では難しい」と判断する実務上のケースがあります。ご自身の状況が当てはまらないか、しっかりと確認していきましょう。
法律で定められた欠格事由(民法847条)
まず、民法という法律で、「このような人は成年後見人にはなれません」と明確に定められている条件があります。これを「欠格事由(けっかくじゆう)」と呼びます。具体的には以下の通りです。
- 未成年者
- 家庭裁判所から後見人などを解任されたことがある人
- 破産者
- ご本人に対して裁判を起こしたことがある人、その配偶者や親子
- 行方が分からない人
これらのいずれかに当てはまる場合は、残念ながら成年後見人になることはできません。これは、ご本人の財産や権利を確実に守るためのルールなのです。
家庭裁判所が選任を認めにくい実務上のケース
法律上の欠格事由に当てはまらなくても、家庭裁判所が「親族ではなく、専門家である司法書士や弁護士に任せる方がご本人のためだ」と判断する場合があります。私たちが実務でよく目にするのは、以下のようなケースです。
- 親族間で意見が対立している、もめている
財産管理の方針などを巡って親族間で争いがある場合、特定の親族を後見人にすると、対立がさらに激しくなる恐れがあります。そのため、中立的な立場の専門家が選ばれやすくなります。 - 本人の財産が多額、または複雑である
預貯金だけでなく、アパート経営や株式投資、事業用資産など、管理が複雑な財産を多くお持ちの場合、専門的な知識が必要と判断され、専門家が選任される傾向にあります。 - 後見人候補者自身に借金があるなど、経済的な問題を抱えている
候補者自身に経済的な余裕がないと、ご本人の財産を自分のために使ってしまうリスクが懸念されます。あくまで「可能性」の話ですが、裁判所は慎重に判断します。 - 後見人候補者がご高齢、または遠方に住んでいる
後見人の仕事は、煩雑な事務作業や定期的な面会が求められます。そのため、候補者ご自身が高齢で健康に不安があったり、ご本人と離れて暮らしていたりすると、職務を全うするのが難しいと判断されることがあります。 - 本人と後見人候補者の利益が相反する可能性がある
例えば、ご本人と候補者が共同で相続人となる遺産分割協議を行う場合などです。この場合、候補者は自分の利益を優先してしまう可能性があるため、ご本人の代理人として適切ではないと判断されることがあります。このようなケースでは特別代理人の選任が必要になることもあります。
もし「なれないケース」に該当したら?取るべき次の行動
「もしかしたら、自分はなれないかもしれない…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。でも、諦めるのはまだ早いです。たとえ上記のケースに当てはまる可能性があっても、打つ手はあります。
選択肢1:後見監督人をつけてもらう
「後見監督人」とは、後見人が正しく仕事をしているかをチェックする専門家(司法書士や弁護士)のことです。親族後見人にこの監督人をつけることを条件に、家庭裁判所が選任を認めてくれる場合があります。財産管理に専門家の目が入ることで、他の親族も安心できます。
選択肢2:専門家と役割分担をする
財産管理などの難しい部分は専門家(後見人)に任せ、ご家族は「身上監護(しんじょうかんご)」、つまりご本人の生活や介護、医療に関するサポートに専念するという方法もあります。これなら、事務的な負担や親族間トラブルのリスクを避けつつ、家族として一番大切な部分で寄り添うことができます。
選択肢3:専門家にすべてを任せる
思い切ってすべての業務を専門家に任せ、ご自身は純粋に「家族」としてご本人を支えることに徹する、というのも立派な選択です。後見人という立場から解放されることで、精神的な負担なく、穏やかな気持ちでご本人と向き合えるかもしれません。
