抵当権者が死亡|相続後の抹消登記と手続きを司法書士が解説

ご家族が亡くなられた方へ。不動産の抵当権、ご不安ですよね

大切なご家族が亡くなられ、相続の手続きを進める中で、ご自宅などの不動産に「抵当権」という登記が残っていることがわかり、戸惑いや不安を感じていらっしゃることと思います。

「昔の住宅ローンだと思うけど、どうしたらいいんだろう…」
「ローンは返し終わったはずなのに、なぜ登記が残っているの?」
「そもそも、手続きに必要な書類がどこにあるのかも分からない…」

このように、突然見慣れない登記の存在を知り、何から手をつけて良いのか分からなくなってしまうのは、決してあなただけではありません。多くの方が同じような状況で悩まれています。

でも、どうぞご安心ください。このようなケースは決して珍しいことではなく、一つひとつ手順を踏んでいけば、解決に向けて着実に進めることができます。この記事では、司法書士である私たちが、ご不安な気持ちに寄り添いながら、抵当権を抹消するための手続きを分かりやすく、そして丁寧にご案内します。読み終える頃には、ご自身の状況で何をすべきかが整理でき、今後の進め方の見通しが立つはずです。

まず状況を整理しましょう|2つのポイントでやるべきことが明確に

抵当権の問題は複雑に感じられるかもしれませんが、実はたった2つのポイントを確認するだけで、ご自身の状況とやるべきことが驚くほど明確になります。まずは焦らず、ご自身の状況を客観的に整理してみましょう。

抵当権者が死亡した際の状況を整理するためのフローチャート。「ローンは残っているか?」「抹消書類はあるか?」という2つの質問に答えることで、自身がどの手続きパターンに該当するかが分かる。

ポイント1:債務の有無を確認する(団信・完済・残債)

最初のポイントは、抵当権の原因となった「債務(ローン)」が現在も残っているかどうかです。故人の書斎や重要書類を保管している場所から、住宅ローンの契約書や返済予定表、金融機関からの通知などを探してみましょう。主に以下の3つのパターンが考えられます。

  • 団体信用生命保険(団信)に加入していた:住宅ローンを組む際に団信に加入していると、契約者が亡くなった際に保険金でローンが完済されます。この場合、金融機関に連絡して所定の手続きを行えば、債務はなくなります。ただし、団信でローンが完済されても抵当権の登記は自動では消えないため、抹消手続きが別途必要です。
  • すでに完済している:生前にローンをすべて返済し終えているケースです。この場合も、金融機関から抹消用の書類を受け取ったものの、手続きをしないまま登記だけが残っていることがよくあります。
  • ローンが残っている:団信に加入していなかったり、住宅ローン以外の事業性ローンなどで、まだ返済が残っているケースです。この場合、相続人が債務を引き継ぐ「債務承継」の手続きが必要になります。

ポイント2:抵当権抹消書類の有無を確認する

次に、抵当権を抹消するために金融機関から発行される書類が手元にあるかを確認します。ローンを完済すると、金融機関から以下のような書類一式が渡されます。

  • 登記識別情報(または登記済権利証):登記名義人であることを証明する非常に重要な書類です。
  • 解除証書(または弁済証書):ローンを完済したことを証明する書類です。
  • 金融機関の委任状:抹消登記を申請するための金融機関からの委任状です。

これらの書類は、故人が不動産関係の重要書類としてファイルにまとめていたり、貸金庫などに保管していたりすることが多いです。まずは心当たりのある場所を探してみてください。

そして、ここが大切な点ですが、もしこれらの書類が見つからなくても、決して諦める必要はありません。解決する方法はちゃんと用意されていますので、ご安心ください。後の章でその具体的な方法を詳しくご説明します。

【状況別】抵当権設定者が死亡した後の手続き完全ガイド

さて、ご自身の状況が整理できたでしょうか。ここからは、前の章で確認した状況別に、具体的な手続きの流れを解説していきます。特にご相談が多い「債務は完済済み(または団信で完済)」のケースを中心に、書類がある場合とない場合、そしてローンが残っている特殊なケースまで、網羅的に見ていきましょう。なお、抵当権の手続きを進める大前提として、2024年4月から相続登記が義務化されていますので、まずは不動産の名義を相続人に変更する手続きが必要です。

ケース1:必要書類が揃っている場合の手続き

ローンは完済済みで、金融機関から受け取った抹消書類もすべて手元にある。これが最もスムーズに進められる基本的なケースです。

手続きの順番は、①相続登記 → ②抵当権抹消登記 となります。この順番が非常に重要です。原則として、相続登記を先に(または相続登記と同時に)行った上で、抵当権抹消登記を申請します。

  1. STEP1:相続登記を申請する
    まず、戸籍謄本などを集めて相続人を確定させ、遺産分割協議で不動産を誰が相続するかを決めます。そして、法務局に相続登記を申請し、不動産の名義を故人から相続人へと変更します。
  2. STEP2:抵当権抹消登記を申請する
    相続登記が完了し、不動産がご自身の名義になったら、いよいよ抵当権抹消登記の申請です。金融機関から受け取った書類一式と、ご自身で作成した登記申請書を法務局に提出します。この際、登録免許税として不動産1個につき1,000円が必要です(例:土地と建物で通常2,000円。土地が複数筆に分かれている場合は筆数分が加算されます)。

