特別代理人選任とは?司法書士が手続き・費用・注意点を解説

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特別代理人とは?まず押さえたい基本の知識

ご家族が亡くなられ、相続の手続きを進める中で「特別代理人(とくべつだいにん)」という言葉を初めて耳にし、戸惑いを感じていらっしゃるかもしれません。特に、相続人の中に未成年のお子様がいらっしゃる場合、この手続きが必要になることがあります。一体どのような制度で、なぜ必要なのでしょうか。

未成年の子どもの権利を守るための代理人です

特別代理人とは、簡単に言うと「未成年者など、自分一人で大切な財産の判断が難しい方の権利を守るために、家庭裁判所が特別に選ぶ代理人」のことです。
通常、未成年のお子様に関する法律的な手続きは、親権者であるお父様やお母様が代理人として行います。しかし、特定の状況下では、親権者が代理人になることができません。その「特定の状況」で、お子様の味方として登場するのが特別代理人なのです。
決して難しい制度ではなく、お子様が不利益を被らないようにするための、大切な仕組みだとご理解ください。

なぜ必要?「利益相反」がポイントです

では、なぜ親権者が代理人になれない状況があるのでしょうか。そのキーワードが「利益相反(りえきそうはん)」です。
利益相反とは、一方の利益になると、もう一方の不利益になってしまう関係のことを指します。

例えば、お父様が亡くなり、相続人がお母様と未成年のお子様の二人だったとします。この場合、遺産の分け方を決める「遺産分割協議」を行いますが、ここでお母様とお子様は、遺産を分け合う当事者同士になります。
もし、お母様が「自分の相続分を多くしたい」と考え、その通りに遺産分割協議書を作ったとしたら、どうなるでしょうか。お母様の取り分が増えるということは、同時にお子様の取り分が減ってしまうことになりますよね。このようにお互いの利害が対立してしまう状態を「利益相反」と呼びます。

このような状況で親権者であるお母様がお子様の代理人になることを認めてしまうと、お子様の権利が守られない可能性があります。そこで、家庭裁判所が中立な第三者を「特別代理人」として選任し、お子様の利益を代弁させることで、公平な手続きを確保するのです。

子どもの手を優しく包み込む親の手。子どもの財産と権利を守る特別代理人制度の役割を象徴する写真です。

【ケース別】特別代理人が必要になる具体的な場面

「自分の場合は、特別代理人が必要なのだろうか?」と疑問に思われる方も多いでしょう。ここでは、相続において特別代理人が必要になる具体的なケースと、不要なケースについて解説します。

ケース1:親と未成年の子で遺産分割協議をするとき

これは最も典型的なケースです。先ほどの例のように、親権者と未成年のお子様が共に相続人となり、遺産分割協議を行う場合には、特別代理人の選任が必要です。
「うちは家族仲が良いし、揉めるつもりもないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、これは感情の問題ではありません。法律上、親と子が遺産を分け合うという行為そのものが利益相反と見なされるため、一般に、親と未成年の子が共同で遺産分割協議を行う場合は利益相反になるため特別代理人の選任が必要となることが多いですが、遺産分割協議を行わず法定相続分どおりに処理するなど利益相反が生じない特別な事情がある場合は、選任が不要となることがあります。最終的には管轄の家庭裁判所の判断になります。

ケース2:未成年の子だけが相続放棄をするとき

亡くなった方に借金があった場合など、相続をしない「相続放棄について」の手続きを検討することがあります。このとき、親権者は相続するけれど、未成年のお子様だけが相続放棄をするというケースでは、特別代理人が必要です。
なぜなら、お子様が相続放棄をすると、その分、親権者の相続分が増える可能性があるからです。これも典型的な利益相反行為にあたります。

ケース3:複数の未成年の子同士で利益が対立するとき

例えば、ご両親が既に亡くなっており、祖父が亡くなったことで未成年の兄弟姉妹が相続人になったとします。この場合、親権者(たとえば祖母など)が一方のお子様の代理人として遺産分割協議に参加すると、もう一方のお子様にとっては不利益になる可能性があります。
このように、未成年のお子様が複数いる場合、一人ひとりにとって公平な分割案を検討する必要があるため、お子様それぞれに特別代理人が必要になることがあります。

【補足】特別代理人が不要なケースとは?

一方で、特別代理人が必要ないケースもあります。代表的なものは以下の通りです。

  • 親権者と未成年者が一緒に相続放棄をする場合:親権者も子もそろって相続しないため、そこに利益の対立は生まれません。
  • 遺言書で財産の分け方が具体的に指定されている場合:遺産分割協議が不要で、遺言の内容に従って手続きを進めるだけなので、利益相反は生じません。
  • 未成年者が相続人ではない場合:当然ですが、お子様が相続に関わらない場合は不要です。

