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遺言書があっても相続登記は必要!まずは基本を確認
「父が遺言書を遺してくれたから、不動産の名義も自動的に変わるだろう」…もし、このようにお考えでしたら、少し注意が必要です。実は、たとえ法的に有効な遺言書があったとしても、何もしなければ不動産の名義(所有権)が自動で書き換わることはありません。
大切なご家族が遺してくれた不動産をご自身の名義にするためには、「相続登記」という法務局への申請手続きが必ず必要になります。
さらに、2024年4月1日から法律が変わり、相続登記が義務化されました。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料(行政上の金銭的制裁)の対象となる可能性があります。なお、期限内に相続登記が難しい場合に、相続人であることを申し出ることで申請義務(基本的義務)を履行できる「相続人申告登記」も設けられています。
この記事では、遺言書を使った相続登記の必要書類から費用、そして少し複雑なケースまで、司法書士が一つひとつ丁寧に解説していきます。最後までお読みいただければ、きっと安心して手続きの第一歩を踏み出せるはずです。
相続登記とは?なぜ遺言書があっても必要なのか
相続登記とは、とてもシンプルに言うと「不動産の所有者情報を、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継ぐ方(相続人)へ書き換える手続き」のことです。
遺言書は、故人が「誰に、どの財産を遺すか」という意思を示す、非常に大切な書類です。しかし、遺言書はあくまで相続人同士の間での権利関係を決めるものであり、その内容を法務局に伝え、登記簿という公的な記録に反映させなければ、効力は限定的です。
なぜなら、登記をして初めて、その不動産が自分のものになったことを、第三者(例えば、他の相続人から不動産を買った人など)に対して法的に主張できる(これを「対抗できる」と言います)からです。遺言書を手元に持っているだけでは、この「対抗力」がありません。大切な財産を守るためにも、相続登記は不可欠な手続きなのです。
遺言書の種類で手続きが変わる!2つのパターンの違い
相続登記の手続きは、お手元にある遺言書の種類によって、進め方が少し変わります。まずは、ご自身の遺言書がどちらのタイプか確認してみましょう。
1. 公正証書遺言
公証役場で、公証人という法律の専門家が作成に関与した、信頼性の高い遺言書です。原本は公証役場に保管されており、偽造や紛失のリスクが低いのが特徴です。この場合、家庭裁判所での手続きは不要で、比較的スムーズに相続登記に進めます。
2. 自筆証書遺言
故人が全文、日付、氏名を自筆で書き、押印した遺言書です。手軽に作成できる反面、形式の不備で無効になったり、発見されなかったりするリスクがあります。この自筆証書遺言を使って相続登記をするには、原則として、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。
遺言書の検認は、遺言書の偽造や変造を防ぎ、その内容を相続人全員に知らせるための手続きです。勝手に封を開けてしまうと罰則の対象となる可能性もあるため、注意が必要です。
※ただし、法務局で自筆証書遺言を保管する制度を利用していた場合は、検認は不要となります。

【一覧】遺言書による相続登記の必要書類と取得場所
相続登記をスムーズに進めるためには、事前の書類準備がとても大切です。ここでは、遺言書を使った相続登記で必要になる書類を一覧でご紹介します。ご自身の状況に合わせて、チェックリストとしてご活用ください。
【共通】必ず必要になる書類
まずは、遺言書の種類にかかわらず、どのようなケースでも基本的に必要となる書類です。
| 必要書類 | 取得できる場所 | 簡単な説明 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 法務局の窓口、またはウェブサイト | 不動産の名義変更を申請するためのメインの書類です。 |
| 被相続人(亡くなった方)の死亡がわかる戸籍謄本(除籍謄本) | 本籍地の市区町村役場 | 亡くなった事実を証明するために必要です。 |
| 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地の市区町村役場 | 登記簿上の住所と死亡時の住所をつなげるために必要です。 |
| 不動産を相続する方の戸籍謄本(戸籍抄本) | 本籍地の市区町村役場 | 相続人が現在も生存していることを証明します。 |
| 不動産を相続する方の住民票 | 住所地の市区町村役場 | 新しい登記名義人として住所を登記するために必要です。 |