このケースでは、ご自身で手続きを進めることも不可能ではありません。しかし、相続人が複数いる場合の遺産分割協議や、慣れない書類作成に不安を感じる方も多いでしょう。相続登記と抵当権抹消をどの順番で行うべきかなど、少しでも迷う点があれば、司法書士に依頼することでスムーズかつ確実に手続きを完了できます。

ケース2:登記識別情報(権利証)を紛失した場合の手続き

「ローンは完済しているはずなのに、どうしても権利証や登記識別情報が見つからない…」
このような状況は、実は決して少なくありません。しかし、ご安心ください。たとえ登記識別情報などを紛失してしまっても、抵当権を抹消する方法は2つあります。

抵当権抹消で登記識別情報を紛失した場合の「事前通知制度」と「本人確認情報制度」のメリット・デメリットを比較した図解。
  1. 事前通知制度
    これは、登記識別情報を提供せずに登記申請を行った場合に、法務局から登記義務者(この場合は金融機関)宛に登記申請があったことを通知し、内容確認の手続を行う制度です(個人の場合は本人限定受取郵便、法人の場合は原則として書留による通知とされています)。
    • メリット:費用が安い(司法書士に依頼しない場合、実費のみ)。
    • デメリット:手続きに時間がかかる(2週間~1ヶ月程度)。金融機関によっては、この手続きに協力してくれない場合や、別途手数料を請求されることがあります。
  2. 本人確認情報制度
    これは、司法書士が登記義務者(金融機関の担当者)と面談し、本人であることを確認した上で「本人確認情報」という書類を作成し、登記識別情報の代わりに法務局へ提出する方法です。
    • メリット:比較的早期に手続きが進むことが期待できる場合があります。金融機関の対応状況によっては、手続きが進めやすくなることがあります。
    • デメリット:司法書士への報酬(数万円程度)が別途必要になる。

どちらの方法を選ぶべきかは、状況によって異なります。「相続した不動産をすぐに売却したい」など、手続きを急ぐ事情がある場合は、お急ぎの事情がある場合は、本人確認情報制度の利用を検討することがあります。この手続きは司法書士の専門業務ですので、書類紛失が判明した時点で、一度ご相談いただくのが良いでしょう。

ケース3:ローンが残っている場合の債務承継手続き

団信に加入しておらず、ローンが残っている不動産を相続した場合は、少し手続きが複雑になります。まず、亡くなった方の借金(金銭債務)は、法律上、各相続人が法定相続分に応じて当然に分割して引き継ぐのが原則です。

しかし、それでは金融機関も相続人も手続きが煩雑になるため、実務上は、不動産を相続する特定の相続人がローンもまとめて引き継ぐ「債務承継」の手続きを取ることがほとんどです。この手続きは、金融機関の承諾を得た上で、相続人間で「誰が債務を引き継ぐか」を遺産分割協議で決定します。

金融機関の承諾が得られたら、債務者を故人から新しい相続人へ変更するための「抵当権変更登記」を法務局に申請する必要があります。抵当権の債務者が亡くなられた場合の手続きは金融機関との交渉も関わるため、専門的な知識が不可欠です。また、もし債務額が不動産の価値を上回るような場合は、「相続放棄」も重要な選択肢となりますので、早めに司法書士へご相談ください。

ケース4:何十年も前の古い抵当権(休眠抵当権)の抹消方法

相続を機に不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を初めて取得し、明治や大正、昭和初期といった、全く心当たりのない古い抵当権が残っていることに気づくケースがあります。これを「休眠抵当権」と呼びます。

抵当権者(お金を貸した側)が個人ですでに行方不明であったり、会社であっても既に解散してしまっていたりと、連絡を取ること自体が困難な場合がほとんどです。しかし、このような絶望的に思える状況でも、抹消する方法はあります。

  • 弁済供託による単独申請:債権額や利息などを計算し、その金銭を法務局(供託所)に預ける(供託する)ことで、抵当権者への弁済を果たしたとみなし、単独で抹消登記を申請する方法。
  • 訴訟(判決による登記):抵当権者を被告として訴訟を起こし、「抵当権を抹消せよ」という判決を得て、その判決書を添付して単独で抹消登記を申請する方法。

これらの休眠抵当権の抹消手続きは、法律的な知識と実務経験がなければ対応が極めて困難です。個人で進めることはほぼ不可能と言えるため、このような登記を発見した場合は、司法書士などの専門家への相談をご検討ください。

専門家への相談も一つの解決策です

ここまで、抵当権者が亡くなられた後のさまざまなケースと手続きについて解説してきました。一通りの流れはご理解いただけたかと思いますが、実際に手続きを進めるとなると、多くのハードルがあることにもお気づきになったかもしれません。

書類の不備で法務局に何度も足を運ぶことになったり、金融機関との交渉が思うように進まなかったり、あるいは相続人間で意見がまとまらなかったり…。ご自身で全てを抱え込むと、時間的にも精神的にも大きな負担となってしまう可能性があります。

もし、「自分でやるのは難しそうだ」「仕事が忙しくて時間がない」「確実かつスムーズに手続きを終わらせたい」と少しでも感じられたなら、無理をせず私たち司法書士にご相談いただくのが賢明な選択です。不動産手続きの専門家である司法書士に依頼することで、必要書類の整理や申請手続を円滑に進めやすくなります。

司法書士法人れみらい事務所では、相続や不動産登記に関するお悩みに親身に寄り添い、あなたにとって最善の解決策をご提案いたします。初回のご相談は無料ですので、どうぞお一人で悩まず、まずはお気軽にお問い合わせください。

抵当権抹消登記・相続手続きの無料相談

(参考:法務省「新不動産登記法Q&A」

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