ご自身の状況がどれにあたるか判断に迷う場合は、一度専門家にご相談いただくのが安心です。

特別代理人選任の申立て手続き完全ガイド

特別代理人が必要だとわかったら、次は家庭裁判所への申立て手続きを進めます。ここでは、準備から完了までの具体的な流れを4つのステップに分けて解説します。

青空を背景にした日本の家庭裁判所の外観。特別代理人選任の申立て手続きが行われる場所を示しています。

STEP1:申立ての準備(候補者選びと必要書類)

まず、手続きの準備から始めます。やるべきことは主に2つです。

1. 特別代理人の候補者を選ぶ
誰を特別代理人の候補者にするかを決めます。一般的には、利害関係のない親族(祖父母、おじ、おばなど)にお願いするケースが多いです。候補者が見つからない場合は、司法書士などの専門家を候補者にすることも可能です。

2. 必要書類を集める
次に、申立てに必要な書類を揃えます。一般的に必要となる書類は以下の通りです。

  • 申立書:家庭裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードできます。
  • 申立人(親権者)の戸籍謄本
  • 未成年者の戸籍謄本、住民票
  • 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票のほか、候補者の職業や利害関係を確認するための追加資料を求められる場合があります。
  • 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
  • 利益相反に関する資料:遺産分割協議書案がこれにあたります。どのような内容で遺産分割をしたいのかをまとめた案を作成し、提出する必要があります。これは裁判所が選任を判断する上で非常に重要な書類です。
  • その他、遺産の状況がわかる資料(不動産の登記事項証明書、預金通帳のコピーなど)

※必要書類は事案によって異なる場合がありますので、必ず管轄の家庭裁判所にご確認ください。

STEP2:家庭裁判所への申立て

書類がすべて揃ったら、いよいよ家庭裁判所に申立てを行います。
申立先は、子の住所地を管轄する家庭裁判所です。管轄の裁判所がどこかは、裁判所のウェブサイトで確認できます。窓口に直接持参するか、郵送で提出します。

STEP3:家庭裁判所による審理と照会

申立て後、家庭裁判所は提出された書類を審査(審理)します。通常、審理期間は事案によりますが、概ね1か月程度で結果が出ることが多いです。ただし追加資料の提出等で延びる場合もありますので、余裕を見てください。
審査の過程で、申立人や特別代理人候補者宛に「照会書」という質問状が郵送で届くことがあります。「なぜこの遺産分割内容にしたのですか?」「特別代理人になることを引き受けましたか?」といった内容の質問が書かれていますので、正直に回答して返送します。

STEP4:審判と審判書の受領

家庭裁判所が申立てを認めると、「審判」という形で決定が下されます。そして、申立人のもとへ「審判書謄本(しんぱんしょとうほん)」という書類が郵送で届きます。この書類が、特別代理人が選任されたことを証明する公的な証明書となります。
この審判書謄本は、この後の遺産分割協議書の正式な作成や、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金の解約手続きなどで必要になる、非常に大切な書類です。大切に保管しましょう。

参考:特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)

費用はいくらかかる?自分でやる場合・専門家に頼む場合

手続きを進めるにあたり、費用がどれくらいかかるのかは気になるところだと思います。ご自身で手続きをされる場合と、私たちのような司法書士に依頼される場合に分けてご説明します。

自分で手続きする場合の費用(実費)

ご自身で申立てを行う場合、専門家への報酬はかかりませんが、以下の実費が必要になります。

  • 収入印紙代:お子様1人につき800円
  • 連絡用の郵便切手代:数千円程度(裁判所によって異なります)
  • 戸籍謄本などの書類取得費用:1通あたり数百円×必要通数

合計すると、概ね数千円〜1万円程度が一般的な実費の目安ですが、必要通数の戸籍取得や郵便料などで増減します。詳細は管轄裁判所に確認してください。が実費の目安となります。

司法書士に依頼する場合の報酬相場

司法書士に申立書の作成や必要書類の収集を依頼する場合、上記の実費に加えて司法書士への報酬が発生します。
報酬額は事務所や事案の複雑さによって異なりますが、参考として5万円~15万円程度が一般的なようです。この報酬には、申立書の作成だけでなく、非常に重要な「遺産分割協議書案」の作成や、裁判所とのやり取りのサポートなどが含まれることが一般的です。
当事務所(司法書士法人れみらい事務所/兵庫県尼崎市)では、特別代理人選任申立てのサポートはもちろん、その後の相続登記まで含めたトータルサポートプランもご用意しております。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にご自身のケースの費用感をお尋ねください。

手続きをスムーズに進めるための注意点とQ&A

特別代理人選任の手続きは、普段なじみのないものだからこそ、つまずきやすいポイントがいくつかあります。ここでは、よくある注意点と疑問について、Q&A形式でお答えします。

注意点1:遺産分割協議書案は「子どもの法定相続分」を確保

申立ての際に提出する「遺産分割協議書案」は、裁判所が審判を下す上で最も重視する書類です。
家庭裁判所の第一の役割は、お子様の権利を守ることです。そのため、提出する遺産分割協議書案の内容は、原則としてお子様の法律上の取り分(法定相続分)がきちんと確保されている必要があります。
もし、何らかの事情でお子様の法定相続分を下回る内容の案を提出する場合は、「なぜそのような内容にするのか」という合理的で具体的な理由を、申立書などで丁寧に説明しなければなりません。この説明が不十分だと、申立てが認められない可能性が高まりますので、注意が必要です。