どの方法が最適かは、ご家庭の状況によって異なります。もし後見人を交代することも視野に入れるなど、一人で悩まず、一度私たちのような専門家にご相談いただくことで、ご家族にとって一番良い道筋が見えてくるはずです。
【完全ガイド】親族が後見人になるための選任手続きと流れ
「よし、私が後見人になるために手続きを進めよう」と決心された方のために、ここからは具体的な手続きの流れをステップ・バイ・ステップで解説します。全体像を掴んでおけば、不安も軽くなるはずです。もし後見制度を利用したいが、手続きが分からないという方もご安心ください。

ステップ1:必要書類の準備と収集
申立てで最も大変なのが、この書類集めです。事前にリストを準備して、効率よく進めましょう。主に必要となる書類は以下の通りです。
| 書類名 | 入手先 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 申立書 | 家庭裁判所の窓口またはウェブサイト | 無料 |
| 本人の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 450円 |
| 本人の住民票 | 住所地の市区町村役場 | 300円程度 |
| 後見人候補者の住民票 | 住所地の市区町村役場 | 300円程度 |
| 登記されていないことの証明書 | 法務局 | 300円 |
| 診断書(成年後見用) | 主治医(病院) | 数千円~1万円程度 |
| 財産に関する資料 | (ご自宅、金融機関、法務局など) | 実費 |
特に「診断書」は、家庭裁判所が指定する様式で医師に作成してもらう必要があります。予約が必要な場合も多いので、早めに主治医にお願いしておきましょう。また、財産に関する資料として、預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書なども必要になります。
裁判所のウェブサイトで、申立書の書式や必要書類の詳細を確認できます。
ステップ2:申立書の作成と家庭裁判所への提出
必要書類が揃ったら、いよいよ申立書を作成します。申立書には、なぜ後見が必要なのかという「申立ての理由」や、ご本人の生活状況、財産状況などを詳しく記入します。特に「申立ての理由」では、「預金の引き出しができず生活費に困っている」「悪質な訪問販売の契約をしてしまった」など、ご本人が直面している具体的な問題を正直に書くことが大切です。
すべての書類が完成したら、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。郵送でも提出できますが、書類に不備がないか窓口で確認してもらうとより安心です。
ステップ3:家庭裁判所による面談・調査と審判
申立てをすると、後日、家庭裁判所の調査官と申立人や後見人候補者との面談が行われます。面談では、ご本人の現在の様子や財産管理の方針、後見人としての覚悟などを聞かれます。緊張するかもしれませんが、ご本人を想う気持ちを正直に伝えれば大丈夫です。
家庭裁判所は、これらの面談や提出された書類、場合によっては医師による鑑定などを通じて、後見を開始すべきか、誰を後見人にするのが最も適切かを慎重に判断します。そして最終的に、その決定を「審判(しんぱん)」という形で通知します。
申立てから審判が下りるまでの期間は、事案にもよりますが、おおむね2ヶ月から5ヶ月程度が目安となります(鑑定を行う場合は、さらに期間が必要になります)。
気になる費用と報酬の話|申立てから後見業務まで
成年後見制度を利用するにあたって、やはり気になるのはお金のことではないでしょうか。費用は大きく分けて「申立てのときにかかる初期費用」と「後見人になった後にかかる費用」の2つがあります。当事務所の料金表も参考にしながら、具体的に見ていきましょう。
申立てにかかる初期費用はいくら?