| 固定資産評価証明書(最新年度) | 不動産所在地の市区町村役場(都税事務所など) | 登記にかかる税金(登録免許税)を計算するために使います。 |
【遺言書の種類別】追加で必要になる書類
次に、お持ちの遺言書の種類によって、上記に加えて必要になる書類です。
- 公正証書遺言の場合
- 遺言公正証書の正本または謄本
- 自筆証書遺言の場合
- 遺言書(原本)
- 家庭裁判所の検認済証明書
(※法務局の保管制度を利用している場合は、検認済証明書の代わりに「遺言書情報証明書」が必要になります)
自筆証書遺言があるときの相続登記では、この検認手続きが非常に重要なステップとなります。手続きを忘れてしまうと、登記申請が受け付けてもらえないため、必ず事前に済ませておきましょう。
より詳しい情報については、法務局が提供している資料も参考になります。
参照: 相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等 (PDF)
相続登記の費用はいくら?司法書士への報酬相場も解説
相続登記を進めるにあたり、やはり気になるのは費用のことではないでしょうか。全体像を把握するため、費用は大きく「実費」と「専門家への報酬」の2つに分けて考えるのがおすすめです。司法書士に依頼した場合の費用も含めて、具体的に見ていきましょう。

自分で払う必要のある実費①:登録免許税
登録免許税は、登記を申請する際に国に納める税金です。相続登記の場合、以下の計算式で算出します。
登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 0.4%
固定資産税評価額は、毎年春ごろに市区町村から送られてくる「固定資産税の納税通知書」に記載されています。もし見当たらない場合は、不動産所在地の役所で「固定資産評価証明書」を取得すれば確認できます。
例えば、評価額が2,000万円の土地と家を相続した場合、登録免許税は8万円(2,000万円 × 0.4%)となります。また、一定の要件を満たす土地については、登録免許税の免税措置が受けられる場合もあります。
自分で払う必要のある実費②:必要書類の取得手数料
先ほどご紹介した必要書類を取得する際にも、それぞれ手数料がかかります。
- 戸籍謄本:1通 450円
- 除籍謄本・改製原戸籍謄本:1通 750円
- 住民票、住民票の除票:1通 300円前後
- 固定資産評価証明書:1通 300円前後
これらの書類は、相続人の数や亡くなった方の本籍地の移動回数などによって、必要な枚数が変わってきます。合計すると、数千円から、場合によっては1万円以上になることも珍しくありません。
司法書士に依頼した場合の報酬相場
相続登記の手続きを司法書士に依頼した場合、上記の実費に加えて司法書士への報酬が必要になります。一般的な相続登記の報酬相場は、おおよそ7万円~15万円程度です。
この報酬には、通常、以下のような業務が含まれます。
- 戸籍謄本などの必要書類の収集代行
- 相続関係説明図の作成
- 登記申請書の作成と法務局への申請代行
- 登記完了後の書類のお渡し
ただし、不動産の数が多い、評価額が非常に高い、相続関係が複雑であるといったケースでは、報酬額が変動することがあります。正確な費用については、事前に司法書士へ見積もりを依頼して確認することをおすすめします。
【要注意】遺言書と異なる内容で相続登記はできる?
「遺言書には長男が家を継ぐと書いてあるけれど、実際には次男が同居していたから、次男の名義にしてあげたい」…このように、相続人の間で話し合い、遺言と異なる内容で相続したいと考えるケースは少なくありません。法律の専門家として、この少しデリケートな問題について解説します。
原則:相続人全員の合意があれば遺産分割協議は可能
結論から言うと、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容とは異なる遺産分割協議を行い、その内容で相続登記をすることは可能です。
故人の意思は最大限尊重されるべきですが、残された相続人全員が納得して別の分け方を望むのであれば、法律もそれを認めています。
ただし、これには重要な注意点があります。
- 遺言執行者がいる場合:遺言で特定の業務を行う「遺言執行者」が指定されている場合、その人の同意も必要になります。
- 受遺者がいる場合:遺言で相続人以外の人(例えば、お世話になった知人など)に財産を遺す(これを「遺贈」と言います)と書かれている場合、その人(受遺者)の同意も必要です。
これらの関係者の同意を得ずに進めてしまうと、後々トラブルに発展する可能性があるため、慎重な判断が求められます。
登記手続きはどうなる?遺産分割協議書が必要に
遺言書と異なる内容で登記をする場合、手続きは「遺言書がない場合の相続登記」とほぼ同じ流れになります。