注意点2:候補者は誰でも良いわけではない

特別代理人の候補者は、誰でもなれるわけではありません。最も重要な条件は「未成年者との間に特別な利害関係がないこと」です。
例えば、他に相続人がいる場合、その相続人を候補者にすることはできません。また、お子様から何らかの利益を受ける可能性がある人(例:お子様に借金をしている人など)も不適格と判断される可能性があります。
そのため、一般的には、相続人ではなく、経済的にも独立している親族(祖父母や叔父叔母など)が候補者として選ばれやすいのです。

Q. 候補者が見つからない場合はどうすれば?

「親族に頼める人がいない」「遠方に住んでいてお願いしづらい」といったご事情で、候補者が見つからないケースもあるかと思います。
その場合は、司法書士や弁護士などの専門家を候補者として申立てることができます。家庭裁判所によっては、候補者を立てずに申立てを行い、裁判所に弁護士などの専門家を選んでもらうことも可能です。
専門家が候補者となる場合、別途報酬が発生しますが、中立的な立場で手続きを進めてくれるため、裁判所の審判もスムーズに進みやすいというメリットがあります。当事務所で候補者をお引き受けすることも可能です。専門家を候補者とする場合は報酬や必要な手続き(予納金等)、適格性の判断が必要になりますので、詳細は個別にご説明します。

Q. 特別代理人が選任された後は何をすればいい?

無事に特別代理人が選任されたら、いよいよ本来の目的である相続手続きを進めます。
まずは、選任された特別代理人がお子様を代理して、他の相続人の方と正式に遺産分割協議を行います。そして、全員が合意した内容で「遺産分割協議書」を作成し、特別代理人はお子様の代理人として署名し、実印を押印します。
この正式な遺産分割協議書と、裁判所から届いた審判書謄本を使って、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約・名義変更などの手続きを行っていくことになります。

お悩みの方は司法書士へ。専門家に依頼するメリット

特別代理人選任の手続きは、ご自身で行うことも不可能ではありません。しかし、慣れない書類の準備や裁判所とのやり取りは、精神的にも時間的にも大きな負担となりがちです。特に、ご家族を亡くされて間もない時期に、これらの手続きを一人で抱え込むのは大変なことです。そんなときは、私たち司法書士のような専門家を頼ってみませんか。

複雑な書類作成と手続きをすべて任せられる

司法書士にご依頼いただく最大のメリットは、煩雑な手続きから解放されることです。戸籍謄本などの必要書類の収集から、専門的な知識が求められる申立書や遺産分割協議書案の作成、裁判所への提出まで、すべてを代行いたします。
大切な時間を手続きに費やすことなく、心穏やかにお過ごしいただくためのサポートをさせていただきます。

裁判所が納得する適切な申立理由を提案してもらえる

特に、お子様の法定相続分を確保できないなど、少し複雑なご事情がある場合、専門家の知識が大きな力になります。当事務所は経験に基づき申立理由書や遺産分割協議書案の作成支援を行います。これにより適切な資料整備が期待され、審理の円滑化に寄与する可能性がありますが、審判の結果は家庭裁判所の判断に依ります。

選任後の相続登記までワンストップで対応可能

司法書士は、不動産登記の専門家でもあります。そのため、特別代理人選任の手続きだけでなく、その後の不動産の名義変更(相続登記)まで、一貫してサポートさせていただくことが可能です。
あちこちの専門家を探す必要がなく、一つの窓口で相続手続き全体を完了できるため、スムーズかつ確実に手続きを進めることができます。これが司法書士にご依頼いただく大きな強みです。

もし、特別代理人の手続きでお困りでしたら、どうぞお一人で悩まず、当事務所の特別代理人選任に関する無料相談はこちらをご利用ください。あなたと、そして大切なお子様のために、私たちが全力でサポートいたします。

まとめ|特別代理人選任は、お子様のための大切な手続きです

この記事では、特別代理人選任について、その意味から具体的な手続き、費用、注意点までを解説してきました。

  • 特別代理人は、親と子の利益が対立する「利益相反」の状況で、お子様の権利を守るために家庭裁判所が選ぶ代理人です。
  • 親と未成年の子で遺産分割協議をする場合などが、典型的に必要なケースです。
  • 手続きは、家庭裁判所への申立てによって行い、1〜2ヶ月程度の期間がかかります。
  • 「遺産分割協議書案」の内容が、裁判所の判断において非常に重要になります。
  • 手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼することで、スムーズかつ確実に進めることができます。

「特別代理人」と聞くと、何か特別なことのように感じて不安になるかもしれませんが、これはお子様の未来を守るための、とても前向きで大切な手続きです。手続きのことで少しでもご不安な点や、わからないことがございましたら、どうぞご遠慮なく私たちにご相談ください。あなたの「心」と「想い」に寄り添いながら、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。

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