不動産を相続しようとしたら、その不動産に担保(抵当権)が付いていた!

このようなとき、そのまま相続してよいのか、またどういう手続きを踏んでいけばよいのか、お悩みになることもあるでしょう。

亡くなれた方が住宅ローンを組んでいたり事業をされたいたとき等にはこういうケースはあり得ることですが、抵当権等の担保が付いているか否かに関わらず、その不動産は相続の対象となります。よって、法定相続通りに共有状態にすることも出来ますし、遺産分割協議によって誰か一人が相続することも可能です。

住宅ローンの場合は、団体信用生命保険により、ローンは生命保険金で賄われることもありますので、そのときには相続による名義変更登記をした後に、抵当権抹消登記を申請すれば事足ります。

では、債務が残っており、不動産に担保が付いたままの状態で被相続人が亡くなられた場合には、債務(借金)については誰が相続するのでしょうか。

債務の相続は誰がするのか

相続する不動産に担保が残っていても、相続するのは法定相続分通りでも良いですし、遺産分割協議によって取得する相続人を決めることも可能です。

ただし、ローンの支払については、不動産を相続した人が支払うのでしょうか。それとも相続人全員で支払っていかなければならないのでしょうか。

民法には、以下のとおり定めがあります。

(民法第902条の2)

 被相続人は相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りではない。

よって、債権者の同意なく債務の支払いについて相続人間で遺産分割協議で合意しても、当事者間では有効ですがその合意自体は債権者には主張することはできない、という事です。

債権者の同意なく特定の相続人だけが返済義務を承継するとか、免れることができるといったことを、相続人が自由に定めることができるとすれば、債権者としては、自己の関与しないところで不利な扱いを受けることがあるからです。債権者は当事者間でどういう合意をしていても、法定相続分に従って相続人にローンの支払いを請求することができます。

ただし、債権者の承認を事前にとっていれば、債務の支払いについて特定の相続人とすることもできます。

登記手続きについて

不動産の登記申請を行う場合には、相続による名義変更の登記と合わせて抵当権等の債務者の変更登記も必要となってきます。

登記が必要なケースとして、以下の2パターンが考えられるでしょう。

①法定相続分どおりに債務者の相続登記をする

特段相続人同士で、債務の支払いについて合意がないような場合には、相続人全員が法定相続分どおりに債務を相続することとなります。

よって、抵当権等の債務者についても、「相続」を原因とした法定相続人全員に変更する登記をします。

②免責的債務引受により、特定の相続人に債務者を変更する旨の登記をする

債権者の同意を得た上で、遺産分割協議により特定の相続人が債務を引き受ける合意をしたような場合には、「免責的債務引受」を原因とした債務者の変更登記が必要です。

 

債務については相続人間でどういう割合で承継するのか、また債務が余りに過大なケースでは相続放棄も視野に入ってくることもあります。

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