ご自身で申立てをする場合、必ずかかる実費があります。内訳は以下の通りです。
- 申立手数料:800円(収入印紙)
- 登記手数料:2,600円(収入印紙)
- 郵便切手代:約3,000円~5,000円(裁判所からの連絡用)
- 診断書作成料:数千円~1万円程度
合計すると、おおよそ1万円前後を見ておくとよいでしょう。これに加えて、ごく稀なケースですが、家庭裁判所が医師による精神鑑定が必要と判断した場合は、別途5万円から10万円程度の鑑定費用がかかることがあります。
親族後見人も報酬はもらえる?手続きと相場
「親族でも、後見人としての働きに対する報酬はもらえるの?」というご質問をよくいただきます。結論から言うと、「はい、もらうことは可能」です。
ただし、自動的にもらえるわけではありません。年に一度の報告とは別に、家庭裁判所に対して「報酬付与の申立て」という手続きを行う必要があります。裁判所は、ご本人の財産状況や後見業務の内容などを考慮して報酬額を決定します。
もっとも、ご家族のサポートは無償で行われるべきという考え方もあり、専門家が就任する場合(月額2万円~)に比べて低額になるか、あるいは無報酬とされるケースも少なくありません。報酬をもらうことで、他の親族に対して「きちんと仕事としてやっている」と説明しやすくなるという側面もあります。
費用が払えない場合の公的助成制度
申立て費用や後見人への報酬を支払うのが経済的に難しい、という方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合には、公的な助成制度を利用できる可能性があります。
多くの市区町村では、「成年後見制度利用支援事業」として、低所得の方などを対象に、申立て費用や後見人報酬の一部または全部を助成しています。こうした制度の利用も、今後の成年後見制度の改正でより利用しやすくなることが期待されています。
まずはお住まいの市区町村役場の高齢者福祉担当課や、地域包括支援センターに相談してみてください。経済的な理由で制度の利用を諦める必要はありません。
後見人に選ばれた後の注意点と専門家への相談
無事に後見人に選ばれたら、いよいよその責任ある役割がスタートします。しかし、それはゴールではありません。むしろ、ここからが本番です。最後に、後見人として活動していく上で、絶対に守っていただきたい注意点をお伝えします。
年に一度の家庭裁判所への報告義務を忘れずに
後見人としての最も重要な義務の一つが、家庭裁判所への定期報告です。選任されてから約1年後、そしてその後も年に1回、ご本人の財産がどのように増減したか、どのようなことにお金を使ったかをまとめた「後見事務報告書」と「財産目録」を提出しなければなりません。
この報告を怠ったり、内容が不適切だったりすると、家庭裁判所から指導を受け、最悪の場合は後見人を解任されてしまうこともあります。日頃からお金の出入りをきちんと記録し、領収書やレシートを必ず保管しておく習慣をつけましょう。
本人の財産は厳格に管理!使い込みは犯罪です
親族後見で最も注意すべき点が、財産の管理です。「家族なんだから、少しくらい…」という甘えは絶対に許されません。ご本人の財産と、後見人であるあなた自身の財産は、銀行口座を分けるなどして、1円たりとも混同してはなりません。
ご本人の財産は、あくまでご本人の生活、医療、介護のためにのみ使うことが許されます。たとえご本人のためを思った支出でも、それが客観的に見て不必要だと判断されれば、問題になる可能性があります。安易な使い込みは「業務上横領」という重い犯罪に問われる可能性があることを、肝に銘じてください。例えば、不動産を売却するなど大きな財産を動かす際は、特にご本人の「居住用不動産」を処分(売却等)する場合、原則として家庭裁判所の許可が必要です。
手続きが難しいと感じたら、司法書士に相談を
ここまで読んで、「自分一人でやり遂げるのは、やっぱり大変そうだ…」と感じられたかもしれません。そのように感じたときは、決して一人で抱え込まないでください。
私たち司法書士は、成年後見制度の専門家として、皆様をサポートすることができます。当事務所では、成年後見制度の申立手続きサポートを行っております。例えば、「申立ての書類作成だけ手伝ってほしい」「裁判所への報告書の書き方を教えてほしい」といったように、ご自身が不安に感じる部分だけを専門家に依頼するという賢い方法もあります。そうすることで、費用を抑えながら、安心して後見人としての務めを果たすことができるでしょう。
大切なご家族を守りたいというお気持ちは、何よりも尊いものです。その想いを適切な形で実現するために、私たちは全力でサポートさせていただきます。初回のご相談は無料です。まずはお気軽にご自身の状況をお聞かせください。
当事務所は兵庫県尼崎市を拠点に、相続や遺言に関する手続きをサポートしています。相続手続きでは、戸籍収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、複雑な手続きを一括してお任せいただけます。また、遺言書の作成支援も行っており、将来の相続に備えた適切なアドバイスを提供しています。
初回のご相談や費用のお見積もりは無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。