つまり、通常の遺言書による登記で使う書類に加えて、相続人全員で合意した内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、全員が実印で押印し、「印鑑証明書」を添付する必要があります。
これにより、必要書類が増え、手続きの難易度は少し上がることになります。特に、遺産分割協議書が不要なケースと比べて、準備に手間と時間がかかることを理解しておく必要があります。
税務上のリスクは?贈与税がかかる可能性に注意
最も注意すべきなのが、税金の問題です。安易に遺言書と異なる遺産分割を行うと、思わぬ税金が発生するリスクがあります。
税務署の解釈によっては、「まず遺言書のとおりに相続が一度成立し、その後に相続人間で財産の譲渡(贈与)があった」とみなされる可能性があります。この場合、不動産をもらった人に対して、相続税とは別に高額な「贈与税」が課税される恐れがあるのです。
このような税務上の判断は非常に専門的であり、司法書士だけでなく税理士とも連携して慎重に進める必要があります。自己判断で進めるのは大きなリスクを伴うため、必ず専門家にご相談ください。

自分でやる?司法書士に頼む?メリット・デメリットを比較
ここまで読んでいただいて、「手続きは複雑そうだけど、自分でできるだろうか?」「やはり専門家に任せた方が安心だろうか?」と迷われている方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、ご自身で手続きする場合と、司法書士に依頼する場合のメリット・デメリットを比較してみましょう。
自分で相続登記を行う場合の注意点と潜むリスク
ご自身で手続きする最大のメリットは、当然ながら「司法書士への報酬がかからない」という点です。しかし、その裏にはいくつかのデメリットやリスクが潜んでいます。
- 手間と時間がかかる:戸籍謄本などを集めるために、平日に何度も市区町村役場や法務局へ足を運ぶ必要があります。慣れない手続きに、想像以上の時間がかかることも少なくありません。
- 書類の不備でやり直しに:申請書に少しでも不備があると、法務局から「補正」の連絡が入り、再度法務局へ出向いて修正しなければなりません。このやり取りが、大きなストレスになることもあります。
- 法的な判断ミス:遺言書の有効性の判断や、先ほど解説した「遺言と異なる登記」のリスクなど、専門知識がないと気づけない相続登記の落とし穴があります。
司法書士に依頼する4つの大きなメリット
一方、司法書士に依頼すると費用はかかりますが、それ以上に大きなメリットが得られます。
- 時間と手間の大幅な削減:面倒な書類の収集から法務局への申請まで、すべて任せることができます。貴重な時間を本業やお身内のことなどに使うことができます。
- 正確かつ迅速な手続き:専門家が手続きを行うことで、書類不備のリスクを抑え、状況に応じて円滑な登記手続きを目指します。
- 複雑なケースへの対応力:「遺言と異なる内容で登記したい」「相続人が大勢いる」といった複雑な事案でも、法的なリスクを洗い出し、最適な解決策を提案します。
- 大きな精神的安心感:「これで本当に合っているだろうか…」という不安から解放されます。手続きのすべてを専門家に任せられる安心感は、何より大きなメリットと言えるでしょう。
遺言書の相続登記でお悩みなら、まずは専門家へご相談を
今回は、遺言書がある場合の相続登記について、必要書類や費用、注意点を解説しました。
遺言書があれば相続手続きはスムーズに進むと思われがちですが、実際には戸籍の収集や専門的な書類の作成など、多くの手間と知識が必要になることがお分かりいただけたかと思います。
特に、
- 見つかった遺言書が自筆証書遺言である
- 相続人が多く、関係が複雑である
- 遺言書の内容と違う分け方をしたいと考えている
- 仕事などが忙しく、平日に役所へ行く時間がない
このような状況に一つでも当てはまる場合は、ご自身で抱え込まず、相続の専門家である司法書士に相談することをおすすめします。
私たちは、単に手続きを代行するだけでなく、皆様の不安な気持ちに寄り添い、円満な相続の実現をお手伝いするパートナーです。ご相談費用については内容により異なる場合がありますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
当事務所は兵庫県尼崎市を拠点に、相続や遺言に関する手続きをサポートしています。相続手続きでは、戸籍収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、複雑な手続きを一括してお任せいただけます。また、遺言書の作成支援も行っており、将来の相続に備えた適切なアドバイスを提供しています。
初回のご相談や費用のお見積もりは無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。

