家族信託については、委託者と受託者の契約行為となりますので、信託法及び信託契約で定めた理由などにより信託を終了させることもできます。
では、どのようなケースで家族信託は終了してしまうのか、ここでは家族信託の「終了」について説明していきます。
信託法による終了事由
信託法にも終了事由が規定されています。ここでは主な終了事由について例を挙げていきましょう。
①信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき
当初契約で定めた信託の目的が達成又は不達成となった際には、それ以上信託を継続させていく理由もなくなる為に終了するとされています。
②受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年以上継続したとき
家族信託は、委託者と受託者の信託契約により受託者が受益者の為に財産の管理、保全、運用、処分などを行うものです。
よって、受益者が受託者と同一になってしまうとそもそもの信託行為も意味がなくなる為に、終了するとされています。
このような状態になれば1年以内に新たな受託者に変更しなければなりません。
③受託者が欠けた場合で、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
こちらも②と同様に受託者がいない中では信託を継続していくことはできません。
信託契約の中で、受託者が欠けた場合に備えて二次受託者を定めておくのも一つです。
④信託行為において定めた事由が生じたとき
信託契約の中で信託終了事由を定めることもできます。
信託契約により、任意で終了事由を定める場合には、その信託目的などに応じて決めていくこととなります。
信託目的でよくご相談いただく、委託者兼受益者(親)の認知症対策として信託契約を行う際には、生前の信託行為を定めるておくことによりその目的は達せられる為に受益者(親)が死亡した際には家族信託を終了させるのが良いでしょう。
⑤委託者及び受益者の同意
家族信託の信託目的は、委託者の意思を受託者が実現させることです。
そして、そこから得られる利益は受益者のものとなります。よって委託者及び受益者の同意があれば、信託を継続させる必要がなくなる為に、終了事由とされています。
ただし、いきなり信託契約を終了させられたら受託者にとって不利益を被る場合もあります。その際には、受託者の損害を賠償しなければなりません。
<参考>
(信託の終了事由)
第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。 一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。 二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。 三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。 四 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。 五 信託の併合がされたとき。 六 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。 七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。 八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。 九 信託行為において定めた事由が生じたとき。 |
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。 2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。 3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。 4 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。 ① 委託者及び受益者が終了の合意をしたとき ② 信託の目的を達成したとき ③ 信託の目的を達成することができなくなったとき ④ 受託者=受益者(※)の状態が1年間継続したとき ⑤ 受託者が欠け、一年間新受託者が就任しない場合 ⑥ 信託行為において定めた事由が生じたとき |
以上のとおり家族信託をいつ、どのように終了させるのかはケースに応じます。
家族信託をご検討の方は、その目的、当事者同士の関係、信託財産の構成など、お客様に応じてご相談・提案させて頂きます。
初回相談・費用見積は無料で承っております。